プロジェクトメンバーが語る「ここがすごいよ」イプシロン2号機 #6 原利顕

2016年12月13日(火)

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原 利顕(はら としあき)
イプシロンプロジェクトチーム ガスジェット装置担当


2016年4月にイプシロンロケットプロジェクトチームに配属され、ガスジェット装置の開発を担当しています。ガスジェット装置は2段機体に搭載されており、装置のタンクに充填されているヒドラジンを燃焼・噴出させることで、2段飛行中(1段分離後から2段分離まで)のロケットの姿勢を制御します。ガスジェット装置は、ロケット全体の中で見れば小さなもので、固体モータのような派手さはありませんが、ロケットが行きたい方向を向いて正常に飛行するためにはなくてはならない装置です。

図 ガスジェット装置外観
(写真は機体取り付け前、機体には上下反転して取り付けられる)

2号機のガスジェット装置は試験機の飛行結果を踏まえて信頼性向上などの改善を図っていますが、基本的には試験機で開発したものを適用しています。ただ、2号機では強化型になり、2段モータやロケットの構造が試験機から変わったことで、ガスジェット装置に対する振動環境が一部厳しくなったため、これに耐えられるか追加の評価試験を行いました。

また、ガスジェット装置以外にもPBS(Post Boost Stage)の開発も担当しています。PBSとはロケットの最上段に搭載され、衛星の軌道投入精度を高めるための装置です。強化型では試験機に搭載されたPBSの能力をさらに向上させるための開発を行っています。ただ、2号機はPBSを搭載していませんので、日の目を見るのは3号機になります。ちなみに、PBSを搭載する形態を「オプション形態」、搭載しない形態を「基本形態」と呼びます。ですので、2号機は基本形態になります。

イプシロンロケットプロジェクトチームの前の部署では、4年間、宇宙輸送事業の予算・企画業務等という、おおよそ技術からはかけ離れた仕事をしていたため、4月からは錆びついた技術的な感覚を取り戻すのに一苦労でした。開発は待ってはくれませんので、走りながら勉強するイメージでした。一方で、前の部署ではマネジメントの知識や考え方を身につけることができたこともあり、今回、プロジェクトの中で様々な制約条件を考慮しながら開発を進める上でそれは大きな糧となりました。

さて、射場ではいよいよ2号機の打ち上げに向けた最終段階にあります。普段は筑波宇宙センターでスーツを着て仕事をしていますが、射場では作業服を着てヘルメットを被って現場を回っています。これまでバラバラだった部品やパーツが一つのロケットとなっていく様は、打ち上げに向けて気持ちを昂らせるものです。とはいえ、そこは平常心で。
最後まで気を抜かず、自信を持って打ち上げに臨みたいと思います。

プロフィール:
高校生の頃に雑誌でスペースプレーン(飛行機のように離陸して宇宙に行く輸送システム)を見て、まだ世に実現していないモノを作りたいと思ったのが宇宙を目指したきっかけ。JAXA入社後は種子島でH-IIA/Bロケットの打ち上げ業務や地上設備の開発・運用業務に従事。その後、宇宙輸送事業の予算・企画業務等を経て、2016年4月よりイプシロンロケットプロジェクトチームに配属。