「はやぶさ2」が着地に挑戦!! 【その3】
目次
全てやり尽くしても、余裕は30cmだけ
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小惑星「リュウグウ」に、高さ60cm以上の岩がない着地予定地(L08-E1)を見つけたものの、半径はたった3m程。
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考えられる工夫は全て尽くしましたが、着地誤差は2.7m程。その差の余裕は30cmだけ。
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しかも、3億4000km彼方との通信に往復40分程かかるため、「はやぶさ2」が自分だけで判断して着陸しなければなりません。
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はやぶさ2が危険を検知した場合は緊急上昇し、機会を改めて再挑戦します。
岩の高さや、場所ごとのわずかな重力の差も
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画像にわずかに映る岩の影や、別角度からの見え方の違い(ステレオ視)などを詳細に分析し、個々の岩の高さや地形データを高精度化し、誘導制御に使います。
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また、ソロバン玉状の尾根部分の重力がわずかに強く、引っ張られるため、その様な場所ごとの重力の差も詳細に分析しました。
リュウグウは球体ではありませんので、「はやぶさ2」がリュウジン尾根の大きな山に接近するとより重力が強くなり引っ張られてしまいます。このため、軌道が曲がる効果を考慮しました。また、着陸姿勢を意図的に少し傾けることにより、高いボルダー(岩)を回避する着陸時ヒップアップ姿勢を採用しました。
小惑星リュウグウの違う角度からの画像同士を使って、立体視ができる赤青の合成画像を作成しました。赤青立体メガネ(右目が青、左目が赤)で見ると、リュウグウの全体形状と表面の地形が立体的に把握できます。ブライアン・メイさんが制作された両眼立体視の画像と合わせてお楽しみください。
世界の18万人以上の方々に導かれて(ターゲットマーカー)
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着陸を高精度で実現するには、昨年10月にリュウグウに投下しておいたターゲットマーカーがとても重要な役割を果たします。
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フラッシュを当てると光るのをカメラで捉え、それを目印に着地します。
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マーカーを視界の中心に見ながら高度8.5mまで降下した後(①)、マーカーを視界内に留めたまま4~5m横の着地目標地点上空に水平移動して(②)、最終的に降下(③)、着地します。
ターゲットマーカの大きさは直径10cmほどで、周りに貼り付けられた反射フィルムが「はやぶさ2」から発せられたフラッシュによって明るく輝きます。これをガイドにして、「はやぶさ2」はリュウグウへの着陸(タッチダウン)に挑みます。 「はやぶさ2」にはターゲットマーカが5個搭載されています。すべてのターゲットマーカ内部には2枚の薄いシートにみなさんのお名前を刻んで縫込んであります。シートの大きさに限りがあるため、お名前のサイズを小さくして、応募いただいた分が収まるようにしてあります。
ターゲットマーカーを確実に捉え、小まめに誘導制御
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高高度からターゲットマーカーを目指して慎重に降下し、高度45m付近でマーカーを確実に捉えます。
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その後は小まめにスラスタを噴射して、マーカーをカメラから外さないよう誘導制御します。この辺りから先1時間程は「はやぶさ2」が自分だけで判断・着地します。
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マーカーを視界の中心に見ながら高度8.5mまで降下した後(①)、マーカーを視界内に留めたまま4~5m横の着地目標地点上空に水平移動して(②)、最終的に降下(③)、着地します。
斜めの地面に合わせてヒップアップ!
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最終的に着地する際にも、地面の微妙な傾きや岩の高さの差に合わせて、はやぶさ2本体を少し傾け、よりぶつかりにくい安全な姿勢を取ります。
小石でもサンプルを採れるか?!
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サンプラホーンという1m程の筒の先端が着地する際に、金属製の弾丸を地面に撃ち、表面から出た物質を採取します。
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リュウグウ表面はどこも岩や小石ばかりですが、それを模擬し、サンプルが採れるか地上で実験しました。
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弾丸で小石が破砕され、物質が放出される様子が確認され、サンプル採取できることが期待されます。
「はやぶさ2」のサンプル回収装置は様々な改良が加えられていますが、基本的な構造は「はやぶさ」と同じです。タッチダウンの瞬間に小惑星表面に向けて弾丸(プロジェクタイル)を発射し、舞い上がったサンプルをキャッチャと呼ばれる採集容器に集めるというしくみです。
どのように回収装置が働くのか、実際に作って確かめてみましょう!
タッチダウンでは、LRF-S2というレーザ装置が重要な役目を果たします。LRF-S2による距離の測定値の変化やLRF-S2のレーザがターゲットから外れることにより、サンプル取得のための金属製の弾丸が地面に発射されます。サンプルを採取するための非常に重要な装置です。
多くの皆さまからいただきましたご寄付により「はやぶさ2」に搭載された小型モニタカメラによって、サンプラホーンの写真を撮影しましたのでご覧ください。