宇宙手話を覚えてみよう☆

2016年5月26日(木)

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宇宙にまつわる情報が身近になってきた昨今。でも宇宙用語の手話表現は少なく、耳の聞こえない人たちが親しむためには“壁”になっているんです。そこで、JAXA広報部のメンバーと東洋大学手話サークル「つみき」が協力して、宇宙手話を作りました。

ジェスチャーやボディーランゲージにも似ていて、聞こえる人でも宇宙に親しみがわく楽しい宇宙手話。まずは、動画を見てみてください。

宇宙手話を覚えてみよう~JAXA with 東洋大学手話サークル「つみき」




JAXA

国際宇宙ステーション(ISS)

船外活動(EVA)


宇宙ステーション補給機「こうのとり」

宇宙船

小惑星探査機「はやぶさ」


※「はやぶさ」はすでにある手話のご紹介です

それぞれの表現、特徴をよくとらえていると思いませんか?

なぜ手話??

宇宙手話の制作メンバーを代表して、聴覚障害者(ろう者)のJAXA広報部・春日さんと、手話サークル「つみき」の皆さんに、いくつか質問してみました!

Q: どうして宇宙用語の手話を作るのでしょうか。字幕や筆談だけじゃダメ?
A: 手話は日本語とは違う、ひとつの“言語”。
英語が日本語と違うように、手話も「てにをは」がない・体の表現や表情までふくめて言葉…など、単語表現も文法も日本語と違っています。手話の表現があると、日本語の文字だけで表記されるより、もっとずっと理解しやすいんです。
Q: これまで宇宙の用語はどうやって表現していたの?
A: 指文字を使います(でも、伝わりにくい!)
手話表現がない単語は、指文字で「あ・い・う」と一文字ずつ表現します。和訳できない英語がカタカナ語になるのに、似ているかもしれません。でも単語そのものの意味が分かりにくい・1文字1文字指を動かすので表現に時間がかかる欠点があります。

例えば、「国際宇宙ステーションにいる油井宇宙飛行士が『こうのとり』をキャッチした」というニュースを手話で伝える場合、これまでは

国際宇宙ステーションにいる  >  「世界」+「宇宙」+「駅」+「いる」
油井宇宙飛行士  >  「ゆ」+「い」+「宇宙」+「飛行機」+「士」
こうのとり  >  「こ」 「う」 「の」 「と」 「り」
キャッチした  >  「つかむ」+「しました」
※手話には 「に」 「が」 「を」 などの助詞はありません。

動画の制作風景 みんな真剣です!

「国際宇宙ステーション」は「世界」+「宇宙」+「駅(ステーション)」の表現を組み合わせていました。「駅」の手話表現は、かつて駅でよく見られた「改札ばさみで、切符をきる」表現なので、宇宙飛行士が滞在するところというイメージから離れていきます。 「こうのとり」5文字は1つずつ指文字で表します。これが、長い…

動作や物の形に似せた、単語ごとの手話表現があれば、もっと直感的にイメージできるはず!

そんな想いが、宇宙手話をつくる原動力になりました。

制作秘話 ~手話に込めた宇宙への想い~

国際宇宙ステーション

手の中指と左手の中指を合わせています。
いただいたアドバイスの中に、「中指だけだと合わせにくいので、左右の中指と薬指の2本で合わせる表現はどうか?」という声がありました。一方である方からは「国際宇宙ステーションについている太陽電池パドルは左右あわせて8基ある。これは譲れない」…最終的に、中指1本で決まりました。

船外活動

国際宇宙ステーションの「外」は宇宙空間。フワフワしながら宇宙空間へ出る様子をイメージしました。また、有人宇宙開発の第一人者の方から「エアロックから飛び出す表現はどう?」というアドバイスをもらい、改良を加えて、ドアからフワフワと外へ飛び出すような動作の手話表現になりました。(※エアロック:宇宙飛行士が船外活動をする際の出入口です。)

宇宙ステーション補給機「こうのとり」

一番、制作が難航した宇宙手話です。
「こうのとり」は物資を運ぶ無人補給機ですが、まず「物資」や「補給機」の手話表現がありません。動きを似せようと思っても特徴があまりなく、どの案もしっくりきません。さらに鳥のコウノトリの「赤ちゃんを運ぶ」イメージにひきずられてしまい、一時は行き詰まってしまいました。
「単純に『物を入れて、宇宙へ運ぶ』表現はどう?」という一言のアドバイスから、少しずつ改良して出来上がった手話です。 ロボットアームで「こうのとり」をつかむので、最初の表現に「つかみとる」を入れています。

宇宙船

「船」をこのまま表現すると海に浮かんだ「船」の形なので、宇宙船らしい表現が何かよく話し合いました。案が出ては振り出しに戻り…。
ふと「子供の目から見たら、どうだろう?」と姪っ子に宇宙船の画像を見せたところ「箱みたい!」。この新鮮な声が決め手でした。
「船」を「箱」の形に言い換えた方がイメージしやすいと気付き「宇宙(空間)」+「箱」という手話表現になりました。
「箱」の形なら、様々な形の宇宙船を抽象的に表すこともできます。

制作者から一言!

JAXA広報部 春日さん

最初は宇宙用語の候補が21語ありましたが、時間をかけて、試作という形で完成したのが15語、色々な方との検討を経て、最終的に6語になりました。
手話1語を作るのに30分で決まることもあれば、長い時間、決まらないこともありました。
そのものの働きや役割などをわかりやすく、イメージしやすく、伝えられるような手話表現にしないとダメなので、宇宙手話を作るって、すごく大変。
宇宙手話一つひとつに、たくさんの想いが詰まっていますので、覚えていただけると嬉しいです。

ちなみに、私が初めて種子島で生で見たロケット打ち上げは、「こうのとり」5号機が搭載されたH-IIBロケット5号機。「こうのとり」5号機は無事に打ち上がった後、油井宇宙飛行士をはじめとする“チーム・ジャパン”の活躍によりミッションを完遂。
この感動を伝えたかったので、「こうのとり」は特に想い入れがあります。私も手話サークル「つみき」も日本人なので、チーム・ジャパンの一員ですね(笑)


東洋大学手話サークル「つみき」 宮原さん

今回の企画は宇宙用語の手話を作ることから始まりましたが、宇宙に関する知識が乏しい私たちにとっては、宇宙用語を聞いても、どれも具体的なイメージがなかなか湧きませんでした。
ただ宇宙用語を聞いただけでは、そのものの特徴などが漠然としか浮かんでこなかったため、細かい点は春日さんに教えていただきながら、また、これまで学んできた手話単語の表現方法を思い返しながら、少しずつ手話という形に近付け、宇宙手話を完成させることができました。
今回の企画に関わった「つみき」のメンバーに、特別に宇宙に関連することを学んでいる学生はいないのですが、だからこそ、宇宙が身近でない人にとってもシンプルで分かりやすい手話表現を作成できたのではないかと思います。

自分たちで新たな手話を作成して広める活動は初めてだったので、とても貴重な体験でした。今後も引き続き、新たな宇宙手話を考えていきたいと思います。少しでも多くの方に、私たちが作った宇宙手話を使っていただけたら嬉しいです。

「さあ、一緒にやってみよう!」


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