プロジェクトメンバーが語る「ここがすごいよ」イプシロン2号機 #4 中谷幸司
2016年12月5日(月)
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中谷 幸司(なかや こうじ)
イプシロンロケットプロジェクトチーム、計画管理/ロケットシステム/ペイロードインタフェース担当(打上管制隊ではロケット班長代理)
SPRINT-Aプロジェクトチームからイプシロンロケットプロジェクトチームへ
私は、2014年4月にイプシロンロケットプロジェクトチームに異動してきました。しかし周りはよく見知った人たちばかりでした。なぜなら異動前の私は2013年9月14日にイプシロンロケット試験機で打ち上げられた「ひさき」(SPRINT-A)の開発・打上・運用を担当しており、内之浦での射場作業中に衛星班長としてイプシロンの皆さんと毎日のように現場で顔を合わせ打ち上げに向けた作業について議論していたからです。 写真:惑星分光観測衛星「ひさき」(SPRINT-A)衛星/イプシロンロケット上段部結合の様子 |
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初めてのロケット開発
というわけで、まったく未知の分野であるロケット開発に参加することになったわけです。最初は衛星開発の経験を活かして衛星とのインタフェース(ペイロードインタフェース)調整などを担当するのかなと思っていました。確かにペイロードインタフェース調整も担当していますが、それだけではなくロケットシステム担当と計画管理担当という重要な仕事を担当することになりました。経験のないロケット開発であるため最初は戸惑いもありましたが、実際に仕事を進めるうちにかなりの部分で衛星開発の流れと同じであり、これまでのシステムズエンジニアリング(SE)やプロジェクトマネジメント(PM)の経験が活かせることに気が付きました。経験が不足していることは自覚しているので今でもロケットについての勉強は欠かせませんが、これまでの経験も活かせるということがわかり違和感なく周りに溶け込んで開発を進められたと思っています。
また、JAXA内には衛星プロジェクトは多数ありますが、ロケットプロジェクトはH3とイプシロンなど非常に限られます。ロケットプロジェクトにかかわれる機会に巡り合えたことはとても幸運なことだと感じています。
イプシロン2号機の強化ポイント
私は、契約等の各種手続き、リスク管理、スケジュール管理などを含めた開発全体の進捗管理を担当したり、各サブシステムにまたがる技術的課題の解決に向けた調整等を担当しました。開発の上位要求が定まり、そこから各サブシステムに対する要求に展開されると、各サブシステムはそれぞれある種、独立的に開発活動を進めます。しかし、各サブシステム単独では問題にならなくても、ロケットシステム全体としてみたときに問題が抽出されることがあります。抽象的になってしまいますが、例えば、サブシステムAの設計を進めるために必要なサブシステムBの情報の提示時期の認識がサブシステムAとBで異なっているとか、サブシステムCの設計のインプットとなるサブシステムDの情報が少し古いものでありサブシステムCの設計の有効性が疑われる等、などです。
これらの問題を抽出するためにおおよそ隔週でプロジェクトメンバー全員が参加する設計会議を開催し、各サブシステムの進捗状況や課題の共有をはかり、必要であれば期日を明確にした宿題(アクションアイテム)を設定します。
このような作業を主に担当していましたから、ロケットの機体を見て「あの部分を担当した」と明確に言える部分はありません。しかし、リスク管理やスケジュール管理を通じてイプシロンロケット2号機が今、内之浦に存在するということに貢献したと思っています。強化型イプシロンロケット開発では、2段モータの新規開発をはじめとする大規模・中規模開発アイテムが多数あったにも関わらず開発期間は約2年と短いものでした。関連メーカとJAXAそれからプロジェクト内外の力を結集し技術的リスクとのバランスを考えながらスケジュールを確実にキープできた点が大きなポイントと思っています。
これからの夢
現在ASNARO-2(イプシロン3号機に搭載予定の衛星)とのインタフェース調整を進めています。ASNARO-2はイプシロンにとって初のJAXA外の衛星であり、今後の需要が見込まれる地球観測衛星なのでとても重要な打ち上げになると考えています。イプシロン2号機の打ち上げを成功させ、その知見と経験をその後に控えるASNARO-2の確実な打ち上げにつなげたいと思っています。そして、その実績をもとに多くのJAXA外衛星、海外衛星をイプシロンでバンバン打ち上げられるときが来るとよいと思っています。 プロフィール: |