おさらい!「こうのとり」運用管制チーム

2016年11月17日(木)

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打上げ予定日が12月9日に再セットされた、宇宙ステーション補給機「こうのとり」6号機(HTV6)。筑波宇宙センターの「こうのとり」運用管制チーム(HTV Flight Control Team:HTVFCT)は、打上げ日に向けて準備に余念がありません。

「こうのとり」の運用管制室ってどんなところ?

筑波宇宙センター全景

筑波宇宙センターにあるHTV運用管制室は、「こうのとり」(HTV)がISSに物資を輸送する際、「こうのとり」の飛行を安全に制御および監視する設備です。

また、HTV運用管制室とNASAジョンソン宇宙センター(JSC)にあるミッションコントロールセンターが、協力・連携して「こうのとり」の運用業務を実施します。

運用管制のお仕事

「こうのとり」をISSへ届けるための任務は、とても緊張感のあるものです。

「こうのとり」がH-IIBロケットに載って宇宙に打ち上がり、フェアリングから放たれてからおよそ5~6日間、「こうのとり」が地球を周回し高度を上げてISSへ向かう間、姿勢・位置・熱・電源… 宇宙を翔ぶ「こうのとり」と通信し、あらゆる状況を24時間体制でモニタリング。

ISSへ接近したら、ISSクルーがキャプチャできる距離まで、秒速8kmで動く「こうのとり」を数cm単位で動かす、緻密な運用を行います。

ISSに到着すると、約1ヶ月後にISSの不用物を積み込んでISSから離脱、大気圏に再突入してミッション完遂!…というのが通常ですが、「こうのとり」6号機では離脱後、大気圏に再突入する前にHTV搭載導電性テザーの実証実験(KITE)を実施予定です。KITEについて詳しくはこちら→(http://www.ard.jaxa.jp/research/kite/kite.html

どんな不測の事態にも耐えられるよう、あらかじめ数百の国際ルールや何千もの手順書の整備、訓練を行って確実な運用管制の技術を高めるのも、重要な仕事です。こうして5号機まで全てのミッションを完遂。6号機でも確実にミッションを遂行していきます。

運用管制チームには、それぞれどんな役割があるの?

HTV運用管制チーム(HTV FCT)は、3シフト24時間体制で運用を行います。 おおむね20名程度が運用計画の進行管理、HTVの状況のモニタリング・技術的な判断、NASAとの調整など、細かく担当に分かれ、ミッションを遂行しています。そして、チーム全体を率いるのがリードフライトディレクタ。

ここが大変!運用管制

運用管制の苦労を挙げたらキリがありませんが、一部をご紹介しましょう。

訓練につぐ訓練!どんな想定外も想定内に

「こうのとり」ミッションは2ヶ月程度。でも、運用管制の打ち合わせや訓練は1年以上前からはじまっています。トラブルが起きないよう、またどんなトラブルも乗り越え無事ミッションを完遂できるように訓練を何度も行います。
訓練はJAXA/NASA合同で行われることも。実際の運用のタイムラインに沿った訓練では、意図的に起こす、これでもかというほど多数のトラブル対処を試されます。実際のミッション完遂をより確実なものにするため、チームで運用技術を高めているんです。

素早い判断!

「こうのとり」は秒速8kmで飛行しています。10秒考えたら、「こうのとり」はあっという間に80km先まで飛んで行ってしまうので(JAXAの「こうのとり」は速い!) 何か起きた時、チームはリードフライトディレクタのもと、常にできる限り早い判断と実行が必要です。

英語で調整!国際協力ミッション

「こうのとり」はISSへ向けて飛んでいくので、いろいろな調整ごとを英語で行わなくてはいけないことです。メールを書くにしても会議をするにしてもすべて英語。英語を話せる人が増えている昨今ですが、それでもシビアな交渉からトラブル対処まで英語で行うのはとても大変です。
でも、一生懸命考えてこちらの思うことを伝え、相手にもきちんとわかってもらえたとき、とても大きなやりがいがそこにあります。また、技術的な課題を共有し、JAXA/NASA一緒になってその対応策を考え、NASAにも協力してもらってその課題をクリアした時は、チームだけで課題を解決して乗り越えた時よりさらに嬉しいそうです。

気分はフライトディレクタ! 運用ポジションの略語集

ちょっと専門的になりますが、フライトディレクタになったつもりで運用ポジションの名称を確認してみましょう。これだけの仕事があるんです。


HTV運用管制チームの役割と座席表

HTVGC:HTV運用で使用する設備およびネットワークの管理を行う。
COMM/DH:HTVの通信データ処理系の状況をモニタし、技術判断を行う。
CMD:手順書に従ってコマンド送信運用を行う。
HTVSYS:HTVのシステム運用状況を把握しNASAとの連絡・調整を行う。
S&MA:HTV FCTとは独立した立場で、安全とミッション保証の観点からHTV運用を評価し、HTV FCTに対し評価結果を報告する。
TRAJ:HTVの軌道・マヌーバ状況をモニタし、技術判断を行う。
GNC:HTVの航法誘導制御系運用の状況をモニタし、技術判断を行う。
PROP:HTVの推進系の状況をモニタし、技術判断を行う。
THERMAL:HTVの熱系および与圧部の環境制御系をモニタし、技術判断を行う。
POWER:HTVの電力系の状況をモニタし、技術判断を行う。
SYS-J:HTV運用手順の進行管理を行うことでHTV-FLIGHTをサポート。
RNDV:HTVのランデブに関する運用状況を把握し、NASAとの連絡・調整を行う。
ARO:ランデブに関するNASAの専門家であり、JAXA/NASA間の調整を支援する。
ROE:再突入軌道、マヌーバ計画の独立評価、並びに、再突入時の安全監視を行う。
EP:HTV曝露パレット/非与圧キャリアの状況をモニタし、技術判断を行う。
PLAN:HTV運用計画立案を行う。実運用中における運用計画の見直しを行う。
HTV-FLIGHT:HTV FCT全体を統括し、HTV運用全体の最終決定を行う。

「こうのとり」運用管制チームへ応援メッセージを

「こうのとり」ミッションの成功に向け、準備を進めている「こうのとり」運用管制チーム。現在ファン!ファン!JAXA!では「こうのとり」ミッションと運用管制チームへの応援メッセージを募集中です。

11月20日までに頂いたメッセージは、パネルにして運用管制チームに届けます。ぜひあなたの応援で「こうのとり」を成功に導いてくださいね。