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宇宙実験室 10 - サンプラーホーンを作ってみた

はやぶさ2

いよいよ小惑星探査機「はやぶさ2」の打ち上げが迫ってきました。
せっかくなのではやぶさ2に関係する実験をして出発を応援しましょう。
今回は数あるはやぶさ2の実験の中でも目玉の一つ、小惑星でのサンプル回収をやってみます。 博士たちが作るのは、はやぶさ2の下についているこの部分「サンプラーホーン」です。

※小惑星探査機「はやぶさ」・「はやぶさ2」の「サンプラーホーン」について、詳しくはこちらの記事をご参照ください

はやぶさ2はどうやってサンプルを回収する?

はやぶさ2のサンプル回収装置は様々な改良が加えられていますが、基本的な部分ははやぶさと同じです。 タッチダウンの瞬間に小惑星表面に向けて弾丸(プロジェクタイル)を発射し、舞い上がったサンプルをキャッチャと呼ばれる採集容器に集めるというしくみです。

早速作ってみる

材料はこんな感じです。ホーンの部分は中が見やすいようにアクリルパイプで作ります。サンプルを回収する採集容器は、模型などを飾るためのアクリルボックスを流用します。そして弾丸(プロジェクタイル)の発射装置はBB弾を発射するエアガンを使います。

空気も重力もない小惑星と地球の上ではずいぶん条件が違うので、サンプルは色々な粉を用意してどれがうまくいくか試してみることにします。
用意したのは、上新粉・片栗粉・砂糖・塩・鉄粉です。やっぱりふわっと舞い上がるためには軽いほうが良さそうですよね。

組み立て開始!

では早速作りましょう。アクリルボックスの底に穴を開けてそこにアクリルパイプを取り付けます。 その真上にプロジェクタイルを打ち込むためのちいさな穴を開けます。これで本体は完成。

これだけでは寂しいので、少しそれっぽくします。
跳ね返ったサンプルがはやぶさ2の本体に当たらない ようにするためのダストガードをパイプの端に取り付けます。 テープでサンプラーホーンを伸ばすためのバネの模様をつけましょう。
さあこれで完成!

実験開始

いよいよ実験です。順番にサンプルを試しましょう。
まず一番それっぽい鉄粉からいきましょう。サンプルの上にサンプラーホーンをおいて、上からプロジェクタイルを発射します。
... 3、2、1、発射!

...なんにも起きません。 さすがに重い鉄粉では再現できないようです。

じゃあ次は一番軽そうな片栗粉で試します。
.. 3、2、1、発射!

...ぽす?あれ?全然舞い上がらない。がーん。
もしかしたら、粉同士がくっつき合って うまく舞い上がらないのかもしれません。

気を取り直して、上新粉にいってみましょう。
.. 3、2、1、発射!

...ぽす。えええ、こちらも全然舞い上がりません。 よく見ると少しだけ舞い上がってはいるんですが、ぜんぜん採集容器に届いていません。

期待していた片栗粉と上新粉が失敗です。うーん、不安になってきた。では砂糖はどうでしょうか?
... 3、2、1、発射!

あっ!とれてる!わずかにひと粒だけですが、たしかに砂糖の結晶が採れています。やった!

じゃあ最後に塩を試しましょう。砂糖がうまくいったということは塩もうまくいくかも。
... 3、2、1、発射!

実験成功!

サラサラふわふわした片栗粉や上新粉がうまくいかず、つぶの大きな砂糖や塩がうまくいったのは意外な結果でした。はやぶさ2が行く小惑星では重力も空気もありません。 上新粉や片栗粉のような小さな粒はもっと上まで舞い上がります。つぶの大きな砂糖や塩のような塊ももっとたくさん飛び散るはずです。
なるほど、シンプルでとても良くで きた仕組みですね。

さあ、いよいよ新型のサンプラーホーンを搭載したはやぶさ2が種子島宇宙センターから打ち上げられます。楽しみに待ちましょう。

2014年11月28日 更新

宇宙実験室ノート

「はやぶさ」と「はやぶさ2」のサンプル回収装置は基本の構造は同じですが、多くの改良点があります。


(1)ホーンの部分に返しをつけてサンプルを採取できる可能性を高める
はやぶさの小惑星イトカワへの着陸ではプロジェクタイルは発射されなかったものの、着地した衝撃でイトカワ表面のダストが舞い上がり、ダストのサンプルを回収することができました。これにヒントを得て、ホーンの先の内側に小さな返しをつけました。1999 JU3への着陸ではこの返しに表面のダストを引っかけることができるため、さらにサンプル採集の可能性が高まります。

(2)採集容器の中を3部屋に分けて、着陸地点ごとにサンプルを分ける
はやぶさでは、採集容器は2室しかありませんでした。着陸は2回予定されていたので一部のサンプルは別の場所で採集したものが混じってしまう前提でした。はやぶさ2では採集容器を3室に分け、異なる場所で採集したサンプルを区別できるようにします。

(3)容器の気密性を上げてサンプルから出るガスも採集できるようにする
はやぶさのカプセルは、ふたと本体の間は樹脂製のシールで密閉されていましたが、はやぶさ2ではこれを金属製に変えました。これにより希ガスなど、サンプルから揮発するガスも地球に持ち帰ることができます。

(4)小惑星の上クレーターを作って、内部のサンプルを採取する
これがはやぶさとはやぶさ2で最も大きく変わった部分、小惑星1999 JU3に向けて、サンプル回収用のものよりずっと大きくて強力な弾丸を打ち込み、小惑星表面にクレーター状の穴を開けます。そこに着陸してサンプルを回収することで、小惑星内部のサンプルを採集しようという計画です。はやぶさの成果から小惑星表面は太陽などにさらされることで組成などが変化している事がわかりました(宇宙風化)。小惑星内部のサンプルが採集できれば、宇宙空間に直にさらされていないフレッシュなサンプルが採集できます。これを表面で採取したサンプルと比べることで小惑星がどのように変化してきたかが分かるかもしれません。

関連リンク
JAXA | 小惑星探査機「はやぶさ2」
はやぶさ2特設サイト | ファン!ファン!JAXA!
「はやぶさ2」情報源 Fact Sheet Ver. 1.4(pdfファイル)

[2014.11]

※小惑星探査機「はやぶさ」・「はやぶさ2」の「サンプラーホーン」について、詳しくはこちらの記事をご参照ください

「サンプル採取の成功を信じて」(はやぶさ)
「小惑星探査機『はやぶさ』物語」
「はやぶさ2における小惑星模擬資料回収実験」(pdfファイル)

[2018.08 追記]