いよいよ、博士たちの衛星制作プロジェクトも大詰めを迎えました。これまでミッションの計画、機体の制作、テストと段階を経てプロジェクトを進めてきましたが、いよいよ実験本番です。早速ロケットに乗せて! というわけにはいかないので高いところで実験します。
実験の前に、博士たちが作った機体をじっくり紹介しましょう。
機体を作るときに博士たちが掲げたミッションはこういうものでした。
「上空からカメラで地上の様子を撮影して、撮影した映像を地上に送る」
そして、そのミッションを達成するために、博士たちが作った衛星はこんな感じです。
さあ、いよいよ実験です。実験はJAXA相模原キャンパスの宇宙科学研究所のビルの上から行います。オブザーバーにはおなじみ宇宙科学研究所の阪本先生に加えて、なんとヨーロッパ宇宙機関(ESA)の広報担当の方に立ち会っていただきました。なんといきなりワールドワイド! 太陽電池パネルを固定するロックを解除すると実験スタートです。
というわけで、実験成功です! おめでとー!
立ち会っていただいたESAの方にはこんなコメントを頂きました。
「おめでとう! 次は宇宙だね!」← こういうことをおっしゃっていた気がしますが、定かではありません。
もちろんです! (ほんとに!?)
宇宙実験室ノート
人工衛星が人工衛星であるために必要な物ってなんでしょうか? 地球の周囲を回る軌道に乗ることその意味で言えば、博士たちの衛星は、宇宙にも行きませんし、おそらくロケットにも乗せられません。とても本物の人工衛星と比べられるような物ではありません。でも、人工衛星に必要な機能という意味では、ごく一部ですが確かに博士たちの衛星はその機能をちゃんと真似しています。たとえば 「自ら電力を発生する」「自律的に動く」「自分の状態を地上に知らせる」「定められたミッションを達成する機能を持っている」といった部分です。
人工衛星に必要な機能は大きく分けて5つぐらいでしょうか。定められたミッションを行うための「ミッション機器」、地上と通信をするための「通信機器」、衛星の姿勢や軌道を調整するための「姿勢制御装置」(小型の衛星にはついていないものもあります)、機器を動かすための「電源」、そしてこれらの装置を管理制御するコンピューターなどの「制御装置」。博士たちの衛星は姿勢制御装置以外の4つを備えています。
あるいは、日常生活を見渡してみると、意外とこれらの機能を備えた装置が沢山あることに気づくかもしれません。例えばテレビ。「ミッション機器」「通信機器」「電源」「制御装置」を持っています。最近のテレビは自分で判断して録画予約をしたりしますからね。あるいはスマートフォン。こちらも姿勢制御装置以外のすべての機能を持っています。じつは、スマートフォンをそのまま衛星の心臓部として使ってみようという実験的な小型衛星「フォーンサット」も作られて、実際に宇宙に行っています。そうやってみると、私たちの周りには人工衛星みたいなものでいっぱいです。
今回、私たちは、電気屋さんや日曜大工店で手に入る物を使って「人工衛星っぽいもの」を作ってみましたが、これは凄く楽しい経験でした。ミッションを決め、それに必要な設計を考え、実際に組み立て、テストをして動かす。すごくいろいろなことを考えなければなりませんし、もしコレが宇宙に行ったらどうなるだろう、そのためにはどうすればいいだろうと考えるのはとてもワクワクします。もちろんうまく動いた時の喜びはひとしおです。ぜひ皆さんもチャレンジしてみてください。そうそう、くれぐれも安全には充分に配慮して下さい。それも重要なミッションの一つ、本物の衛星でもそれが何よりも重要なことですからね。
[2014.4]