時速28,000キロのキッチン~宇宙で食事どう作る? 何食べる?

2016年6月6日(月)

  • プロジェクト
  • 宇宙飛行士と国際宇宙ステーション(ISS)
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国際宇宙ステーション (C)JAXA/NASA

時速28,000キロで走るキッチン、それは地球の上空400kmを飛行する国際宇宙ステーション(ISS)の中にあります。キッチンといっても、地上のように直火やレンジを使った調理はできません。宇宙食の準備をする装置が置かれ、ギャレーと呼ばれています。
大西宇宙飛行士の訓練や、これまでの動画から、ISSでの食事についてご紹介しましょう。

ギャレーで準備、宇宙食

ISSにはアメリカとロシアの区画それぞれにギャレーがあります。
まずはアメリカの実験棟「デスティニー」にあるギャレーの装置を見てみましょう。

水供給装置(PWD)、冷蔵庫、オーブン(Food Warmer) (C)NASA

大西宇宙飛行士のGoogle+によると、アメリカのギャレーでは、

主に2つの装置が使用されます。
1つ目はPWD(Portable Water Dispenser)と呼ばれる装置で、これは熱湯や常温の水を注ぐための装置です。
使用方法は至ってシンプルで、必要な水量を選んで、熱湯か常温かを選んで、宇宙食や飲み物のパッケージをアダプターに取り付けて、ボタンを押すだけです。
そうすると自動的に、選んだ量の水がパッケージに注がれて、自動で止まってくれます。
もう1つの装置は、Food Warmerと呼ばれる装置で、その名の通り宇宙食を温めるためのものです。
フリーズドライ食は先ほどのPWDで準備が出来ますが、それ以外の缶詰などの保存食はこれで温めてやる必要があります。
装置は小型のアタッシュケース型で、中に温めたい食事をセットして、装置をオンにするだけです。
宇宙食によって違ってきますが、20~30分程度温めるそうです。

動画:『宙亀通信』(Vol.23) ISS探検ツアー 米国実験棟「デスティニー」編 では、レモネードとフリーズドライのご飯の作り方について、油井宇宙飛行士が解説しています。

フリーズドライのご飯はお湯を加えてからよく混ぜ、出来上がるまで30分程かかるそうです。思ったより時間がかかりますね。 また、ISSの飲料水供給装置は温水か常温の水しか供給できないため、冷水にするには冷たい場所に放置しておくか、冷蔵庫で冷やす必要があります。

次は、ロシアのモジュール「ズヴェズダ」のギャレーを見てみましょう。こちらには、飲料水供給装置と宇宙食を温めるオーブンが食事スペースのすぐそばにあります。

ISSロシア区画の運用シミュレーションにて食事の準備を行う大西卓哉、キャスリーン・ルビンズ宇宙飛行士 (C)JAXA/GCTC

ガガーリン宇宙飛行士訓練センターで行われたシミュレーション訓練で、ISSロシア区画のギャレーで大西卓哉宇宙飛行士、キャスリーン・ルビンズ宇宙飛行士が食事の準備を行いました。

私の最初のタスクはケイトと一緒にご飯の準備です。
パウチに入ったパン、ジュース、宇宙食の缶詰を取り出して、パンと缶詰はヒーターで温めます。
ジュースのパウチは水のディスペンサーに取り付けて、中に水を入れて、外からもみほぐして粉末を混ぜてやります。
パウチが良く出来ていて、水を入れるところから水が逆流してこないようになっています。

ギャレーでの食事の準備は、(1)フリーズドライの食品に水かお湯を加える(加水)、(2)レトルト食品や缶詰などを温める(加温)、が基本のようですね。これなら作業に追われる忙しい合間にも、さっと用意できそうです。
ただ、温めに時間がかかることも考えると、事前の準備が肝心です。また、ISS内ではギャレーの近くにも、実験機器や電子機器などが並んでいます。食べ物や飲み物が周囲に飛び散らないよう、食べる時だけでなく、作るときにも注意が必要ですね。

宇宙食、何食べる?

宇宙日本食のしょうゆラーメン(開けられた
ラーメンの容器)(C)JAXA/NASA

長期滞在する宇宙飛行士は、標準食(ロシアかアメリカ、どちらかの料理がベース)と、宇宙飛行士が選べるボーナス食(個別食)を組み合わせた宇宙食を持って行きます。大西宇宙飛行士も、事前の試食から美味しかったものを選んだ様子。

日本人宇宙飛行士の場合、標準食はアメリカの食事になるので、私はこの9箱の個別メニューに関しては、8箱を日本食、残り1箱をロシアの宇宙食を持っていくことにしました。

飲み物についても、1日あたり3杯分を選びます。宇宙では「ちょっとカフェラテ買ってこよう」ができませんから、コーヒー、紅茶、砂糖入り・なし、日本茶など様々なバリエーションの中から、あらかじめ選んで持って行きます。

大西宇宙飛行士の選択は……

私は元々コーヒーは大好きで毎日飲みますが、お茶も好きです。 迷った挙句、午前と午後に1杯ずつということで、コーヒーを1日2杯、お茶を1杯という内訳にして、お茶に関しては緑茶と紅茶とレモンティーを日替わりで飲めるようにしてもらいました。
 

ISS長期滞在では、食事は単なる栄養補給だけではなく、他のクルーとのコミュニケーションをはかり、ストレスの解消にもつながる大事な時間になります。これから滞在する大西宇宙飛行士の宇宙食にもぜひ注目してみてください。

ユニティでの食事風景:STS-127クルー、ISS第20次長期滞在クルーと共に食事をする若田宇宙飛行士(左上)(C)NASA