基幹ロケット高度化プロジェクト メンバーコラム #3 石川 主税

2015年11月16日(月)

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一丸となって挑む「高度化プロジェクト」

石川 主税
基幹ロケット高度化プロジェクトチーム 開発員

高度化プロジェクトチームは2011年にプロマネ、サブマネ、主任2人と私の5人で発足しました。H-IIAやH-IIBのプロジェクトは大規模な人数でしたので、比較的少人数で進めていくことに不安を覚えましたが、少人数ならではの団結と関連部署・関連メーカの支援によって多くの困難を乗り越えて、やっと打ち上げを迎えます。

飛行時間を5倍以上に

プロジェクト初期の頃は、熱制御や電子機器の開発を担当しました。新しく開発した長時間慣性飛行技術(ロングコースト)は、今まで最大1時間しかフライトできなかったロケットを5時間以上フライトさせるものです。
宇宙空間において、太陽光が当たる面はどんどん温度が上昇し、深宇宙を向いている面はどんどん温度が下がります。今までのロケットは、衛星のように宇宙空間に長い時間滞在することを想定していませんでしたので、JAXAの熱グループの協力を得つつ衛星の熱設計の考え方を学び、過去のロケット開発経験者や有識者と一緒に地上における開発試験を実施して、ロケットが宇宙空間に長く滞在できるような熱仕様を新しく反映しました。
今回の打ち上げは、リフトオフから衛星分離まで大変長いですが、その間、地上のブロックハウスではロケットとともに多くの技術者が奮闘していますので、みなさんにぜひ応援いただけますと嬉しいです。

宇宙空間におけるロケット第2段機体
(イメージCG)

航法センサの開発

打ち上げ後のロケットを地上から追尾するレーダを30年近く使用しています。このレーダをなくすための航法センサについても開発が無事終わり、H-IIAロケット29号機に搭載されます。
今までのロケットの追尾方法を大きく変える取り組みですので、大変長い間、関係部署と技術的な検討のみならずマネジメント・安全に関する検討を進め、レーダを廃止する計画も設定されています。今回の航法センサのフライトは、これに向けた第一歩になります。

2段機体の前で(プロマネと)

上記のような、技術的な開発も経験することができましたが、高度化プロジェクトは少人数のプロジェクトですので、全ての開発をチーム員のみで行うことはせず色々な関係部署と一緒になって開発を行ってきました。このように、色々な部署を一つの目標に向かって進めるという、まさにプロジェクト的な仕事の進め方についても今回初めて経験することができました。 当初は、私の経験不足でなかなか各部署がしたい方向性を合わせることが難しく、いろいろな対立などもありましたが、今となっては29号機に向けて一丸となって進めることができるようになりました。

プロジェクトも終盤にさしかかり重要な局面を迎えていますが、国の事業として進めているプロジェクトのとりまとめ全般を私のような若輩に任せてもらえていることに、やりがいと同時に大きなプレッシャーも感じています。
打ち上げまであと約10日余り、気を抜かずに成功に向けて全力を尽くします。

石川 主税(いしかわ・ちから)プロフィール
6歳の頃にテレビ放送されていた、スペースシャトルチャレンジャーの事故を目撃し、漠然と大変だなと思った反面、このような困難な仕事にチャレンジしようと思い、JAXAに入社しました。
入社してからは、種子島で3年間、ロケットの打ち上げ現場で発射整備・設備の運用・メンテナンスに携わりました。その後、筑波に異動し高度化プロジェクトの立ち上げから携わっています。
5年から10年の期間を必要とするロケットの開発において、初期の立ち上げから最後の打ち上げまで経験する機会は少なく、今回の経験を通じてロケット技術者として成長することができたと思います。

※ 構成を変更しました。それによりコメントも移動いたしました。