人工衛星の梱包・輸送のおはなし

2015年7月7日(火)

  • 人工衛星・探査機
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人工衛星が実際に運用されるまでには、設計や製造など様々なフェーズを重ねていきますが、ここでは地味ながらも必要不可欠な人工衛星を輸送するための梱包・輸送(陸上)についてクローズアップしていきます。

衛星にとっての梱包の極意!?

衛星用コンテナ  (C)APCエアロスペシャルティ株式会社

梱包といえば皆さんも日常生活の中で身近に行われていることだと思います。その共通な極意とは、「絶対に壊れないこと!」あたり前の話ですが、衛星の運搬ともなると、高度な技術をベースとしたノウハウや専用の重機、容器などのさまざまな工夫が用いられます。
また、デリケートな精密機器のために、塵やほこり対策のために梱包はクリーンルーム内で行われ、厳しい温度管理のもとに作業は慎重に行われます。
決して日の目を見るような成果ではありませんが、その工程は一つのミッションに相当するくらい重要でたいへんな作業です。

まず、人工衛星を開発施設で梱包して搬送、射場まで輸送する工程を「日通NECロジスティクス」の場合を参考に挙げてご紹介します。

(1)輸送計画

まずは、衛星の特性から梱包するための計画を立案します。このときに梱包・輸送のために取り外した部品を現地でどう組み立てるのか、や材質の特性からどのような梱包方法が適しているのか、梱包容器の選別などを計画します。

(2)現地検証

発送元および到着先では輸送路までのルートを現場で計測して確認し、梱包した状態での移動ルートやトレーラーへの積載場所や、搬入出に必要な治具や養生箇所など厳密に検証をおこないます。

(3)梱包設計

保護機能はもちろん、防塵に対する気密性、また搬入先での開梱のしやすさなど、収集した情報を元に選定します。

専用の梱包容器や重機など

こんな輸送用コンテナや重機が使われることもあるようです。

人工衛星輸送用 特殊コンテナ
(C)イプロス製造業

人工衛星組み立て用回転台・架台・スリング
(C)イプロス製造業

(4)搬出(陸上輸送)

●「はやぶさ2」の搬出(機体陸上輸送の様子)

下の4枚の画像は、昨年「はやぶさ2」をJAXA相模原キャンパスより種子島宇宙センターに出荷している様子です。
衛星運搬用のコンテナに収めて、さらに周囲を半透明状の資材で包み、厳重に扱われます。
「はやぶさ2」の重量は約600kg、大型精密機器運搬に特化したトレーラーに積み込まれ一般道に出るまでを動画で紹介しています。


●「いぶき」(GOSAT)の棟間移動(機体陸上移動の様子)

2006年に行われた、温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)の棟間移動の様子です。
遠距離移動ではありませんが、屋外を通るので塵やほこりの対策を青色の保護ビニールで覆い密閉して梱包します。下記のリンク先からチームワークを駆使した棟間移動の作業風景を見ることができます。


参考

日常の中でも使用するもの

人工衛星以外でも宇宙にものを持っていくことがありますが、中には実験装置など壊れやすいものが多くあります。
JAXA宇宙ステーション・きぼう広報・情報センターに掲載されているコラム「サチコの実験日記」の中で、みなさんが普段の生活の中でも身近に使用している梱包材が宇宙でも活躍している興味深い記述があります。


振動が直接伝わらないように大事に梱包します。よく食器や電化製品を運搬するときに使うエアークッション、エアーキャップ、バブルラップ(“プチプチ”という名前で売られているものもあります)ともいいますが、あのような梱包材つきの袋を、宇宙の世界でもよく使います。スポンジのような梱包材で包むこともあります。宇宙に行く器材なのに、意外と普通に身の回りにあるものを使って包んでいると思いませんか?無事に装置を宇宙に届けるために、梱包材の包み方つまり梱包設計がとても大切です。


世界で相互に運ばれる人工衛星や関連する部品

(c)物流ウィークリー

様々な部品から構成される人工衛星は、その部品や搭載機器の輸送についても、国内だけに限らず世界からの支援や協力を受けることがあります。
2007年には、太陽観測衛星「ひので」の国際輸送に総合的にご支援いただいたUPS社にJAXAから感謝状をお贈りしたことがあります。

開発チームの思い

開発を終えた人工衛星は開発チームにとって、日々の努力を積み重ねてきた研究の集大成といえるものです。
人工衛星が梱包されて搬出する時は、感慨深くその姿を立ち会い見送ることもあります。その思いや様子が、以下のISASニュースで取り上げられています。



このように日常にもありふれた“包む”ことが、宇宙開発でも活用されています。



関連リンク(出典)