金井宇宙飛行士、こんにちは! [前編]

2014年12月9日(火)

  • ホシモの部屋
  • 宇宙飛行士と国際宇宙ステーション(ISS)
このエントリーをはてなブックマークに追加

2011年7月にISS搭乗宇宙飛行士として認定されて以降、日本をはじめとする世界各地で訓練に励む金井宣茂(かないのりしげ)宇宙飛行士。2014年9月末、訓練のため日本に一時帰国した金井さんに、ファン!ファン!JAXA!編集部がお話をききました。

― 金井宇宙飛行士、今日はよろしくお願いします。ファン!ファン!JAXA!編集長のMachikoとSugi、ホシモです。

金井宇宙飛行士(以下、金井):はい、ファン!ファン!JAXA!はよく見ています。先日宇宙服の記事(参考:一番小さな宇宙船 - 宇宙服)も読ませていただきました。とてもおもしろかった。 この子はホシモくんですね。ホシモくんも、はじめて登場した「こんにちは! ホシモです。」[ホシモの部屋]から読んでいます。

― ええっ! それは嬉しいです~! 今日はよろしくお願いします。

ホシモの部屋

宇宙飛行士に応募するまで~異業種へのチャレンジ

― 金井宇宙飛行士が宇宙・天文に興味をもったのはいつごろからでしょうか。JAXA宇宙飛行士の多くが小さいころから宇宙や天文が好きだったそうですが、金井さんも宇宙少年だったのでしょうか?

金井:私は、子供の頃はあまり宇宙などに興味がなかったんです。大人になり、医師になってから、宇宙飛行士になりたいと思うようになりました。

当時の宇宙飛行士募集ポスター

― そうなんですか! 意外です。
そういえば向井宇宙飛行士は医師として活躍していた頃に「地球を外側から見てみたい」と思い立ち、宇宙飛行士募集記事を見つけて応募したそうです。(参考:宇宙ステーションキッズ)金井さんの、宇宙飛行士を目指そうと思い立ったきっかけはなんでしょうか?

金井:きっかけは自衛隊医官として働いていた頃にありました。業務の一環で米海軍で潜水医学の研修を受ける機会があったんですが、教室の壁に「この教室出身の米海軍軍医で、宇宙飛行士になった人」の写真が貼ってあったのです。
それを見て、「米海軍の軍医で宇宙飛行士になれるなら、海上自衛隊の医官の私も宇宙飛行士になるチャンスがあるんじゃないか!?」と考えました。
それから宇宙に関する情報をこまめにチェックするようにして、募集記事をみつけました。

― 偶然の出会いが転機をもたらしたのですね~。
あれ? 金井さんは前職では潜水医学をご専門にされていたと伺いましたが、ご自身が潜水するわけではなかったと思います。宇宙飛行士になると、ご自身が宇宙に行く立場に変わりますね。

金井:はい。たしかに前職では訓練でダイビングを行ったことはありますが、勤務では自分が潜るわけではなかったです。

― 医師として宇宙に関わる仕事に就きたいと考えたら、地上で宇宙医学を担当する道もあると思うのですが、どうしてご自身が宇宙に行く立場に転身しようと思ったのでしょうか。

金井:『中年ドクター宇宙飛行士受験奮戦記』 という本を読んだのがきっかけの一つでした。40歳をすぎた医師のかたが、夢を叶えるため宇宙飛行士選抜試験にチャレンジした手記です。(一般向け書籍)
著者の方は結局選抜に落ちてしまうのですが、とにかく必死で夢に向かう、目標に向かう…… 言葉にするとチープになりますが、高いモチベーションに感動しました。
今だと油井宇宙飛行士が「中年の星」と自称されていますが、著者の方もいわゆる“中年”の年齢だし、本を読んだ当時の私も32歳。仕事をある程度覚えた年齢でした。そんな時期にこの本を読んだから、特に心に響いたのだと思います。

自分と同じ医師ということを抜きにして、一人の人間として全力で夢に向かう姿勢に感動しました。私もこんな風に転機を迎えたい、今までとは違う世界にチャレンジしたいと思ったんです。

(C)学研

― そうなんですか! その本、読んでみます。私も、同じ年代なので共感するところがあると思います。

金井:そうですね。でも読んだ結果、JAXAから転職しちゃったりして(笑)
ちなみに、宇宙飛行士というと日本では若い人がチャレンジする印象があるかもしれませんが、他国では別の職業で経験を積んでから宇宙飛行士になる方がとても多いです。皆さん、多彩なバックグラウンドをお持ちですよ。

国境を超えたお仕事

― 金井さんは、別の分野で活躍されてから宇宙飛行士候補生に採用され、宇宙飛行士に認定され、そして今まで訓練を積む過程で、価値観が変わったり、新しく視野が広がったり、ということはありますか? たとえば国際理解の面ですと、油井宇宙飛行士はツイッターやブログで「ロシアに対する見方が180度変わった」と話されていました。

金井:そうですね。
宇宙開発は今やとても大きなプロジェクトとなり、国際協力なしには成り立ちません。
私はアメリカやロシアで訓練をしてきましたが、滞在中にその国の歴史文化を学ぶ機会がありました。例えばロシア滞在中にバレエを見に行ったりもしました。
そういった経験を経て、以前は日本人と大きく違う意見に接した際「全く理解できない」と思っていましたが、「ああいった文化が背景にあるから、こういう考え方があるのかな」と考えられるようになりました。

― そうなんですね!
そういえば漫画『宇宙兄弟』を読んでいるとロシアの一般家庭にホームステイする場面が出てくるのですが、宇宙飛行士の訓練中にホームステイをするなどして外国の方とまったく同じ環境で生活する機会はあるのでしょうか。

金井:訓練で滞在するとき、ホームステイとホテルを選べたのですが、私はホテルを選びました。ただ、星の街(ロシア)では、訓練中の宇宙飛行士はNASAのコテージに一緒に滞在します。宇宙飛行士は多国籍なメンバーですので、外国の方と協力して生活していましたよ。交代で全員分の食事を作り、みんなで食べたりしました。私はカレーを作ったのですが、中には食べられない方もいましたが、ほとんどの方が喜んで食べてくれて、よかったです。

― 食事の時間はとても大事なコミュニケーションの場ですね。
やはりカレーは海上自衛隊伝統のカレーだったのでしょうか……。

金井:いやいや、カレールーで作る初歩的なカレーです(笑)。
料理の腕は人によってまちまちで、料理上手な人から、ご飯が炊けないH先輩(参考:新米宇宙飛行士最前線 大西卓哉の卓配便21通目「星の街」)などですが、私はご飯を炊くことは出来ましたけど、料理は自信がないので、簡単に作れてなんとかなるカレーで勘弁して、ということです。わりと好評で良かったです。

ここまで金井宇宙飛行士へのインタビュー[前半]をお届けしました。いかがだったでしょうか。
ご感想・ご質問は、ぜひコメントからご投稿ください! そして後半もお楽しみに!

 (後編はこちらから)