ISTSへ行ってみた。
2013年6月11日(火)
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- 人工衛星・探査機
- 宇宙飛行士と国際宇宙ステーション(ISS)
その日本の宙(そら)を支える街である名古屋で、2013年6月2日(日)から2013年6月9日(日)まで、「第29回宇宙技術および科学の国際シンポジウム(ISTS)」が行われました。ISTSとは、日本や海外のさまざま宇宙分野の研究者や技術者などが集まる国際会議で、専門的な研発表や討論などが行われます。今回は、一般向けに開催された宇宙航空にまつわる展示や大西卓哉JAXA宇宙飛行士の講演会の様子をお届けします。
第29回宇宙技術および科学の国際シンポジウム(日本語)
29th International Symposium on Space Technology and Science(英語)
国際宇宙展示会を見る
名古屋市科学館で行われた展示の目玉はコレ! 人工衛星の巨大な展示物、実物大の陸域観測技術衛星2号「だいち2号」(ALOS-2)です。太陽電池パドルを左右に拡げていて、全長16.5mあります。デカい!(でも人工衛星の中では、比較的小さい方に分類されるサイズなんだとか。びっくりですね。) 白塗りの「だいち2号」にプロジェクターの映像が投影され、プロジェクションマッピングという技術を用いて様々な映像が重なり合います。「だいち」がとらえた森林の広がりや海氷など、地球のいろいろな姿が写し出されます。綺麗な地球の映像を眺めながら、少しだけ立ち止まって地球環境について思いをはせる約3分となりました。
ほかには、小惑星探査機「はやぶさ」の実物大模型(機体の側面に川口先生と吉川先生のサインがありました。来場した方は気付きました?)や地球観測を行う人工衛星の模型、宇宙服や宇宙食の展示などがありました。航空にまつわる展示では、JAXAの航空機に新しく仲間入りしたジェット機の空飛ぶ実験室ともいえる実験用航空機「飛翔」の模型や、低騒音STOL実験機「飛鳥」に搭載されたFJR710/600Sターボファンエンジンなども。また、特設された実験室では、たくさんのお子さまが空気で飛ばすペットボトルロケットづくりと打ち上げ体験をしていました。とても真剣で、みんなの気分はもうロケット開発の技術者やロケット発射指揮者のようです。
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01. 小惑星探査機「はやぶさ」の実物大模型。機体の側面をよ〜く見ると、川口先生、吉川先生のサインが。
02. 会場ではクイズラリーを実施。小惑星探査機「はやぶさ2」に関するクイズ問題も。
03. 月周回衛星「かぐや」のN1スラスタの展示を眺めながらの即席授業。興味津々の宙ガール(マダム?)は質問攻め。
04. X線天文衛星「ASTRO-H」模型。病院で骨折を調べるレントゲンと同じ、X線を利用して宇宙のナゾに迫ります。
05. スウェーデンでの実験が予定されている「D-SEND#2 落下試験」の紹介映像と模型。
06. ペットボトルロケットを自転車の空気入れを利用して飛ばす。すごい飛距離を出した子も!
07. 準天頂衛星初号機「みちびき」の模型をはじめ、地球を観測するいろいろな人工衛星を紹介。
08. 低騒音STOL実験機「飛鳥」に搭載されたFJR710/600Sターボファンエンジン。
09. 打ち上げ日時が発表されたH-IIBロケットと、イプシロンロケットなどの模型。
10. 人工衛星の画像をデザインに取り入れた"JAXA COSMODE"の産業連携のコラボ商品。
大西宇宙飛行士の講演を聞く
名古屋大学の豊田講堂にて開催された大西卓哉宇宙飛行士による講演会は、小・中学生向けのトークショーと一般向けの講演が行われ、午後に開催された講演を聞きました。
大西宇宙飛行士が今後長期滞在を行う国際宇宙ステーション(ISS)について簡単に紹介してもらった後、大西宇宙飛行士が、宇宙を目指すきっかけも教えてくれました。子どもの頃に観た映画「スター・ウォーズ」や大学生の時に観た映画「アポロ13」を通して、宇宙や宇宙飛行士への思いを強くしたとか。特に「アポロ13」では、いろいろな人の夢や思いを背負う宇宙飛行士の姿に心を動かされ、映画を観て帰宅した後に「将来は宇宙飛行士になる」と母親へ伝えたそうです。
学生時代に仲間と一緒に人力飛行機を作って飛ばす競技に熱中した大西宇宙飛行士は、ANA(全日本空輸)のパイロットを続けながら、宇宙飛行士になるチャンスを待って、宇宙飛行士になる夢を叶えました!
