開催から少し時間が経ってしまいましたが、2014年7月27日のJAXA相模原キャンパス特別公開で行われたエッグドロップコンテストの様子をご紹介しましょう。エッグドロップコンテストももう4回目、今回は14機の機体が参加し、参加者も会場もすごい盛り上がりでした。
知らない人のために少し説明しておくと、エッグドロップコンテストというのは、一言で言えば「高い所から生卵を落として壊れないような機体宇宙実験室 11 - エッグドロップコンテスト2014 JAXA相模原キャンパス特別公開編を作る」というチャレンジです。元々は90年台にアメリカの大学で始まったものですが、今では世界中で行われ、日本でも学園祭やワークショップなどで盛んに行われています。
1.機体の重量が20g以上100g以下であること
2.機体のサイズが1m四方程度であること
3.落下途中で分離しないこと
4.落としても安全な材料で作ること
5.半径5mの範囲内に落下すること
簡単なようでいてなかなか厳しいルールです。特に1番と5番。缶ジュースを思い浮かべてみてください。あれが300g前後です。100gというのはその1/3しかありません。しかも、それを半径5mの半円の中に落とさなければなりません。軽い機体を、狭い範囲に落とす。この相反する条件を満たさなければいけません。
プロペラ号/90g
トップバッターは、その名の通り円筒形の機体に4枚の羽がついた機体です。羽はビニール製、針金で枠が作られていて折りたたむことができます。持ち運びも考えられています。
くるくると回転しながらの落下。設計通りの飛行です。最初は安定していましたが、途中で壁に当たって姿勢を乱しました。でも卵は無事です。落下位置もほぼ真ん中。見事成功です!
うちゅうくん/67g
スーパーのレジ袋のパラシュート、機体の下には紙風船のクッションがついています。卵はスポンジに包まれてさらに安全が高められています。
落下速度が早めですがパラシュートが吹き流しのように働いてきれいに紙風船を下にして落ちていきます。風に流されることもなくエリア内に着陸。卵も無事でした。成功!
タマゴンマークV/90g
彼は昨年の優勝者です。透明なパイプの中には、なんと中身を抜いた卵の殻が入っています。卵で卵を守るというアイディア!しかも、クッションの卵にはご家族の似顔絵が描いてあります。一番下はお父さん?! ちなみにマークVはテストを繰り返して5機目の機体だからだそうです。
機体上部の羽根で回転するはずが、うまく回りませんでした。途中で姿勢を乱しマイク用のスピーカーに当たってしまいました。でも卵は無事です。成功!でも、お父さんの似顔絵にひびが…
ゆうちゃん号/70g
カップ麺の容器を3つ合わせたような構造です。卵はカップ麺の容器の中にスポンジに包まれて入れられています。はやぶさのカプセルをイメージしたとのこと。これまでの機体とは違い、パラシュートや羽根のようなスピードを落とす仕組みがありません。うまくいくでしょうか?
かなりのスピードでまっすぐに頭を下にして落ちてきました。非常に安定した落下です。もちろんど真ん中。卵は... 無事です!すごい!成功です!
セーフティ・ランディング・ユニット/100g
厚紙とカップ麺の容器を組み合わせたコーン型の機体に4本の着陸脚がついています。さらにパラシュートでスピードを落とす仕組みです。規定ピッタリの100gの重量級の機体です。
最初はパラシュートが機体の姿勢を保っていましたが本体が風にあおられて横向きになってしまいました。でも卵は無事。おみごと、成功です!
ペンギンロボット号/40g
こちらは重量が50gを切る軽量級。セロハンの機体の中はふわふわしたクッションが詰められています。さらに機体に空気を入れて膨らませてエアバッグのように衝撃を吸収します。
ふんわりと降りてきました。ど真ん中に危なげなく着陸です。もちろん卵は無事。成功です!
四角い土星/95g
銀色のお風呂の断熱シートを利用して作られた機体です。その名の通り四角い土星のような形。輪の部分で落下速度を抑える仕組み。この部分も銀色のスチロール製の厚手のシートです。福田さんは昨年3位でした。
なんと、土星の輪の部分が羽の役割をして飛んでしまいました。とても安定したフライトです。が、あまりにうまく飛んでしまいエリアから外れてしまいました。今回のルールでは失格です。まさかの結果です。残念!
でかたま8/50g
なんと沖縄からの参加、おそらくこれまでで最も遠方からの参加です。ストローで支えられたパラシュートに円筒形の機体がぶら下がっている構造です。機体の底には地震対策用のジェルが入っています。ちなみに機体名は台風8号から、エントリーナンバーとの一致は偶然です。
パラシュートが効いて本体を下に落下しましたが、落下しながら何度か壁に当たって姿勢を乱しました。かなり強く地面に衝突しましたが... 残念、卵が割れてしまいました。
ブルートルネード/90g
大型で非常に美しい機体です。まるでプラスチックのようですが、ボール紙を塗装したものとのこと。飛行姿勢を安定させるために、何度もテストしながら機体の形状を決めたとのこと。菊池くんは前回4位でした。リベンジなるか?
