彗星と探査機

2013年11月29日(金)

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2013年の年末の空の話題はアイソン彗星の話題で持ちきりという感じですね。太陽に近づくに連れて望遠鏡や双眼鏡での観測報告も上がってきているようです。このまま彗星が11月29日の太陽への再接近に耐えてくれれば、12月前半には素晴らしい姿を見せてくれるかもしれません。

さて、今回は彗星ととても縁の深い日本の探査機を紹介しましょう。



1986年、ハレー彗星が太陽に接近しました。ハレー彗星は76年の比較的短い周期を持つ衛星で、歴史上初めて一度太陽を訪れ、76年後に再び帰ってきたことが確認された彗星です。このハレー彗星を目指して、1985年に内之浦宇宙空間観測所から2機の探査機が打ち上げられました。それが「さきがけ」と「すいせい」です。この2機の衛星は、ハレー彗星の国際協力探査計画の一環としてヴェガ(旧ソ連)・ジオット(ヨーロッパ)・アイス(アメリカ)とともにハレー彗星の観測を行い、通称「ハレー艦隊」と呼ばれた衛星です。



「さきがけ」は、1985年1月8日にM-3SIIロケット1号機で打ち上げられ、1986年3月11日にハレー彗星に699万kmまで接近、彗星付近の太陽風磁場やプラズマを観測しました。その後、1987年に日本の探査機としては初の地球スイングバイを行い、地球の磁気の観測も行っています。


「すいせい」は、1985年8月19日、M-3SIIロケット2号機による打ち上げ。1986年3月8日、ハレー彗星から15万1000kmまで接近接近し、紫外線カメラで彗星のコマ(彗星の頭の部分)の観測を行い、ハレー彗星の自転周期や彗星から出たイオンが太陽風と相互作用する様子などを明らかにしています。


「さきがけ」と「すいせい」は、開発、打ち上げ、運用は何から何まで初めて尽くし。M-3SIIロケットの初めての打ち上げ、初めての太陽周回軌道への投入。このような軌道に探査機を入れることも初めてなら、こんな遠方の探査機と通信するのも初めて。 臼田宇宙空間観測所の64mアンテナの初めての追跡対象でもありました(臼田局はこのハレー彗星観測に合わせて建設されました)。
計画に携わった人々の苦労はなみなみならぬものがあったようです。その苦労の一端はISASニュースの特集号で垣間見ることができます。


この2機の衛星は、日本の探査機として初めて地球の重力を脱出し、太陽を回る軌道に入った衛星です。つまり、日本初の人工惑星ということになるでしょうか。「のぞみ」「はやぶさ」「あかつき」と続く日本の太陽系探査の先駆けとなった衛星です。そう日本の太陽系探査は彗星から始まったんです。