前回、缶サット甲子園を見学してなにか思いつた博士たちは、さっそく材料を買いに出かけました。一体何を作るつもりなんでしょうか?My人工衛星、今回は買ってきた材料を使って衛星の組み立てを行います。
前回、博士たちが設定したミッションはこういうものでした。
「上空からカメラで地上の様子を撮影して、撮影した映像を地上に送る」
それを実現する衛星の機能はこんな感じです。
- 太陽電池で電気を作って機器を動かす。
- 地上から衛星の状態がわかるようにする。
- 宇宙の厳しい環境でも耐えられるようにテストをする。
さて、このミッションを実現すべく、意気揚々と秋葉原に買い出しに出かけた博士たちが買ってきたのは...
アルミパネルは本体用、太陽電池やモーター、ギアは機器を動かすため、ビデオカメラは撮影用ですね。磁石?釣り糸?カッター?カップ麺?人工衛星なら、機器を制御するコンピューターや通信機器がいるんじゃないの?缶サットだって中は電子機器の塊でしたよね...
ホワイトボードで作戦会議。
心配をよそにさっそく博士たちは組立を始めました。
内部は二段式。上段にモーターやギアなどの機器を入れ、下段はカメラが入ります。
左右にアームで支えた太陽電池を置きます。ヒンジで折りたためるようになっています。
太陽電池に光を当ててちゃんと電気が起きるかチェックをします。
じゃーん!完成!
電子回路やコンピューターで機器を制御するのは、高度な専門知識が必要です。そういう複雑な機器を使わずに衛星の機能を作れないか?そう考えて博士たちが作ったのはこんな衛星です。
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太陽電池を開く
人工衛星を上空に持ち上げたあと、地上に垂らした紐を引いて、ストッパーの磁石を外して折りたたんでいた太陽電池を開きます。太陽電池はバネ時掛けで開く仕組みになっています。
え?地上から紐を引くのはずるい?いえいえ、本物の人工衛星だって太陽電池を開くまでは、 地上から持っていった電池を使います。この紐はその代わりです。
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太陽電池の電気で、各機器を順に動かす
太陽電池は、衛星の中においたモーターを動かします。モーターが動くと、カッターの刃をつけた棒がギアで少しづつ送り出されて、順番に釣り糸を切っていく、という仕組みです。各シーケンスごとに、衛星の外につけた小さな旗がぴょこんと立って、各機器が正常に動作していることを地上に知らせます。
え?電波で通信しないのかって?大丈夫ちゃんと衛星は自分の状態を地上に知らせています。 電波じゃなくて目に見える光を使っているだけです(少し波長が短いだけです)。
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撮影した映像を地上に送る
最初の釣り糸が切れると、衛星の底にある窓が開いて撮影が始まり、更に時間が経つと衛星の底板全体が外れて、ビデオカメラを入れたカプセルが落下します。
え?「撮影した映像を地上に送る」って送信するんじゃなくてカメラごと回収なの?はい、本物の人工衛星もフィルムのカメラしか無かった頃は、撮影済みのフィルムをカプセルに入れて回収していたんですから、問題ありません。
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宇宙実験室ノート
当然ながら、博士たちの衛星は宇宙では動きません。重力がなければ、衛星の底板は開きませんし、地上からは遠すぎて「通信用の旗」は見えないでしょう。真空中ではギアなどの動作も大きな制限を受けます。また、電池やモーターなどの電子機器も宇宙環境に耐える仕組みが必要です。
一方で博士たちの衛星が、一部にせよ人工衛星が持つべき機能を模擬しているのも事実です。地上と繋いだ紐を電池に置き換え、旗を通信機に置き換え、カッターの刃や釣り糸を、モーターやアクチュエーターに置き換え... と、一つづつ宇宙用の機器に入れ替えていけば、いつかは本当に宇宙で動く衛星が作れる、かもしれません。本当にやろうとすると、遠い道のりですが、でも繋がっています。
近年「キューブサット」とよばれる10cm四方の超小型衛星が大学の研究室やベンチャー企業などで作られ、実際に宇宙で活躍しています。これらの衛星は、博士たちの衛星とは比べものにならないほど、技術的にも高度で本格的なものですが、人工衛星はどんどん身近なものになりつつあります。いつか、お店で買ってきた模型を組み立てるように本物のMy人工衛星が作れる日が来るかもしれませんね。
相乗り小型衛星| JAXA新事業促進部
http://aerospacebiz.jaxa.jp/solution/satellite/
[2013.8]