見て聞いてさわれる 「しんかい6500」特別見学会を見学

2013年9月19日(木)

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猛暑のさなかの8月18日、「しんかい6500」特別見学会の見学のため、神奈川県横須賀市にあるJAMSTEC(海洋研究開発機構)の本部をお訪ねしました。
 JAXAインタビューで空前のアクセス数を記録した「しょこたん」こと中川翔子さんも、無類の深海ファン・深海生物マニアとして知られ、「しんかい6500」の第1159回潜航にも搭乗しています。
 宇宙ファンと深海マニアには相通じる部分も多いに違いないと、深海探査の現場を訪ねたわけですが、JAXAとJAMSTECの連携協力協定も背景にあります。


また、深宇宙での生命探査には深海調査の技術とノウハウが役立つに違いないと、JAMSTECの研究者を迎えて土星の衛星「エンセラダス」の探査の検討もはじまっています。


こうした諸々の「深いつながり」がありつつおじゃました今回の特別見学会。
 FanFunJAXAレポーター1名と大学・研究機関連携室(@jaxauniv)から2名の計3名で参加させていただきました。

さて、もちろんご存知と思いますが「しんかい6500」は日本が世界に誇る潜水調査船です。
 直径2mの耐圧殻(“たいあつこく”と呼ぶのが通)の内部にパイロット2名と研究者の計3名が乗り込み最大深度6500mまで潜り深海を自在に動きまわります。1989年の就航からすでに1400回近いダイブ(潜航)を重ね、数々の科学的成果をあげています。
 昨年、推進システムに大きな改造を施された「しんかい6500」は、母船「よこすか」に搭載され今年1月5日に横須賀を出航。世界一周の調査航海「QUELLE 2013」に出発しました。

「じぇじぇ」な発見相次ぐ大航海

インド洋海嶺の調査を経て、5月にはブラジル沖の海底で「花崗岩質の崖」を発見。“アトランティス大陸の痕跡か!?”と世界的な大ニュースになりました。
 さらに6月にはカリブ海で世界初の試みに挑戦。光ファイバーを繰り出しながら潜航する「しんかい6500」が、約5000mの海底から「深海熱水域」の様子を生中継しようという試みです。
 直径1mmの細いファイバーだけに「切れたら御免」の挑戦でしたが熱水噴出孔やそのまわりに深海生物が群がる様子を、見事伝えてくれました! ニコニコ生中継では30万人を超える来場者数(延べ人数)を記録。視聴者からは「888888!(パチパチ)」と絶えまない拍手が送られ、大成功に終わりました。しかし30万人とは「じぇじぇ!」ですね。

「今でしょ!」で一気呵成に企画が進む

その「しんかい6500」が、8月から9月にかけ、次なる航海に向けた整備点検のため一時横須賀に帰港していました。ファンの方々にも、この勇姿を見てもらう機会を提供しようと、今回の特別見学会が企画されました。関係者はこうコメントしています。
「カリブ海の船上でも生中継の反響の大きさに驚いていたのですが、パナマで下船し7月初めに帰国したら、ダイオウイカとの相乗効果もあるのでしょう、深海ブームが想像以上にすごかった。6K(関係者は「しんかい6500」のことをこう呼ぶ)がちょうど夏休み時期に整備のため横須賀に戻ってくるのは分かっていたので、生中継の慰労会のときに6Kのチームに打診してみたら『オレたちもまさにそれをやりたかった。よくぞ言ってくれた!』ということで、特別見学会の実施に向け一気にはずみがついたんです」
(JAMSTEC広報の吉澤理さん。JAXAメールマガジンでご紹介したコメントを再掲)
まさに、「いつやるの? 今でしょ!」と一気に事が進んだ見学会だったわけです。

細やかな「お・も・て・な・し」に感銘

募集期間が短かったにもかかわらず、募集人員30名のところ10倍以上の応募があったそうです。そしてJAXAは、JAMSTECさんとの日頃からのお付き合いからお声掛けをいただだき、FanFunJAXAレポーター1名と大学・研究機関連携室(@jaxauniv)から2名の計3名が取材枠で参加させていただきました。
見学会で感じた、JAMSTECさんの「伝えたい、知ってもらいたい」という熱意や、きめ細やかなサービス精神(選に漏れた方に展示会チケットをお配りし、来られなかった方にインターネット生中継を告知)に感銘を受け、これをどういう言葉で表現すべきかしばらく思案しておりました。
が、先日、未明のブエノスアイレスからの衛星中継映像を見ていてハタと膝を打ちました。8月18日、猛暑の「しんかい6500」整備棟で、私たちが目の当りに体験したのはJAMSTECさんの「お・も・て・な・し」の心だったのです。
以下、当日の様子を写真とコメントで(多少のツッコミもまじえ)ご紹介します。

01. 02. 03.
04. 05. 06.
07. 08. 09.
10.