大西宇宙飛行士は現在、一年のほとんどをNASAジョンソン宇宙センターで過ごしながら、ISSで仕事をするための訓練のほかに、サバイバル訓練や海の底にある施設で暮らしながら行う「NEEMO訓練」など、厳しい訓練を行っています。
また、宇宙飛行士は緊急事態に冷静な判断や対応を求められる仕事で、飛行機の操縦を行うパイロットと業務が似ているそうです。そのため、週に2時間くらいは飛行機の操縦訓練を行うとか。訓練で搭乗するT-38は、小型でも音速を越えることができる、いわばスポーツカーのような機体だそうです。カッコいい!
来場者の質問コーナーでは、大学生のほか小さなお子さまも挙手があり、選抜試験や英語力について、ブルースーツの袖に初めて袖を通した時の気持ちなどについて質問が寄せられました。
講演会後半では、改めて大西宇宙飛行士が登場。そして、名古屋大学國枝副総長や名古屋大学大学院工学部研究科の佐宗教授、名古屋大学大学院生の玉樹さんを加えた4名が、宇宙開発についてのパネルディスカッションを行いました。
ディスカッションの口火を切る形で、大西宇宙飛行士の個人的な考えとして、宇宙開発は将来への投資という意見が出されました。かつてアメリカのアポロ11号が月面着陸したことをたくさんの人が鮮明に覚えているように、全人類が共有できるような有人宇宙活動による歴史的経験を、自分より下の世代へ伝えていきたい。そのために日本も含めて有人宇宙活動をやる意義があるのではないかと語りました。
それを受けて、現在の宇宙開発におけるコストや技術的な継承などについても問題点が上げられました。また、宇宙開発が必ずしも科学技術だけでなく、教育的視点や芸術的観点からも利用されることが望ましいといった意見もありました。来場者からも宇宙開発への熱い思いが語られ、宇宙旅行や宇宙エレベーターなど、宇宙飛行士のような厳しい訓練を伴わないでも気軽に宇宙へ行ける、敷居の低い宇宙へのアプローチについての発言がありました。
人間が宇宙へ行って活動することについては、世界的にもさまざまな場面で論じられています。これからも、科学者や宇宙飛行士だけでなく、いろいろな立場の人々が宇宙へ飛び出して行くことを考え続けていく必要があるように感じました。そしていつの日か、気軽に宇宙へ行くことができるようになるかもしれませんね。
おすすめのリンク
展示の会場となった名古屋市科学館は、いろいろな科学のヒミツに迫ったり、プラネタリウムで星空体験ができます。また屋外展示では、H-IIBロケットや「きぼう」日本実験棟の実物大の試験モデルが置かれています。(ちなみに、8月22日に宇宙ステーション補給機「こうのとり」4号機を打ち上げるH-IIBロケット4号機も、名古屋にある三菱重工業の飛島工場で作られたんですよ!)
名古屋に近くにお住まいの方やお近くに来られた方は、ぜひ名古屋市科学館にも足を運んでみてください。いろいろな発見があるのではないでしょうか。
名古屋市科学館
H-IIBロケット(三菱重工業株式会社)
(舌をやけどした編集担当Hi-Ho)