「こうのとり」を運ぶH-IIBロケット

2016年8月5日(金)

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「こうのとり」6号機打ち上げ日が発表された7月26日、愛知県にある三菱重工飛島工場では、H-IIBロケット6号機コア機体が報道関係者向けに公開されました。
「こうのとり」を着実に軌道まで届ける、頼もしいH-IIBロケット6号機の姿を編集部がレポートします。

三菱重工 飛島工場 外観

三菱重工 飛島工場 外観

この日、公開されたのは全長56.6mあるH-IIBのうち、コア機体と呼ばれる第1段(長さ31m,直径5.2m)、第2段。(長さ11m、直径4m)です。ロケット先端部のフェアリングや、固体ロケットブースタ(SRB-A)はすでに種子島宇宙センターに運び込まれており、射場で組み立てられます。

H-IIBロケット

機体は、いずれも横に寝かされた状態で公開されました。
第一段機体は長さ31m。ごろりと寝かされた巨大な機体は圧巻の迫力です。(余談ですが、建物だと高さ31mをこえる場合“高層建築物”に分類されるそうです。)

H-IIB 第1段機体
H-IIB 第1段機体

H-IIB 第1段機体

第2段機体も、圧倒的な存在感。直径は第1段機体より一回り小さいのですが、それでも充分に大きい!

H-IIB 第2段機体
左は第1段機体、右奥は第2段機体。

左は第1段機体、右奥は第2段機体。



「こうのとり」を運ぶH-IIBロケット、コア機体の特長は3つ。

機体を見ながらおさらいしましょう。


1. メインエンジン(LE-7A)が2つ!

メインエンジン(LE-7A)が2つ

公開された機体を見てまず目を奪われるのが、赤いカバーが被せられた、巨大な2基のメインエンジンです。
H-IIBロケットは、H-IIAでは1基の第1段液体ロケットエンジン(LE-7A)を2基搭載しています。H-IIAで実績のあるエンジンをクラスタ化し、開発の期間やコストを抑えながら着実に性能を高めています。


2. H-IIAロケットより“ちょっと”大きい

第1段タンクの直径は、H-IIAの4mに比べH-IIBは5.2m。ロケット全長もH-IIAより1m長いんです。このことで、メインエンジンに使う推進薬を約1.7倍搭載できます。
(パッと見ただけではその大きさの差はぴんときません。いずれも十分大きいのです)


3. H-IIAにそっくり!?

機体公開が行われた工場では、H-IIBロケットの隣でH-IIAロケットの製造も進められていましたが、どれがH-IIBでどれがH-IIAかわからなくなるほど似ていました。
H-IIBロケットの開発時、これまで運用実績が十分にあったH-IIAロケットの仕様・構成をできるかぎり踏襲することで、信頼性をあげ、開発リスクやコストを下げるよう設計をすすめた結果の現れですね。

H-IIAにそっくり

作りこまれ、完成された機体

H-IIA、H-IIBともに、工夫や精密な技術をこらして作り上げられた、完成された機体です。公開された機体を間近で見ると、第1段機体のうち苛酷な熱にさらされるSRB-A付近は断熱材の種類を変える(そのため、色が違って見えます)などの細かな点にも気付きます。

SRB-A付近

完成された機体になるまでの苦労はH-IIB 1号機~3号機 特設サイトのプロジェクトメンバーコラムで開発者が語っています。ぜひ振り返ってみてください。

プロジェクトメンバーコラム

記者からの質問に答えた三菱重工の二村さんは「軽量化の工夫、LEシリーズのエンジン、全体のつくりこみといった点はH3ロケットの開発にも引き継げる点だ」と話していました。


ロケットコア機体

公開の後、ロケットコア機体は30日に同工場から搬出されて船に積まれ、8月1日に種子島宇宙センターに到着しました。現在は打ち上げに向けて整備が進められています。
これまで過去5回すべて成功しているH-IIBロケットの打ち上げ。今回も無事に「こうのとり」を運んでくれると信じています!