宇宙でバリバリお仕事開始!大西宇宙飛行士が拓き繋げる「きぼう」利用

2016年7月12日(火)

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  • 宇宙科学
  • 宇宙飛行士と国際宇宙ステーション(ISS)
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7月9日(土)、ついに国際宇宙ステーションへ到着した大西卓哉宇宙飛行士。ISS入室直後の交信イベントでは「月曜日からまたバリバリ仕事したい」と述べていました。
今回の大西宇宙飛行士の仕事は、昨年長期滞在しチームジャパンでミッションを成し遂げた油井宇宙飛行士からのタスキを引き継いで、「きぼう」日本実験棟を使ったユニークな実験に携わる―「日本でしかできないこと」が詰まったミッションとなります。

さてお仕事といえば、大西宇宙飛行士、出発前にこんなクイズを出題していったんです。

さあ、今ごろどんなミッションに取り組んでいるのでしょうか?
このトピックスでは、クイズのヒントもかねて、大西宇宙飛行士のISS滞在中に「きぼう」日本実験棟で行われる利用ミッションを簡単にご紹介しましょう。

これが「きぼう」の姿だ!そこは宇宙最大の実験場

おさらいとなる方も多いと思いますが、これが大西宇宙飛行士が日本独自の科学実験を行う、「きぼう」日本実験棟です。(少し話がそれますが、2010年度のグッドデザイン賞を受賞しています。)

宇宙ステーションの中でもっとも大きいモジュール(部屋)で、船内にも船外にも実験場があり、ものを出し入れできるエアロックやロボットアームがついているのが特長です。

大西宇宙飛行士滞在中に実施が計画されている実験

これまで「きぼう」では、生命科学や宇宙医学、地球惑星科学、天文学や物理学などの学術分野、産業技術…さまざまな実験がおこなわれ成果を上げてきました。
大西宇宙飛行士が滞在中に「きぼう」で行われる実験を、プレスキットから抜粋してご紹介しましょう。



1.健康長寿社会をささえる「小動物の宇宙長期飼育」

宇宙に滞在すると、健康な宇宙飛行士でも骨や筋肉が急速に老化したかのように弱ります。小動物の宇宙長期飼育による基礎データと知見を得て、そういった老化のような現象の解明につなげていきます。健康長寿社会の実現にむけた研究の発展に貢献するミッションです。

  • NASAもマウスの飼育をISSで行っていますが、人工重力を与えられるのは日本だけです。また個飼いができるのも日本の装置の特徴です。
  • 大西宇宙飛行士は、小動物の飼育(給餌、水やり)、飼育装置のメンテナンス(清掃)、状況観察を担当します。


2.新薬設計に貢献! 高品質タンパク質結晶生成実験

宇宙ではくっきりした綺麗なタンパク質の結晶ができます。

デュシェンヌ型筋ジストロフィーの進行に関与するタンパク質とその阻害剤との結晶画像

多剤耐性菌関連酵素の生育に重要なペプチド分解酵素の結晶画像

私たち人間をはじめ、すべての生き物の身体を形作る重要な物質であるタンパク質。タンパク質を研究することは生命のしくみを解明することに繋がります。
病気の原因となるタンパク質の構造がわかると、そのはたらきを妨げる化合物の設計ができ、薬剤の有力候補になります。

写真:油井宇宙飛行士が取り組んだ
タンパク質結晶生成実験

JAXAは、10年以上にわたる技術開発と実験を経て、微小重力下でのタンパク質結晶生成のノウハウを確立してきました。
宇宙で結晶を生成すると、地上での結晶では見えないタンパク質の立体構造を解明することができ、新薬の候補になる化合物の分析がしやすくなると、希望が持たれています。

大西宇宙飛行士の滞在期間中には「きぼう」での通算11回目の実験が行われます。この実験試料は、ソユーズ宇宙船48Sで運んで、大西宇宙飛行士の帰還時(ソユーズ宇宙船47S)に回収する予定です。



3.「きぼう」の強み!船外の実験場

超小型衛星の放出

「きぼう」はISSのモジュールで唯一、エアロックとロボットアームを合わせ持っているため、宇宙ステーションの中にいながら超小型衛星を宇宙へ放出することができます。
小型衛星放出機構は、超小型衛星を「きぼう」のエアロックから船外に搬出し、ロボットアームで把持した後、衛星を放出し、軌道に乗せるための仕組みのことです。
大西宇宙飛行士の滞在中にCubeSatを放出予定です。

宇宙用機器を宇宙にさらして試す!「簡易暴露実験装置(ExHAM)」

「きぼう」では、簡易曝露実験装置(ExHAM)「エクスハム」を利用する事により、宇宙の曝露環境を利用する実験サンプルを「きぼう」船外に取り付けることが可能です。
2015年「こうのとり」5号機で2基目のExHAMが運ばれ、以下の実験サンプルが取り付けられ て、同年11月11日に船外に設置されています。

  • 次世代ソーラーセイルに向けた高機能薄膜デバイスの宇宙環境影響評価(Solar Sail)
  • 軽量かつ高精度な反射鏡の宇宙環境影響評価(CFRP Mirror)
  • 有機物・微生物の宇宙曝露と宇宙塵・微生物の捕集(たんぽぽ
  • 宇宙応用を目指した先端材料宇宙環境曝露実験(CNT)
  • PEEK及びPFA材料の宇宙環境曝露試験(PEEK)

ExHAM本体(左)とExHAMの設置場所(「きぼう」船外実験プラットフォーム)(右)



まだまだあります、「きぼう」のミッション

盛りだくさん過ぎてここでは紹介しきれないミッションがまだまだあります。興味がわいた方は、次の資料で調べてみてくださいね。

たくさんのミッションがあり、なかなか難しいクイズですね。正解はJAXAウェブや大西宇宙飛行士のGoogle+ に書かれるので、ぜひチェックしてみてください。
ひょっとしたら、早速書かれているかも…?



こぼればなし:スケジュールは直前までわからない?シビアな宇宙飛行士の任務予定

大西宇宙飛行士とインクリメント47/48関係者

限られた時間の中で、たくさんの仕事を行う宇宙飛行士。仕事は分刻みで決まっています。そのスケジュールは地上で、各国のフライトディレクタをはじめとするチームが調整しているんです。
現在フライトディレクタを務めている中野優理香さん、昨年の油井宇宙飛行士ISS長期滞在時にフライトディレクタを務めた井田恭太郎さんが、その仕事を紹介しています。