6時間 or 2日間?! ソユーズ宇宙船の飛行時間のひみつ

2016年6月27日(月)

  • プロジェクト
  • 宇宙飛行士と国際宇宙ステーション(ISS)
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大西宇宙飛行士が搭乗するソユーズ宇宙船の打ち上げ予定日が7月7日に決定しました。

ひとつ前のインクリメント(ISSの運用期間単位)で国際宇宙ステーション(ISS)に長期滞在していた第46次/第47次長期滞在クルーは、去る6月18日18時15分(日本時間)に無事地球へ帰還し、いよいよ大西宇宙飛行士の出番が近づいてきました。

大西宇宙飛行士が搭乗するソユーズ宇宙船の飛行計画によると、昨年油井宇宙飛行士が搭乗した時よりもISSまでの所要時間が大幅に長くなっているようです。

ソユーズ宇宙船の標準的な飛行計画 ソユーズ宇宙船の急速ランデブー方式
所要時間

2日以上かかります!


6時間で到着しました!
飛行機だと日本からベトナムくらいの所要時間です


主要な飛行計画
【打ち上げから9分後】
ソユーズ宇宙船がロケットから分離

【飛行1日目/3周回】
軌道離脱噴(1回目)

【飛行1日目/4周回】
軌道離脱噴(2回目)

【飛行2日目】/17周回
軌道離脱噴(2回目)

【飛行3日目】/34周回
ISSへ接近し、ドッキング
【打ち上げから9分後】
ソユーズ宇宙船がロケットから分離
ロケットエンジンと制御システムを使ってISSまでの1600キロメートル余りの距離を進む

【飛行1日目】/4周回
ISSへ接近し、打ち上げからおよそ5時間49分後にドッキング


ドッキング直前のソユーズTMA-16宇宙船(20S)

これはソユーズ宇宙船独特の


1) 地上との通信時間の制約

2) 宇宙船の位置の測り方、軌道制御

3) 改良


に理由があります。


このことは、大西宇宙飛行士も自らが綴るGoogle+で解説しています。大西宇宙飛行士の詳しい解説をひもときながら、順を追って理解していきましょう。

1) 地上とソユーズ宇宙船とは、通信できる時間に制限がある

ソユーズは、地上と24時間情報をやり取り出来るわけではありません。
大雑把に言うと、ロシアの上空を飛んでいる時だけ地上はソユーズの状態を把握することが出来ますし、クルーと音声通信を行うことが出来ます。
これは、通信に地上のアンテナからの電波を使用しているからです。
ちなみに、国際宇宙ステーションISSは、衛星通信の利用により、通信のカバレッジはソユーズと比べて飛躍的に向上しています。

さて、このロシア上空を飛んでいる間だけ、というのがポイントです。
ソユーズは地球の周りをグルグル回って飛行していますが、地球はそれと別に自転しています。
実際はもっと複雑ですが、わかりやすく言うと、ソユーズが地球を1周回ってくる間(約90分間)に地球も自転しているので、ソユーズは1周前と同じ地点の上空には戻ってきません。
少しずれた地点の上空に飛んできます。
そうやって少しずつ、東から西に、地上での航跡がずれていくのです。

このため、ロシアは広大な国土を持っているとは言え、ソユーズがその上空を飛行するのは、せいぜい1日の中で4周回程度になります。
それ以外は、ずっとソユーズはロシア以外の上空を飛んでいます。


ISSは、データ中継衛星を利用することで長い時間帯地上との通信が可能なので、同じようにソユーズ宇宙船の状態も地上から常時把握できるのかと思っていましたが、そうではないんですね…!

2) ソユーズ宇宙船の位置を知り軌道を制御するためには、何度も通信する必要がある

ところで、ソユーズに限らず、宇宙機はロケットによって軌道に投入された後、何らかの方法でその位置を詳細に決定してやる必要があります。
(中略)
従来のソユーズは、それらの計算の大部分を地上に依存していたので、このロシアの上空を飛行するせいぜい4周回くらいの間にISSまでドッキングするというのが難しかったのです。
例えば、ある周回で位置情報を決定し、それに基づいたエンジン噴射のデータをソユーズに送れるのは、さらにその1周回後といった感じです。

結果的に、ISSとのドッキングまで2日間を要していました。


ISSは地表からの高度は400kmですが、細かな制御が必要で、1周回ごとの通信機会が限られていると、制御に時間がかかってしまうんですね…。

3) ソユーズ宇宙船の改良~6時間へ、そしてまた2日間へ?!

ロシアが開発したソユーズ宇宙船は、1967年に初飛行して以来40年近くも息の長い活躍を続けていますが、ずっと改良を重ねています。

2013年から6時間でISSにドッキングするための特急フライト(急速ランデブー方式)が実現していますが、その理由の一つもソユーズTMA-Mの計算能力を強化する改良にありました。

では4周回でISSまでドッキングすることが可能になったはずなの今回の打ち上げでなぜ再び34周回かけるのでしょうか? それは今回から使用されるソユーズMS宇宙船が大幅に改良された新型機体だからです。

ソユーズMS宇宙船 ©ROSCOSMOS

ソユーズ宇宙船MSの主な改良点
装置 概要
姿勢制御スラスタ 姿勢制御スラスタのサイズを1種類にまとめ、配置も変更
無線通信装置 衛星間通信システムの利用を可能とし、ソユーズ宇宙船-地上間の通信可能時間帯が増加
航法システム 衛星測位システムを利用した航法システムに変更
太陽電池パネル 太陽電池セルの設置面積を増やすとともに、セルの発電効率も向上
自動ドッキングシステム 機能向上を図り、アンテナ個数の削減、小型化、軽量化等を実施

改良したらさらに速く着きそうな印象がありますが…

ソユーズ宇宙船では初めての試みになるので、地上としてはしっかりとその新しいシステムが機能しているかを、時間をかけて確認していきたいのです。
そのため、MS初号機では34周回で時間をかけながら、ISSとのドッキングを目指すことになります。


2日間の長旅を終えてISSに入る時って、きっととても嬉しいでしょうね。

おや、ここで大西宇宙飛行士からクイズがあるようです。

この正解は、ソユーズ宇宙船打ち上げから2日後のISS入室ライブ中継で明かされます。どうぞお見逃しなく!!


大西宇宙飛行士が解き明かすソユーズ宇宙船の飛行時間のひみつ、いかがだったでしょうか。打ち上げが間近となり、バイコヌール宇宙基地に到着した大西宇宙飛行士に、応援メッセージをお送りください。熱いメッセージお待ちしております!