「第74回JAXAタウンミーティング in 岩国」(平成24年3月4日開催)
会場で出された意見について
第二部「『はやぶさ』が挑んだ人類初の往復の宇宙飛行 その7年間の歩み」で出された意見
<日本の教育制度について(1)>
参加者:もし川口先生が文部科学大臣だったら今から何をしますか。
川口:教育と今の試験は違っているのかなと思っています。試験に教科書、参考書、辞書など全部持ち込んでいいのではないかと思っています。例えば、英語の試験で、1つだけ長文を訳すときにわからない単語がある。その問題が解けなければ、ひょっとするとその人の人生を左右するかもしれない。それはとんでもないことです。社会に出て皆さん御存じのとおり、わからない単語があれば、辞典を引けば解決します。たまたま覚えているかどうかだけの試験をしてもしょうがないです。調べて済むことを幾ら試験しても意味がないと思っています。だから、教育も加点法が必要かなと思います。創造性、オリジナリティの発揮とか、そういう部分をもう少し引き出す、評価する制度があっていいのではないかと思っています。現場ではなかなか難しいですね。教育現場、中学校、高校もそうですけれども、そういうところで先生にいきなり独創性を引き出せと言ったって、先生自体が独創性を引き出されていないですから、どうやっていいかわからないわけです。大変難しいことではありますが、そこに挑戦していかなければ、どれだけ生き字引に近いかみたいな試験をされていたのでは、日本の将来はないですね。インスピレーションというか、着想がきちんと表現されて、それを評価されるような方法を考えなければいけないなと思っています。
西浦:確かに記憶力の勝負というようなテスト方式というのは、少々問題があるかもしれません。
<日本の教育制度について(2)>
参加者:学校教育に携わっている者です。今日のタウンミーティングのお話を聞いて、子どもたちに夢を与える宇宙開発の重要性を再認識しました。昨今、理科離れと言われていますが、どうすれば理科離れを防ぐことができるか。もっと言うと理科好きを増やすことができるか。何かヒントがあれば教えていただけたらと思います。
川口:これは大変難しい質問で、教育現場だけで解決できることではないと思います。例えばスティーブ・ジョブズだって大学を別に終えたわけではありません。学校では、Howしか教えないと私は思っていて、やり方、取組み方だけです。その人たちがいきなり社会に出て、さあ何か新しいことを始めろ、Whatは何かと言われても途方に暮れてしまいます。実は学校に行くかどうかということは関係なくて、最初からWhatを目指そうと思うとスティーブ・ジョブズのような人が出てくるわけです。政策仕分けのときにある議員がおっしゃっていました。これからの教育はスティーブ・ジョブズのような人を見出していかなければいけないと。これは大きな勘違いで、そういう人たちは自らそういうふうに気が付いていくわけです。そして自分たちが独創を持って新たなことに挑戦して、新しいことを切り拓いていけば、それは大きく評価されるし、報われるということが見えているんです。大学も変わっていかなければいけません。大学は今、学歴を格付ける機関でしかなく、卒業資格を証明するだけです。大学の先生が企業から頼れるパートナーになっているかと言うと、本当に少ない。また、技術者がプロ野球のトレードのように、技術力を持った人がいろんな道を切り替えていけるようなことが必要ではないかと思っています。そのためには、社会の構造を変えていかない限り、教育現場だけで解決するのは難しいかも知れません。ただ、科学に対する興味というものを、多くの学校の先生方が教えていただいているのは大変ありがたくて、JAXAの教育センター、広報部を通してお手伝いさせていただいています。しかし、何だかんだ言うよりも、ご家庭に1枚のスペースシャトルの打ち上げ、SF、「はやぶさ」の写真でもいいですが、それがずっと家に貼られていて、子どもが毎日見ていたら、間違いなく影響を受けていくと私は思っています。身近に触れるところに、そういう刺激されるものが置かれていくことが大事かなと思っています。
<「はやぶさ」が持ち帰った試料について>
参加者:「はやぶさ」の試料は酸素の影響がどうだったのか疑問に思ったのですが、教えていただけたらと思います。
川口:試料の中の酸素の結び付きのご質問でしょうか。「はやぶさ」が持ち帰ってきた試料は鉄と酸素の結合の程度というのを見たわけです。何がわかるかというと、どれくらい加熱されていたかどうかということです。地球と同じように小惑星もある程度大きくなると重いものが下に沈んで、中が高温になって溶けていきます。地球で言えば地核やマントルに当たるような部分というのは石質隕石と呼ばれています。それらはどのぐらい酸素と結び付いているかどうかで、どのぐらいまで加熱されたかどうかがわかるわけです。わかっていることは大体摂氏800℃ぐらいまで加熱されていた。そういう酸素の結び付き方をしています。それが意味することは、イトカワという天体はもともとは大きさが20kmぐらいまで大きかった天体だろうと推定されています。そのぐらいまで大きくなると中は高温になるからです。しかし、イトカワに実際に行くと500mしかない。もとは20kmあったということは直接つながらないわけです。だから一遍ばらばらになってつくりなおされたということがわかっていることになります。ラブルパイルと言って瓦れきの寄せ集め天体という意味なんですけれども、もともと「はやぶさ」がイトカワに訪ねたときに、イトカワの周りで重力の大きさを測った、重さを測りました。そのときに既に空隙だらけだということはわかっていますから、そのときにもラブルパイルではないかということは推定されていた、結論されていたんです。けれども、試料を持ち帰ったことで再確認しました。試料を持ち帰って、もとの天体はもっと大きかったということが実際に再確認されたわけです。これが去年の科学10大ニュースの中の1つとして取り上げられています。
