「あかつき」金星周回軌道へ!日本初の惑星探査へ

2015年12月9日(水)

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2015年12月9日、JAXAは、金星探査機「あかつき」を金星周回軌道へ投入できたと発表しました。いよいよ日本初の惑星探査がはじまります!

「あかつき」は2010年12月7日に金星周回軌道投入を行い失敗。5年ごしの再挑戦は、探査機の設計寿命を超えていることや長期間の運用で機器が劣化している可能性があることなどから、最後のチャンスでもありました。

今回の軌道投入には姿勢制御用の小さなエンジン4台を使用しました。5年前、最初の金星周回軌道投入に失敗した時に、軌道制御用の大きなエンジンを失ってしまったためです。
本来「姿勢制御用エンジン」は、短時間の噴射で探査機の姿勢をととのえるためのものですが、今回はこれを軌道投入のために使い、約20分も噴射することにしたのです。

金星周回軌道に投入する「あかつき」の想像図。箱型の機体の隅にある姿勢制御用のエンジンを噴射しています(黄色の丸囲み部分)

12月7日8時51分(日本時間)からエンジンが噴射され、その後探査機から送信されたデータの解析を行い、同日12時には計画通りに噴射されたことが確認できました。
それから2日ほど探査機軌道の計測と計算をした結果、ついに「あかつき」が金星周回軌道に投入されたことがわかりました!

「あかつき」はすでに観測機器の立ち上げを始めており、機能確認済みの3つの観測機器からは撮影画像が届きました。
今後、残り3つの観測機器の機能確認、およそ3か月間の初期観測を行うとともに、軌道制御運用を行って金星を9日間程度で周回する楕円軌道へと移行し、2016年4月頃から本格的な観測がスタートする予定です。

紫外イメージャ(UVI)

1μmカメラ (IR1)

中間赤外カメラ(LIR)

上記はすべて、12月7日の姿勢制御用エンジン噴射後に撮影された金星の画像。はじめて見る金星の姿が地球に届きました。

本格的な観測が始まるとおよそ2年間、上空の高速の風や硫酸の雲、雷の存在の有無…謎に包まれた金星の大気の動きを調べ、その気象学を解き明かしていきます。今から待ち遠しいですね!


早朝の挑戦、そのとき運用管制室は

12月7日。相模原キャンパスの運用管制室では、早朝から「あかつき」の金星周回軌道投入運用が行われました。その時の様子を写真でお伝えしましょう。

軌道投入前の運用管制の様子1

軌道投入前の運用管制の様子2

固唾をのんで画面を見守るプロジェクトチーム

エンジン噴射の後に、拍手がおこる運用管制室

Our dreams will...

金星のように輝かしい笑顔!

中村プロジェクトマネージャは昨年(2014年)4月22日に発行されたISASメールマガジン 第500号掲載のコラムで、次のように書いています。

“周回軌道に入れなかったトラブルは様々ですが、投入時に爆発してしまったりして、無事にその機体が保たれること自身珍しく、さらにその探査機が太陽を何周も廻った揚げ句、目的の惑星に再び辿り着き、そこで逆噴射をして周回軌道にのるという事はある意味夢の様な話です。しかし、その夢の様なことを我々は「あかつき」に挑戦させようとしています。”

そして、2015年12月7日。昼に行われた記者会見によると
周回軌道投入の運用が完了したとき、中村プロマネは次のように述べたそうです。

“Our dreams will come true.”

広がる応援の輪

今回の運用には、日本中、世界中からたくさんの応援が集まりました!ありがとうございます。

運用開始と同じ4時頃から、相模原キャンパスでは金星の観察会「金星探査機『あかつき』挑戦の日に金星を見よう」を行いました。


全国各地でも、たくさんの方が「明けの明星」金星を見てくださった模様です。


また、応援のメッセージは日本だけでなく、世界中から届きました。JAXAウェブには今日(12月9日)現在で日英300件を超すメッセージがあつまっています。ツイッターでも #あかつき応援 のハッシュタグでたくさんの応援をいただきました。

NASA深宇宙ネットワークのキャンベラ局からも、日本語ハッシュタグで応援が!

もちろん、これからが「あかつき」のミッションスタートです。
金星の大気の謎を解き明かし惑星気象学を確立させるという大きな目標に向かう「あかつき」。これからもどうか応援よろしくお願いします。