欧州補給機(ATV)4号機が国際宇宙ステーションに到着

2013年6月21日(金)

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2013年6月15日、欧州補給機(Automated Transfer Vehicle: ATV)4号機「アルベルト・アインシュタイン」が国際宇宙ステーションに到着しました。日本時間6月6日午前6時52分に、南米フランス領ギアナのクールー宇宙基地から打ち上げられたATV4号機は約9日間の飛行の後、宇宙飛行士が生活するのに必要な水や食料等の物資、実験用の器材、補修部品、燃料などを国際宇宙ステーションに送り届けました。今回のフライトは国際宇宙ステーションに一度に運ばれた物資の種類としてはこれまでで一番多かったとのこと。なんと1400種類以上もの物資が積まれていたそうです。その中には、「きぼう」日本実験棟で使われる実験機材なども含まれています。

ISSにアプローチするATV4号機(提供:NASATV)ISSにアプローチするATV4号機(提供:NASATV)


ATVってどんな宇宙船?

せっかくなので、ATVの紹介をしましょう。ATVはヨーロッパ宇宙機関(ESA)が国際宇宙ステーションに物資を運ぶために作った宇宙船です。外観は左右に2本づつ広がった太陽電池パネルが特徴ですね。現在就航している国際宇宙ステーションへ物資を運ぶ補給機には、ロシアが打ち上げている「プログレス」、アメリカはSpaceX社の「ドラゴン」、そして日本の「こうのとり」(HTV)などがありますが、ATVの一番の特徴はとにかく搭載量が大きいこと。約7.6tもの荷物を国際宇宙ステーションに運べるのはATVだけです。プログレスは約2.5t、ドラゴンは約3.3t、こうのとりは与圧された船内物資が約4.5t、非与圧の船外物資が約1.5tの計約6tの搭載量ですので、他を圧倒する搭載量なのです。なおATVは、こうのとりのような非予圧部を持っていないため、国際宇宙ステーションの外の宇宙空間で使うような大きな船外物資を運ぶことはできません。

軌道上を飛行するATVのイメージ(ESA/D.Ducros)

ATVは自動ドッキング

ATVのAは"Automated"、これは「自動の」という意味です。この名前の通り、国際宇宙ステーションへのドッキングは自動で行われます。ドッキングは国際宇宙ステーションのハッチに直接接近して接続する方法。ロシアのプログレスと同じです。日本のこうのとりやSpaceX社のドラゴンが、国際宇宙ステーションのロボットアームでつかんでからそっとドッキングするのとは対照的です。この直接ドッキングする方法は、プログレスでの実績もあり信頼性が高い方法ですが、一方でハッチを頑丈に作る必要があるのでハッチのサイズが小さくなります。こうのとりは宇宙飛行士がロボットアームでつかむ必要がありますが、ハッチが大きく大きな荷物が積めます。それぞれ特徴があって適材適所という感じですね。

ISSに接近するATV4号機(提供:JAXA/ESA)ISSに接近するATV4号機(提供:JAXA/ESA)

ATVには1機づつ違う名前がついている

そうそう、毎回違う名前が付けられるのもATVの特徴です。1号機はフランスのSF作家にちなみ「ジュール・ベルヌ」、2号機はドイツの天文学者にちなみ「ヨハネス・ケプラー」、3号機はイタリアの物理学者ちなみ「エドアルド・アマルディ」という名前がそれぞれ付けられていました。4号機の「アルベルト・アインシュタイン」はもちろんドイツ生まれの物理学者の名前。2014年に打ち上げが予定されている5号機にはベルギーの物理学者「ジョルジュ・ルメートル」の名前が付けられています。みんなヨーロッパ宇宙機関に所属する国の物理学者や作家の名前から取られています。

ATV4号機で運ばれる物資の中には、国際宇宙ステーションで過ごす宇宙飛行士たちの個人的な荷物も積まれているそうです。宇宙飛行士たちにはこれから届いた沢山の荷物を国際宇宙ステーションに運ぶ仕事が待っていますが、届いた荷物を開けるのが楽しいのは、きっと宇宙も地上も同じですね。


こうのとり3号機で運ばれてきた荷物の前で記念写真。星出宇宙飛行士が参加した第32次長期滞在での一コマ(提供:JAXA/NASA)こうのとり3号機で運ばれてきた荷物の前で記念写真。
星出宇宙飛行士が参加した第32次長期滞在での一コマ(提供:JAXA/NASA)

さらに詳しく知りたい方はコチラ

欧州補給機(ATV)によるISSへの補給フライト (宇宙ステーション・きぼう広報・情報センター)

Automated Transfer Vehicle (ESA)