ASTRO-Hはどうやって天体を探るのか?~ASTRO-Hの特長
2016年2月15日(月)
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- 人工衛星・探査機
「“熱い”宇宙? ~ASTRO-Hが観る天体~」のトピックスで、ASTRO-Hが観る天体についてご紹介しました。これらを観測するにあたって、ASTRO-Hの特長や強みとは、なんでしょうか。これまでのトピックスを振り返りながら考えてみましょう。
ASTRO-H、X線観測の特徴
上図は、現在世界で活躍しているX線天文衛星とASTRO-Hの性能比較です。
ASTRO-Hは、画像の解像度(画像分解能)では他の衛星に譲りますが、 マイクロカロリメータ(SXS)によりX線光子エネルギーを1個づつ超高精度で測定する能力(分光能力)、および複数の検出器を組み合わせた幅広いエネルギー帯域を同時に観測する能力(エネルギー帯域)に、特に重点を置いて設計されました。
特長その1「より精密に!」
超新星残骸カシオペア座Aにおける様々な元素の分布 |
ASTRO-Hに搭載されるX線マイクロカロリメータは、個々のX線光子のエネルギー (ないし波長)を、従来の約30倍の精度で測定できます。その結果、天体からのX線のエネルギーがドップラー効果でほんの少し変わるのを捉えることができ、それにより天体の運動や重力場を測定することが可能になります。また、天体に含まれる微量元素からの微弱なX線信号も捉えることが可能となり、様々な元素の豊富な情報がもたらされると期待されます。 左図:X線のエネルギー(keV) |
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X線のほんの少しの「色」の違いから、いろんなことが分かるんだね。 |
特長その2「より広く!」
ASTRO-Hに搭載される複数の検出器は、同じ天体を観測するので、それらの協調により、広いエネルギー帯域で、同時に高感度にデータが取得できます。また同じ軟X線帯域を観測する装置にしても、X線CCDカメラ(SXI)はX線マイクロカロリメータよりずっと広い視野をもつなど、互いに補い合うよう設計されています。
これらの優れた性能のお陰で、ASTRO-Hを用いると、従来は測定できなかった超高温プラズマの温度を測定し、厚いガスに囲まれた銀河中心の巨大ブラックホールを検出し、超新星残骸や高速で自転する中性子星の近傍で粒子が加速される様子を調べるなど、格段に進んだ研究が可能となると期待されます。
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もっと高温の世界、もっと高エネルギーの世界…! |
世界の期待を背負うASTRO-H
ASTRO-HはJAXAとNASAを主軸とする衛星計画で、日本を中心に、アメリカ、オランダ、カナダ など8カ国が協力し、さらにESA(欧州宇宙機関)の協力も得て、大規模な国際協力として進められてきました。 打ち上げ後は、初期立ち上げや機器の調整、それに続く試験観測などを終えると、世界に公開された天文台として、観測の国際公募を行います。これにより優れた観測提案に対しては、競争的に観測時間が割り当てられることになります。さらに全ての観測データは一定の占有期間の後、解析ソフトウェアとともに全世界に公開され、人類の共有財産として、誰でもアクセスできるようになります。 |
公開データまで含めると、ASTRO-Hは今後10年以上にわたり、全世界の研究者が利用できる、ほぼ唯一の大型公開X線天文台と位置づけられ、「熱く激しい宇宙に潜む物理法則を知りたい!」という世界の研究者の熱い期待を一身に背負っています。
世界の研究者はどんな「熱い宇宙」を期待しているのか?どのような宇宙の謎に迫れるのか、それは「ASTRO-Hの科学目的」で熱く語っています。
また、これらをまとめたプロモーションムービーもぜひチェックしてみてくださいね!