衛星全体が望遠鏡?! ここがスゴイ!ひとみ [その1]

2016年2月1日(月)

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  • 人工衛星・探査機
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X線天文衛星「ひとみ」(ASTRO-H)は、質量2.7t、全長14mと、日本のX線天文衛星史上、最大のサイズで宇宙の構造とその進化の解明に迫ります。このトピックスでは、「ひとみ」のパワーアップした望遠鏡の性能からご紹介します。

その前に…X線望遠鏡の基本

趣味の天体観測などに使われる屈折式の望遠鏡では、凸レンズで屈折させた光を焦点に集めます。接眼レンズで見ると、対象が逆さまに見えま すね。また天文台などの大きな反射望遠鏡は、レンズの代わりに凹面鏡を使って光を集め、接眼レンズに導くしくみです。

ところが、X線は透過率が高いため、可視光のようにレンズで屈折させて集光することができません。X線には、「なめらかな物質表面」になんと「1度以下」というごく浅い角度で入ってきた場合にのみ反射し、わずかに進行方向を変えるという性質があります。この性質を利用してX線を1点に集めるX線用の望遠鏡が開発されました。

図:望遠鏡断面図とX線が集まる様子
断面図から、薄いアルミ板の反射鏡をバウムクーヘンのように同心円上に多数並べて層にした構造がわかります。その数、なんと200層以上!  実際は円錐の一部になっており、わずかな角度でX線が反射して集まります。

ココがスゴイ! 「ひとみ」は衛星全体が望遠鏡!

「ひとみ」に搭載される望遠鏡は2種類あります。軟X望遠鏡と硬X線望遠鏡で、それぞれ2台あり、あわせて4台搭載されます。どちらも、X線を反射するアルミ板を1000枚以上使って、同心円上に200層以上並べた構造で、効率良く多くのX線を集めることができます。このうち硬X線望遠鏡は、「すざく」にはなかったもので、高いエネルギーのX線を集めることができます。しかし、焦点距離も12mと長いため、打ち上げ時はロケットのフェアリングに収まりません。そこで打ち上げ後、伸展式光学ベンチ(EOB)を軌道上で6m伸展させて、硬X線撮像に必要な焦点距離12mを確保します。

軟X望遠鏡
  • 表面のコーティングは金
  • 口径は45cm、焦点距離は5.6m
硬X線望遠鏡
  • 鏡の表面に、日本のナノ技術を駆使して厚さ数ナノメートルの反射膜を何層にもコーティング!
  • 口径は45cm、焦点距離は12m
    高い指向精度を満たすため、望遠鏡から12m先においた鏡にレーザを照射することでEOBの僅かな歪みも補正!

図:「ひとみ」分離から観測開始までの「ひとみ」の様子。
打ち上げ後、太陽電池パドルを展開して、伸展式光学ベンチ(EOB)を伸展させます。

新しい仕組みと、国産ナノ技術を駆使して開発することで、「ひとみ」は硬X線帯域において、「すざく」より100倍高感度の観測を実現して、最大限の科学的成果を引き出すことが可能になりました。

反射膜を何層にもコーティングして、表面をとーっても滑らかにすることで、これまで多くの衛星が測れなかった、よりエネルギーの高いX線「硬X線」をはかれるようになったんだって!

デジカメでいうと、より高感度になったんだね!