宇宙でコーヒーブレイク!スペースカップと流体実験
2017年6月27日(火)
- プロジェクト
- 宇宙飛行士と国際宇宙ステーション(ISS)
ESA astronaut Samantha Cristoforetti takes a sip of espresso from the Capillary Beverage investigation. (C)NASA |
コップ、カップ、マグカップ。 言葉を並べただけでも、いろいろな形やサイズが思い浮かんで、ドリンクを飲むための器が多種多様なことに驚きます。皆さんは普段、どんな飲み物を、どんな入れ物で飲みますか? 今回は宇宙のドリンクの『うつわ』と、液体の流れの話です。 |
宇宙専用カップ
宇宙食のドリンクは通常、粉末でパックに入っていて、飲む時にお湯や水で溶かします。ISSには給水装置があって、常温の水と、お湯(80℃くらい)が使えます。ちなみに、冷たくして飲みたい場合は、小さな冷蔵庫もあります。 パックの中身はストローで吸うのですが、宇宙でコーヒーを飲んだ油井飛行士から、こんな感想が…… |
「きぼう」の窓と宇宙日本食 |
宇宙で自撮りを。そんな事が、メインではなく、コーヒーの話。私はコーヒーが大好きで、地球ではほぼ毎日飲んでいたのですが、今は飲みません。美味しくないんです。気づきました!私はコーヒーの香りが好きだったことに。パック+ストローでは。。。 pic.twitter.com/GVBDewmo6t
— 油井 亀美也 Kimiya.Yui (@Astro_Kimiya) 2015年8月20日
うーん、パック+ストローでコーヒーを飲むと、あまり香りが楽しめないようです。 なんだか奇妙な形をしていますが、なんと宇宙用のカップです。 |
スペースカップ (C)NASA |
宇宙で液体はどう動く?
チエルさんからこのカップを借りて、あらためてコーヒーを飲んだ油井さんも、味わいに満足できたみたい!
宇宙でのコーヒーは美味しくなかった。これだけで話は終わりませんよ(笑)。以前紹介した毛細管現象と表面張力を利用したスペースカップ。これで、同じコーヒーを飲んでみたら?美味しい!コーヒーの味と香りを楽しみながら見る地球。科学の力を実感! pic.twitter.com/khxQk3hsgE
— 油井 亀美也 Kimiya.Yui (@Astro_Kimiya) 2015年8月21日
美味しいコーヒーが飲めて良かったね、……というだけではなくて。
これは、Capillary Effects of Drinking in the Microgravity Environment(Capillary Beverage)と呼ばれる、「微小重力環境で飲む際の毛細管現象」についてのれっきとした宇宙実験で、重力の影響がほとんど出ないところで液体のふるまいを調べるための取り組みのひとつです。
ISSなどの軌道上の宇宙船でも実験や装置や日常生活にたくさん水を使いますし、超低温の燃料や、冷却用の溶媒、水の再生処理装置、などなど、液体の流れを思ったとおりにコントロールするのはとても大切なことです。「きぼう」日本実験棟にも、流体実験の装置があるんですよ。
安全で効率的な宇宙船のシステムと、おいしいコーヒーが繋がっているなんて、なんだか不思議ですね。
液体のふるまいについて、最後にひとつクイズです。
泡が「上」に浮き上がってこない宇宙で、水の中に入った空気を取り除くには、どうしたらいいでしょうか?
若田飛行士が実演していて、意外と力技(?)で面白いので、ぜひご覧ください。
Amanoのひとこと
さかのぼって2008年、STS-126のミッションでスペースシャトルとISSに搭乗して、流体研究の実験に参加していたドナルド・ペティット(ドン・ペティ)飛行士がカップを試作した時は、プラスチックのシートをテープで留めた簡単なものでした。
次の動画で当時の交信を聞くと、どうやら最後に「フライトのファイル(FDF=Flight Data File)のカバーを使った」と言っているようですので、ありあわせのもので工夫して試してみたことがうかがえます。宇宙でカップをDIYしちゃったんですね。
(ドンさんはスペースカップの特許も研究者たちと共同で取得しています)