基幹ロケット高度化プロジェクト メンバーコラム #7 山﨑 敏史

2015年11月20日(金)

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山﨑 敏史(やまざき・さとし)
研究開発部門 第4研究ユニット(基幹ロケット高度化プロジェクト併任)

H-IIAロケット、H-IIBロケット、イプシロンロケットにかかわる電子機器(アビオニクス)の研究開発が私の仕事です。現在JAXAでは、基幹ロケット高度化プロジェクトとして世界の人工衛星を日本のロケットで打ち上げる機会が多くなるよう、より商業的競争力をもったロケットを開発しています。その中で私は「ロケットを長時間飛行させるため」、「打ち上げ能力を向上させるため」、「36,000km離れた遠い場所でもロケットと通信できるようにするため」、さらには「ロケットの打ち上げコストを低減するため」などの数多くの仕事を5年に渡り行ってきました。

基幹ロケット高度化プロジェクトの中で一番嬉しさを感じている仕事は、「航法センサ」と呼ばれるロケットの位置・速度を把握するための機器開発です。複数のセンサを組み合わせて位置・速度を把握するのがこの機器の仕組みです。これをロケット搭載を目指して開発することは日本では初めてのことであり、さらに世界をリードするという緊張感とプライドを持って開発を進めてきました。

ロケットの電子機器開発では、フライト中の振動や衝撃、温度、真空等の環境に耐えられるかという点が技術的なハードルになり、構造的、電気的、ソフトウェア等すべての機能性能について、ロケットの打ち上げに影響がないよう緻密に詰めないとなりません。

今回の「航法センサ」では、その中でも位置・速度を計測するために、ロケットの加速度や姿勢、フェアリング分離、空力加熱、放射線等のロケット特有な飛行環境に対応する必要があり、ソフトウェアの設計やその解析、機器構造をよく検討する必要がありました。
大まかな設計から細かな設計に至るまで机上で検証し、技術的リスクの高いところは部分的な試作品を製造して設計と並行して検証し、実際にモノを製造して全体の機能性能を検証し、と段階的にトータル4年以上の長い歳月をかけて実施してきました。

開発終盤の1年あまりは、多くの課題に悩まされながらも、一つ一つ解決に向けて「一致団結」を念頭に置き、求められる機能性能が出しきれるように、すべての感覚をフル稼働させながら、関係者のたくさんの協力を得ながら、開発を遂行することができました。その間、体力面と精神面で支えてくれた家族、上司・同僚の存在はとてもありがたく大きかったです。

今回のH-IIAロケットF29打ち上げでは、この「航法センサ」が初めて搭載されます。いま種子島での整備作業を着実に各メーカさんと進めているところで、一日一日打ち上げに近づくにつれて緊張が高まるとともに準備万端な状態で臨めるよう全力をつくしています。
「新たなロケットの歴史を刻む高度化ミッション」の成功を、「航法センサ」の成功を、皆さんのたくさんの応援で後押ししてもらえると嬉しいです。
It's a piece of cake! WE ARE GO!!

              

プロフィール
小学生の頃、地元の図書館で開催されていた星空観察会に参加した時に、望遠鏡でのぞいた木星とその周りをまわるガリレオ衛星の、キラキラとまばゆいきれいな星の姿に感動し、宇宙への興味がわいたことを今でも覚えています。
宇宙にかかわる仕事、ロケットの仕事に就きたいなと夢を持つようになり、大学では航空宇宙工学、天文同好会のサークル活動を通して、積極的に夢実現に向けて努力しました。
JAXAに入ってから3年間は種子島宇宙センターでロケット打ち上げ設備の保守・管理を担当し、その後、筑波宇宙センターでロケット搭載機器の研究開発を担当しています。