<今後の惑星探査機の推進力について>
参加者:土星などの探査の場合、どのような推進方法をとるのかというのをお聞かせください。
川口:原子力になります。原子力は今、ある意味では懸念材料であり、どう取り組むか議論されているところです。木星以遠では原子力以外の動力源はなく、言ってみれば宇宙は原子力と切っても切れない関係に将来結び付いていくだろうと思っています。これは不可避なことであると思っています。イオンエンジンとか電気推進エンジンとか、あるいは光子エンジンとか、そういうことを動かして、やがて人類が大きな活動領域を広げていくと思っています。「はやぶさ」の話でなくて済みません。もっと広い話をしていただいて結構だと思います。私はそういう話を歓迎していまして、「はやぶさ」の話は会場の人の方が詳しい場合があるんですね。会場の人から例えば太陽電池の隅っこが欠けてとか、太陽電池を貼っていないけれど、どうしてですかと言われて、たじろいだことがありまして、答えられないんです。余りお詳しい方がいらっしゃると困るなと思っているので、違えてもらった方が話がしやすいです。
<物理学について>
参加者:物理学は自然現象が先で、それを私たち人間がわかる数学で表している学問だと思います。研究者または開発者にとって、物理学とはどのような学問でしょうか。
川口:「はやぶさ」でないお話がと言いましたが、一挙に難しくなってしまい、とてもお答えできない質問になってきました。物理学も物の現象から、一番古典的には天文学から始まっているんでしょうか、そのとおりだと思います。ただ、なかなか目に見えない領域とか、確率的にしかわからない領域については数学が物理を引っ張っている面は当然あります。ノーベル賞を受けられた益川先生なんかの領域もそうです。益川先生は、大学院に進学するときに物理か数学か私はどちらでもいいと思っていたというお話がありました。奇妙なお話かもしれませんが、どちらも創造的な仕事だと思うんです。数学というのは、高等学校で数学が得意だという人は大学に行くと愕然とするわけです。数学が芸術だとわかるからです。同じように物理も芸術だ。創造だというか、わからないことを知ってみようという原動力に違いはないと思っています。ですから、ご質問の物理は現象からスタートするかと言うと、あるところから先は数学の助けを借りて進むものだと思っています。
<JAXAの広報活動について>
参加者:先ほど理科離れという話がありましたが、子どもたちは本来間違いなく理科が好きだと思います。中学校で理科の授業をやっても、特に宇宙に関することはほとんどの生徒が、興味関心を示します。ですが、いろいろ授業をやってみると、計算問題をやらなければいけないというところでだんだん離れていってしまう。今回の「はやぶさ」は結果的に大成功だったと思います。とても勇気を与えて、子どもたちに夢を与えてくれたと思っています。我々の方からもJAXAの情報に積極的にアタックしていきたいと思います。また、JAXAからも今日のこのタウンミーティングもそうだと思いますが、しっかりと広報活動といいますか、情報提供をしていただいて、我々はまた我々で子どもたちを育てていきたいと思いますし、そういう気持ちでおりますので、是非よろしくお願いします。
川口:こちらこそよろしくお願いいたします。
<将来の人生プランについて>
参加者:東映の映画も20世紀FOXの映画も観させていただきましたが、個人的には「はやぶさ・バック・トゥ・ジ・アース」のプラネタリウムのものが一番好きだったりします。ああいう理科理科したものではない、物語的なものも科学や、生命の起源への興味などを広げてくれるすばらしいものに仕上がっていたと思います。そういった宇宙への興味などを子どもたちに広めていくという意味で、川口先生の大先輩でいらっしゃる的川先生は、定年退官後にKUMAを立ち上げられたと聞いております。川口先生におかれましてはまだ先ですけれど、定年退官後のプランなどが教えていただきたいなと思いまして、質問させていただきました。
川口:これはユニークなご質問ですね。私は今まで講演会でこんな質問を受けたことはありません。退職後のことはまだ何も考えていません。ただ、一番大事なのは次の世代を育成することです。間違いなくそういうふうに思っていて、教育の現場なのかどこかはわかりませんけれが、そのお手伝いをできればと思います。高校生、大学生、社会人の若い方にどんどん新しいことに取り組んでほしい。そんなふうにメッセージを伝え続けられたらと思っています。
