船外活動中に命綱が切れたらどうするのですか?
宇宙飛行士について
スペースシャトルで船外活動を行う場合は、テザー(命綱)が切れた場合はスペースシャトルがすぐに助けに行くことになっています。ところが、国際宇宙ステーション(ISS)とドッキングしている時にはドッキングを解除して助けに行ってるようでは時間がかかり間に合いません。
また、スペースシャトルがいない間にISS上で船外活動を行う際には、救助に行けません。
このようなケースに備えて、NASAはSAFER(Simplified Aid for EVA Rescue)と呼ばれるセルフレスキュー用の小型推進装置を開発し、ISS組立時の船外活動の際にはこれを装備することになりました。これは船外活動中に命綱が切れたり、誤ってスペースシャトルやISSから離れてしまったときに、SAFERの持つ窒素ガスを噴射して、宇宙飛行士が単独でも戻ることができるようにしたものです。
SAFERは、初期のスペースシャトル飛行段階に使用された有人飛行ユニット(Manned Maneuvering Unit: MMU)の小型版であり、機能はMMUとほぼ同等ですが、推進剤タンクの容量を減らしたり一部の機器を省略する等により小型化されました。一番の違いは使用目的であり、MMUが船外活動中の自由飛行を目的としたのに対し、SAFERはセルフレスキュー用であり、ISS組立時の船外活動では宇宙服に必ず装着する事になっています。そのため、非常時以外は使用しません。
SAFERを装着して船外活動を行う宇宙飛行士(STS-110)
しかし、命綱は充分な強度を有しているうえ、船外活動を行う宇宙飛行士も充分な訓練を受け、注意深く作業をしているため、今まで命綱が切れたり、誤って作業場所から飛ばされるような緊急事態は発生していません。
スライドワイヤーとセイフティテザーを組み合わせた使用イメージ