前回(宇宙実験室 19)、松岡先生のお話を聞いてプラズマの面白さに心惹かれた二人、地球の周りには目に見えない磁場があって、太陽からやってきたプラズマが加速されて熱くなったり、オーロラを引き起こしたりしている… 地球の周りでそんなダイナミックなことが起きていたなんて!そういえば、松岡先生がプラズマは身近にもあるっていってたっけ… じゃあ、探してみよう!
まずは、手始めに磁場を見てみます。使うのは砂鉄。もしかしたら、理科の実験を覚えている人もいるかもしれません。紙の上に砂鉄をまいて裏から磁石を当てると磁場の方向に沿って砂鉄が並ぶ、定番の実験です。そのままやっても面白くないので、今回は砂鉄をオイルの中に混ぜて透明な容器の中に封入してみました。容器を振って砂鉄を舞い上がらせてから磁石を近づけると…
わかるでしょうか?オイルの中に砂鉄が舞い上がっている短い間ですが、磁力線が立体的に浮かび上がります。おもしろーい!
地球は北極がS極、南極がN極の大きな磁石とみなすことができます(磁石としての地球は方位磁石が指す方向とは逆になります)。地球の周りにもこんな風に目に見えない磁場が広がっているんですね。
さて、磁場の次はいよいよプラズマです。松岡先生は身近なプラズマの例としてロウソクの炎を挙げていらっしゃいました。プラズマは気体の原子核の周りを回っていた電子がそこから離れてばらばらに飛び回っている状態のこと。原子核は電気的にプラスに、電子は電気的にマイナスになっているので、磁場や電気の影響を受けるはず。
さっそくロウソクの炎に強力な電磁石を近づけてみます。磁場に反応するなら先程の砂鉄のように反応するはず。えいっ!
…あれ?動かない。なんどやってもちっとも反応しません。もしかしたら動いているのかもしれませんが、炎のゆらぎに隠れて見えないのかも。強力磁石でも弱すぎるのかな?
仕方がないので、秘密兵器を使いましょう。じゃーん!
これは電気に詳しいお兄さんに作ってもらった、2本の電極の間に高電圧をかける装置。磁石がだめなら、電気の力でプラズマを動かそうという作戦です。ロウソクの炎に電極を近づけて…スイッチオン!
おおお!スイッチを入れると、ロウソクの炎が一方の電極に引き寄せられます。これはすごい!
ロウソクが燃えるのは高温で気化したろうのガスが燃えているからです。そのガスが電気に反応するということは、プラズマ化した(原子核と電子がバラバラになった)ろうが電極に引き寄せられているものと考えていいでしょう。たしかにここでもプラズマ現象が起きているようです。
うーん、眼に見えないけれどたしかにそこにある。プラズマって奥が深くて面白い!
※ ロウソクのような裸火を取り扱う場合は、周りに可燃物など燃え移るものがないように、また万が一の際にいつでも消せるように消火用の水などを用意してください。
※ ネオジム磁石はとても強力なので皮膚を挟んだりするとけがをすることもあります。また誤って赤ちゃんが飲み込んだりするととても危険なので取り扱いには十分注意してください。
※ 高電圧を使う実験は適切な知識がないと感電などの可能性があり非常に危険です。ご家庭では真似をしないようにしてください。
宇宙実験室ノート
これは、ロウソクの熱でプラズマ化したろうのガスが電極に引き寄せられているものと考えられます。ろうそくの炎の白い部分は2000度近くになっていて、電子と原子核の一部がばらばらになっています。だから電気に反応して炎が動いたんですね。でも、プラズマになっているのはろうのガスのごく一部、だから目に見えるような動きを起こすには、磁石では足りず、高い電圧が必要だったというわけです。
このように気体に高いエネルギー(ここでは熱)を与えると、原子と原子核がばらばらになってプラズマができます。宇宙なら、例えば太陽の表面です。そこで生まれたプラズマは太陽から吹き出して太陽系全体に広がって行きます(太陽風)。その途中で地球の磁場に出会うと、捉えられて、その影響で様々な現象が起こります(オーロラはその一つ)。このプラズマと地球の磁場の関係を調べるのが、ジオスペース探査衛星「あらせ」というわけです。
「あらせ」とJAXAが行っている地球磁気圏の研究については以下のページも参考になります。
関連リンク
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