“いつもとは一味ちがう” H-IIAロケット26号機に反映された「基幹ロケット高度化技術」
2014年12月1日(月)
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いつも安定した打ち上げで宇宙機を宇宙へ運ぶH-IIAロケット。今回は「はやぶさ2」をはるか深宇宙へ送り出すために普段とちょっと異なる部分があるようです…。今回26号機に反映された新たな改良についてご紹介します。
「基幹ロケットの高度化」ってナンだ?
基幹ロケット(H-IIAロケット)は運用を始めてから10年以上が経ち、その間、世界トップレベルの優れた打ち上げ実績を上げています。 |
H-IIAロケットの第2段ロケット。飛行時間が長くなれば、より遠くの軌道まで衛星を運んで分離することができるようになる。本格的な飛行実証は平成27年度予定。 |
H-IIAロケット26号機ではどんな点が「高度化」したの?
H-IIAロケット26号機にも、「基幹ロケット高度化」の開発成果が取り入れられています。
26号機は地球を一周した後に、「はやぶさ2」を分離する飛行計画になっているため、第2段エンジンの第1回燃焼終了(打ち上げ後11分18秒後)から第2回燃焼開始(同 1時間39分23秒後)までの飛行時間が1時間28分5秒間と、これまでで最も長くなります。必要な燃料(液体水素・液体酸素)はどんどん気化していきますから、飛行時間が長いと燃料の消費量も増えてしまいますが、これを抑えるために、基幹ロケット高度化技術として開発された「慣性飛行可能な時間の延長」の技術が反映されました。
(1) 第2段の液体水素タンクの表面が白色に!
普段はオレンジ色の部分が、白色に塗装される(赤枠部分) 写真はH-IIAロケット21号機で飛行実験した際のもの |
ロケットは慣性飛行している間も太陽の熱にさらされています。 第2段の液体水素タンク表面に白色の断熱材を表面に塗って機体の温度上昇を減らし、液体水素が気化する量を減らすことを狙います。 |
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ロケットのオレンジ色の部分は、断熱材の色です。断熱材は燃料タンクの上に直接吹きかけていて最初は薄い黄色なのですが、紫外線に当たると化学反応でオレンジ色に変化します。 |
オレンジに変色する第1段ロケットの断熱材はPIF(ぴふ|ポリイソシアヌレートフォームの略)とよぶ。 |
(2) 第2段の液体酸素ターボポンプをじわじわ冷やす仕組みを追加
燃料(液体水素・液体酸素)をエンジンに送り込む役割を担う「ターボポンプ」は、ロケットが慣性飛行している間も定期的に冷やす必要があります。冷やすのに使う液体酸素の消費量が3分の1程度で済むように、じわじわ冷やす系統(トリクル予冷系統、と呼ぶそうです)を新たに追加しました。
トリクル(trickle)とは〈液体が〉したたる,ぽたぽた落ちる,ちょろちょろ流れる等の意味を持つ英語
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液体水素は、気体の水素を沸点である-253℃以下に冷やして液化したものです。 |
H-IIAロケットは打ち上げ直前まで、気化する分の液体水素/酸素を燃料タンクに継ぎ足している |
世界の衛星打ち上げ輸送サービス市場は欧米のロケットが高いシェアを占めています。この市場を切り拓いてくために我らがH-IIAロケットも着々と自分磨きを続けていたのですね…!今後のさらなる活躍に大いに期待したいところです。
参考リンク: