地球温暖化に挑む「いぶき」の最新レポート!

2016年7月19日(火)

  • プロジェクト
  • 人工衛星・探査機
このエントリーをはてなブックマークに追加

沖縄・奄美地方では梅雨も明け、いよいよ今年も夏がやってきました。
温室効果ガスが増えると温暖化が進むといわれていますが、実は温室効果ガスの一つである二酸化炭素(CO2)の濃度が年々増えていることをご存じですか? なんと、地球もあつ~くなりつつあるのです。

「いぶき」が観測した地球全体の大気中の二酸化炭素の月平均濃度

before
after

画像中央にカーソルを当て、あらわれる緑色スライダを左右にスライドすると、異なる時期に観測した2つの画像を比較できます。濃度が低いほど青色に、高いほど赤色になっています。
年を経て濃度が高くなっていることが分かります。

JAXA、環境省、国立環境研究所が温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」を使って観測した結果から、地球全体の大気中のCO2の月平均濃度が初めて400ppm*を上回ったことが判明しました。
*ppmとは:100万分のいくらであるかという割合を示す数値。1ppmは0.000001%と同じ。

いぶきは高度70kmまでの大気中のCO2濃度を地球表面のほぼ全域にわたって測定していますが、このデータを解析したところ2015年12月の月平均濃度が400.2ppmとなり、観測史上初めて400ppmを超えたことが分かりました。地球温暖化を防ぐためにCO2を減らす取り組みが国際的に行われていますが、排出量は年々増加しており、濃度は上昇していることが明らかになったのです。

「いぶき」の観測データに基づく全大気中のCO2濃度の月別平均値と推定経年平均濃度

このままでは地球が大変だ…

昨年採択された地球温暖化を防ぐための国際的な枠組み「パリ協定」では、各国が21世紀末までの気温の上昇を1.5度までに抑える努力をすることで合意しました。また、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)では、気候変動による深刻な影響を抑えるために「地球の平均気温の上昇を産業革命以前と比べて2度未満に抑えること」「二酸化炭素濃度を約450ppmまでに抑えること」などが長期的な目標として掲げられました。しかしながら、このままのペースでは20〜30年のうちに450ppmに達してしまう可能性があります。

ご利用ください、いぶきの観測データ!

いぶきの観測データは世界各国の研究者に使用され、国際会議などでも引用されています。
一般の方もダウンロードが可能ですので、ぜひご活用ください。

また、いぶきの観測から推定したCO2濃度分布のデータ(2009年6月~2016年2月/右図)をまとめましたので、併せてご利用ください。

一人一人の行動が未来をつくります。私たちが住む地球をみんなで大切にしていきたいですね。

いぶきを引き継ぎ、さらなる温室効果ガスの観測機能・性能の向上を目指す

1997年の京都議定書により、先進国における温室効果ガスの削減義務が課せられ、温室効果ガスの排出量や森林による吸収量について報告することとなっています。しかし、従来、観測手段や観測可能な地域が限定されていたり、データの集計方法や精度が各国で異なっていたりと、各国のデータを比較する上でも正確性や統一性に欠けるという課題がありました。加えて、温室効果ガスの排出量に対する温暖化予測も不確かなものでした。いぶきはこれらの課題を解決すべく、宇宙から世界中の二酸化炭素およびメタン濃度を高精度かつ均一に観測することを実現しました。また、将来の気候変動予測の高度化や炭素排出量削減につながる、吸収・排出の推定精度向上を進めてきました。
いぶきの後継機である「GOSAT-2」では、いぶきのミッションを引き継ぎ、より高性能な観測センサを搭載して、さらなる温室効果ガス観測精度の向上を目指します。

「GOSAT-2」では、二酸化炭素やメタンの観測精度を高めるとともに、新たに一酸化炭素も観測します。
また、PM2.5の分布状況を推定することもできるようになります。

GOSAT-2の観測イメージ

2016年6月4日、5日に代々木公園で行われた「エコライフ・フェア」で、JAXAは環境省研究調査室と一緒に出展し、いぶきの観測成果や「GOSAT-2」の計画についてご紹介しました。
現在運用中の「いぶき」、そして開発中の「GOSAT-2」の応援をよろしくお願いします!



関連リンク