ゆっくりと回転しながら非常に美しい落下です。会場からも思わず歓声が起こりました。もちろん卵も無事。成功です。
がっちりくん/100g
規定ピッタリの100gの機体。牛乳パックを本体に使い、4枚の羽が斜めに取り付けられ。落下しながら機体を回転させる仕組みです。卵は中でクッションに覆われています。
なんと!予想に反して回転せずにわずかに滑空しました。まるでスペースシャトルみたい!でも、横向きに落下してかなり激しく地面にたたきつけられてしまいました。結果は... 卵は無事です。成功!
だいち3/90g
ロケットのような筒型の機体に、コンパクトな羽が2枚ついた形です。将来はロケット開発に関わりたいとのこと。機体名は自分の名前と、もちろん陸域観測衛星「だいち・だいち2号」から。
すごいスピードで回転しながら落下しました。安定したスピンで、本体からまっすぐエリアの真ん中に落下。卵も無事です。成功!
エッグソユーズ帰還船/80g
大きなパラシュートが3つ付けられた箱型の機体です。機体には地球の絵が書かれていてとても美しい機体です。機体の上に乗っているのは、ドラ◯もん?
パラシュートを大きく開いて非常にゆっくりと降りてきました。たしかに地球に帰還するソユーズ帰還船のようです。美しい!でも、風に流されてわずかにエリアから外れてしまいました。卵は無事でしたが失格です。残念!
おおすみ/30g
非常にシンプルな機体。30gは最軽量クラスです。大きめのキッチンスポンジで卵をくるみ、そこに大きなパラシュートが付けられています。名前は日本初の人工衛星「おおすみ」から。初参加の意気込みを込めた名前とのこと。
なんと、ビル風に乗ってフワフワと飛んでいってしまいました。一時は上昇していたようにも見えます。エリアから外れてしまったので失格ですが、おそらく大会史上最長滞空記録です。ちなみに卵はもちろん無事でした。
キャロット/100g
かなり大型の機体ですが、紙で作られていて、もちろん規定の重量をクリアしています。デザインのモチーフは見ての通りにんじん(にんじんは英語でキャロットです)。葉の部分がプロペラの役割を果たします。
綺麗に回転しながら落下しました。落下速度も抑えられて、安定した飛行です。少し風に流されましたが落下エリア内。卵も無事でした。成功!
順位は成功した機体の中から会場からの投票で決めます。デザイン、落ち方、卵を守る工夫など総合的な判断のもと投票をしていただきました。参加者はテーブルの上に機体を並べ皆さんに見てもらいます。どきどきの瞬間です。さて、投票の結果は?
ブルートルネード
ダントツの1位。美しい機体と安定した落下姿勢は見ていた誰もが息をのみました。
キャロット
デザインと機能が一体になった機体です。上部の羽根は回転するときの遠心力で開くようになっていたりと工学的にも素晴らしい物でした。
うちゅうくん
3位は同数で2機が受賞しました。機体を安定させる小型のパラシュート、紙ふうせんのクッション、スポンジの保護材。家庭にあるものだけで作られていますが、考えぬかれた設計です。
ゆうちゃん号
同数3位。まったく減速をさせないという非常に挑戦的な機体でした。その難しいチャレンジを成功させたのは見事です。
今回は上位3機以外にも、顧問の平林久JAXA名誉教授とオブザーバーの阪本先生にこれは、と思った機体に審査員特別賞が授与されました。
ペンギンロボット号
風船の中に卵を入れるという、非常に軽量で最小限のデザインでこの難しいチャレンジを見事成功させた機体です。
タマゴンマークV
シンプルな機体ながら、卵で卵を守るというユニークなアイディアが光る機体です。ご家族の似顔絵を卵に書き入れるユーモアも素敵です。
だいち3
機体に強いスピンを掛けて安定させるというのは工学的にも理にかなった設計です。小さな羽根ですがそりをもたせるなど細いところも工夫されていました。
宇宙実験室ノート
今回も14機中、卵が割れたのはわずか2機。エリアから外れてしまった機体もわずか2機でした。ルールの厳しさを考えれば驚くべき成功率です。大会前のインタビューで話していても、みなさん夏休みの間に何度も何度もテストをして機体を会場に持ち込んでいます。親が代わりに作っているんじゃないの?と思う方もいるかもしれませんが、彼らの話しぶりを聞いていればそうでないことが分かります。なにしろ彼ら、話しだすと止まらないんです。
各機体の落下後に、1機1機、顧問の平林先生の講評をもらいます。これが参加者の皆さんの何よりの楽しみ。みんな目をきらきらさせながら、どこを工夫したかを語り、先生の話に聞きいっていました。
4回目ともなると、複数回の出場経験のある出場者もいますし、初めての参加者の方も昨年見ていたという人がほとんどです。もちろんルールは熟知していて、投票で順位が決まるというこの大会独特のランキングの決め方もかなり意識されていました。みなさんどれだけ工夫をこらし、オリジナリティのある機体を作るかを考えています。
大会全体の講評で顧問の平林先生がこんな話をされていました。エッグドロップコンテストには正解がありません。100人いれば100通りの答えがあります。子どもたちは普段正解のあるものに囲まれて生活しています。でも、本当はこの世界は答えのないもののほうが多いんです。子どもたちがこういう答えのないことにチャレンジする機会が少しでも増えるといいですね。
[2015.2]