「種子島宇宙芸術祭」現地レポート(2)
2017年10月2日(月)
- イベント
8月5日から「宇宙に一番近い島」種子島で始まった種子島宇宙芸術祭を、JAXA広報部員が3回にわたってレポートします。第2回はインフォメーションセンター内に展示してある作品「f(p)」の作者、小阪淳さんにお話をおうかがいしました。
種子島宇宙芸術祭についてのあらゆることがわかるインフォーションセンターの中に、小阪さんの作品「f(p)」が展示されています。
「f(p)」は3枚のディスプレイとスピーカー、操作盤と椅子から成る体験型の作品。ディスプレイには幻想的で不思議な映像が映し出されていて、操作盤に付けられたつまみを回すことで、様々に変化させることができます。
三脚に付いているのが操作盤、その手前は体験者が座る椅子 |
操作盤にはつまみがいっぱい |
筆者もさっそく体験。真ん中のつまみで映像の種類を切り替えます。その他のつまみでは、視点のズームイン・ズームアウト、視点の上下左右移動など、映像の変化をリアルタイムで作り出すことができます。3面のディスプレイによって左右に広い映像が映し出されているため、操作しているうちに映像の中に没入していく感じがします。
また、映像も実世界とは違った非現実世界ではあるものの、しばらく見ていると何となくどこかで見たような、懐かしさも感じるように。独特な世界と没入体験を生み出す作品「f(p)」について、作者の小阪淳さんにお話をおうかがいしました。
小阪 淳 (こさか じゅん)
大阪大学工学部建築学科卒業。東京芸術大学大学院美術研究科建築専攻修了。一級建築士。1994年-2000年SFマガジン(早川書房)装画担当。文部科学省「一家に1枚宇宙図2007」制作に参加。2007年カンヌ国際広告祭2007Cyber Lions銅賞受賞(受賞作品「4D2Uナビゲータ」)。 2010年東京書籍「宇宙に恋する10のレッスン」出版(共著)。2013年国立天文台「宇宙図2013」制作に参加。2014年国立天文台「太陽系図 2014」制作に参加。2015年「光図2015」制作に参加。同年より「宇宙図@オンライン」制作。早稲田大学非常勤講師。
Q. | まず今回展示されている作品「f(p)」の名前について教えてください。 |
小阪さん
「「f(p)」はエフピーと読むのですが、fはファンクション(=関数)、pはポイント(=位置)のことです。位置を定義すると数値がでてくる関数ということです。また、ここでいう位置とは視点のことです。僕たちはそれぞれ視点を持っていて、視点が決まると風景が決まります。その関係を関数とし、コンピュータで再現しています。」
Q. | 関数とはどのようなものですか? また関数を使ってどんなことを表現しているのでしょうか? |
小阪さん
「関数は全て数学のシンプルな数式です。人間の意図が何も入っていない関数だけなのに、そこから生まれるものが、まるで岩場とか惑星の表面とか、あるいは建築物や文様のような人工物に見える瞬間があります。種子島には、ロケット打ち上げなどバリバリの人工のカッティング・エッジな部分と、すごく自然豊かな環境と、ある意味両極のものがあります。それらが数式という法則によってつながっているということを、頭で理解するのではなく、なんとなく感じ取っていただける作品になるといいな、と思っています」
作品の説明ボード。
撮影OKとのことなので、気になった映像をバシバシ撮影
Q. | 「f(p)」は見るだけではなく、操作もできます。なぜそのようにしたのでしょうか? |
小阪さん
「ジョイスティックを操作することで視点が中に入っていくと、パーソナルな動きになります。これは僕たちが日常、移動することで世界が変わっていくことを再現しています。一方、操作盤のつまみを回すと関数の種類(※ f(p)には全部で約300種類の関数が用意されている)やパラメータが変わって、世界がグワッと変形していきます。こちらは日常にはない感覚。ちょっと神視点というか、世界を改変していく感覚。つまみを動かす瞬間、パラメータを変化させることに、何か興奮があるのだと思います。」
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ちなみに300種類の関数の中で、小阪さんが一番気に入っているのはこれ。
気持ち悪さがあるところがポイントとのこと
小阪さんへのインタビューを終え、説明いただいたお話を頭の中で反芻しながら再度「f(p)」を体験してみました。いくつか関数を見ていると、たしかに島の海岸付近で見かけた地層に似ているものが出てきます。この作品「f(p)」を支配しているのは数式、一方、自然を支配しているのは物理法則でやはり数式。そう考えると、両者が似てくるのは必然の帰結のようにも思えます。でもやはり不思議は不思議。何が必然で何が偶然なのかもやもやしながら、筆者は宿に帰ったのでした。
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(追記1) |
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(追記2) |
さて次回は、作品「Myrkviðr(ミュルクヴィズ)」の展示を行っている千田泰広さんにインタビューします。