01. 最寄り駅となる京急本線追浜駅のコンコースには、歓迎サインを掲げたJAMSTEC職員の方が笑顔で待機。
02. バスの行き先・途中駅のLED表示がJAMSTEC専用モードになっており、参加者のみなさん大喜び。
03. 真夏の太陽にあぶられながら「潜水調査船整備場」にぞろぞろと。猛暑の中、スキップしている人もいたような……。
04. 整備棟の中で「しんかい6500」が待っていました! 正面からのショットを部分拡大すると意外とドヤ顔である。
05. しんかいチームのみなさんは、全員が整備士でありパイロット。つまり自分たちでメンテナンスした船を自分たちが操縦する点がこのチームの強みです。白シャツは広報の吉澤さん。
06. マニュピレータ(ロボットアーム)の点検と、空き缶を手にとってクシャッと握りつぶすデモンストレーション。"自分の手のように動かせます"と説明されてましたが、手で空き缶をつぶせる人は、そういませんよね。
07. 参加者の中から抽選で1名が耐圧殻のコックピット内に入って点検の様子を見学。ニコニコ顔の男の子でした。
08. 茶色い積み木のような物体が深海への往復に欠かせない「浮力材」。行き(潜航)は持参した鉄板の重りで、帰り(浮上)は浮力材のおかげで水面に戻ってきます。
09. 船体の最前部にあるのがサンプルバスケット。マニュピレーターで採取したサンプルを収め持ち帰るためのカゴ。ひしゃげているのは、海底であちこちにぶつかっているから。つまりクルマのバンパーの役目も果たしているわけです。なので、そこに入って「深海で採取された生物」になりきっての記念写真もぜんぜんオッケー。
10. 満足そうに整備の現場を後にする皆さん。


 この後、今回の航海「QUELLE2013」で採取されたチムニーや深海エビなどを、研究者の解説付きで見学。チムニーの破片を嗅いだり持ってみたりするという、深海好きにはたまらないイベントや、「しんかい6500」運航チーム随一のプレゼン巧者・川間格さんが、豊富な資料写真とともに有人調査船の歴史と展望、そして「日本の潜水船の技術を絶やさないぞ!」という意欲を語ってくれました。
 そんなこんなで帰りの時間。再び専用バスで追浜駅前まで送っていただきましたが、バスの車中は往路と違って、参加したみなさんどうしがちょっとハイテンションで楽しく会話を交わす賑やかな雰囲気。「いいものみせてもらったなぁ……」という感慨に満ちあふれていました。
 参加者の中には海や深海に関連するものを身につけてこられた方も目立っていたので、最後にその写真を撮らせてもらいました。

11. 12. 13.
14. 15. 16.
おまけ.

11. せっかくなのでヒカリモノ、ということで「コハダ」のTシャツ。
12. 深海生物「スケーリーフット」の擬人化キャラ「海底紳士スケおじさん」のTシャツ。
13. その黒スケを大事そうに抱える「しんかい6500」の女の子キャラのプリントTシャツ。自作と聞いて思わず「じぇ!」。
14. 大学の放送サークルのみなさん。「しんかい6500」のかぶりものに加え、「海人(うみんちゅ)」にインスパイアされた「深海人」Tシャツ。
15. 一度聞いたら忘れられないネーミング「いか文庫」という文化活動ユニットのみなさん(本屋さんらしいです)。ほんわかしたロゴのバッグがとても目立っていました。
16. そしてコックピットに入ったあの少年は、何とJAXAキャップにNASAのTシャツ! 国際宇宙ステーションとの交信イベントにも参加したことがあり、将来は宇宙飛行士になりたいんだそうです。がんばってね!
おまけ. 「つい勢いで買ってしまいました」(JAXA大学連携室・O)と電車の中でプラモを自慢。JAMSTECの皆さん、お招きありがとうございました! この借りは「倍返し」だ!