“L+119” それぞれの役割が目指す先

2015年4月1日(水)

  • プロジェクト
  • 人工衛星・探査機
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4月1日、カウントアップはL+119となりました。
年度の切り替えで、皆さんもまだまだ慌ただしい時期ではないでしょうか。
「はやぶさ2」の運用現場は、1回目のイオンエンジン連続運転を乗り切り、少し落ち着きを取り戻しています。探査機の状態も安定しています。

上:探査機・採取試料のカプセルへの収納イメージ
下:再突入カプセル断面図

新年度早々、2020年のその先に向けたお話です。「来年のことを言えば鬼が笑う」と言いますが、プロジェクトではそんなことは言ってられません、ね。

2020年に「はやぶさ2」がきっと持ち帰ってくれる小惑星の試料は、皆さんをはじめ、世界の研究者が心待ちにしています。試料の分析は、国内外の研究機関、研究者と協力して進めることになるからです。小惑星イトカワの試料でも、国際公募で選ばれた研究が続いています。

その際、研究機関、・研究者に渡す試料は、できるかぎり「宇宙で採取した状態を保っている」ことが求められます。地球の空気やさまざまな物質の影響から試料を守り、地球上の物質と混ざることを避ける必要があります。「はやぶさ2」が採取する試料には水や有機物が含まれる可能性があるため、試料の入れ物(サンプラコンテナ)も密封性を向上させるなど対策をとっていますし、地上の分析機器や設備、サンプルの輸送容器などにも対策も必要です。また、サンプラコンテナから取り出した試料一つ一つの状態や基本的な鉱物・含有物質などの情報を、整理・分析し、リスト化していきます。このデータベースは、研究機関・研究者の研究テーマとのマッチングを図り、研究成果を最大限引き出すための基本情報として欠かせません。地道ですが、重要なこれらの作業を「キュレーション」と呼んでいます。

そして、この中心的な役割を担うチームが、JAXA宇宙科学研究所 地球外試料キュレーションセンター(*)です。
キュレーションセンターは、来る試料の初期分析に向けて、4つの機関(**)と連携して、試料の受け入れ・輸送に必要な機器ほかの開発、初期分析に向けた準備も進めています。

2020年地球帰還のあかつきには、鬼も笑って出迎えてくれるよう、準備に全力を尽くしたいと思います。

試料取り出し作業の様子(キュレーション設備)

(*)
(**)

-4つの機関-
海洋研究開発機構 高知コア研究所
自然科学研究機構 分子科学研究所
情報・システム研究機構 国立極地研究所 南極隕石ラボラトリー
高輝度科学研究センター(JASRI/SPring-8)

   

<「はやぶさ2」航行ステータス>
2015年4月1日14時0分(日本時間) 現在

太陽からの距離 1億6,266万km
地球からの距離 4,592万km
赤 経 108.38度
赤 緯 -1.75度
航行速度(対太陽) 27.28km/s

地球から見た「はやぶさ2」の方向

はやぶさ2と地球、太陽、小惑星1999 JU3 の位置関係(概略図)

はやぶさ2カウントアップレポート“L+(エルプラス)”とは―

打ち上げ後の経過時間を示す際、運用現場では「Launch(打ち上げ)」と「プラス○日」を組み合わせて「L+1(=エルプラスイチ)」と表現します(あくまでも一例ですが…)。
今後、「はやぶさ2」の航行ステータスなどをお伝えするにあたり、6年間という長いミッション期間での“時間経過”を皆さんと一緒に感じていきたいとの想いから、レポートタイトル名といたしました。
“L+”では、はやぶさ2広報担当者がミッション内容や運用状況にまつわるトピックスをお伝えしてまいります。