西浦:今、的川先生のKUMA、宇宙子ども教育というお話が出ました。JAXAでも宇宙教育センターで、宇宙を子どもたちに広めるだけではなく、教育者に宇宙教育の指導なども行っています。映画も、3社とも本当にすばらしくて、それぞれの持ち味が出ていて、いいなと思っていますので、皆様、チャンスがありましたら、是非ご覧いただければと思います。1つのテーマを別々の会社で3本の映画が同時期につくられたというのは、大変めずらしく、ありがたいことだと思っています。
<宇宙探査の意義について>
参加者:私自身、宇宙探査という言葉を聞くとすごくワクワクします。今回「はやぶさ」の目的としては、地震などのメカニズムがわかるということでしたが、宇宙探査全体の意義といいますか、そういうことを周りと話しているとやはり不透明といいますか、それにお金をかけられるのかという問題も出てきます。その辺はどのように考えていらっしゃるのかお聞きかせ下さい。
川口:余り不透明だとは思っていません。こういう不況や震災に苦しんでいる世の中で、夢を見るから飯が食えるかという話はきっとあるに違いありませんが、私はこう思っていて、夢も見れないくらいだったら飯も食えないと思います。一番大事なのは、こういうときにいろいろなところを削り取って一生懸命辛抱することかというと、そうではないと思うんです。一番大事なのは辛抱ではなくて自信と希望を持つことで、夢を持つことです。夢を持つということは、それで飯が食えるわけではありませんが、自分たちが必ず次に前進していける、この国はまだ大丈夫、こういうことをやり遂げられる、私たちは実力があるんだと思えることこそがこれから日本が立ち直っていく原動力だと思います。近視眼的に見れば、直面していることはお金が厳しいということで、少しずつ削っていったからといって先があるわけではなく、ここで自分たちがもっと実力を発揮していけるように向けていかなくてはいけなくて、そういう意味で宇宙開発全体が貢献していける大きな原動力になるものだと思っています。
参加者:探査の結果の目的のためだけではなく、気持ち的なことも含めてやっているということですか。
川口:そうですね。探査であげられた直接の成果だけに目を向けるのではないと思っているんです。先ほどもお話させていただきましたけれども、宇宙開発自体は大きく産業や技術を牽引して歩く総合技術です。ですから宇宙だけで考えていてはだめだと思う。だからこそポリシーが必要だと言っているんです。先ほど寺田部長はJAXAも貢献していると申し上げましたが、言ってみればJAXAは行政の実施機関であるので、実際はポリシーをつくるという立場にないところが我々のもどかしいところで、政治家がポリティシャンですから、ポリシーをちゃんと発揮していかなくてはいけない。だから政治家こそがきちんと日本のあるべき姿というものを考えて、そのためには日本人をどういうふうに考えを持ってもらうべきかということを取り組むべきだと私は思っています。
<日本の技術力について(1)>
参加者:先ほど「はやぶさ2」は予算の方を削られた。NASAの「はやぶさ」プロジェクトは4倍の予算がついている。日本では結局いろんな町工場の技術とか、それでかなり「はやぶさ」がつくられたわけですけれども、例えばもしNASAがあれだけの予算をつけるのであれば、実際だったら、自分たちだったらもっと安上がりと言っては何ですけれども、同じ予算があればもっと技術的にすごいものをつくれるのではないかとか、そういう日本の技術力についてはどういうふうにお考えでしょうか。
川口:それは勿論そのとおりです。新しいものをつくるということだけをやるということには限界があるかもしれません。ハイリスク・ハイリターンというものをどのぐらいの比率で実施していくかということについては、これは冷静に考えてみることも必要かもしれません。どの会社だって一か八かということばかり続けていたら会社はつぶれます。これは日本だってそうです。政府だってハイリスク・ハイリターンのものをどんどんやっていけばいいではないかと、そればかりやっていたら全部覆っていきます。堅実にきちんと成果をあげていくという傍らで、そういう将来に対する投資も続けていくというバランスが必要だと思うんです。特に「はやぶさ」の場合は勿論。「はやぶさ2」はきちんとお金をかけていいと私は思っています。でも「はやぶさ」型の探査という、言ってみればかなりのリスクのかたまりのものを本当に最初から、第一歩から完璧に仕上げておこうと思ったら、これは青天井の予算が必要になってしまう。ですからむしろ言ってみれば機会を多くする方がいいのかもしれませんね。小粒でも機会を多くして、若い研究者にチャンスを与えるべきです。これは人材育成のための鍛錬の場にもなるからです。大きなリスクのかたまりに巨額を投じていって、それで一か八かやるということというのは、必ずしもそう当たっていないのではないかと思います。ですからそれはもっとしっかりとやれるし、大きな成果が出せるいい機会だと思っているんです。お話いただいたように、日本政府はそういうところにお金が出せないので残念なことだと思っています。
<日本の技術力について(2)>
参加者:通信関係の仕事をしている者です。川口さんの今後のチャレンジにおいて、日本の通信技術に期待するところとか、ポイントについて何かご意見ありましたらよろしくお願いします。
川口:これは実は大変たくさん言いたいことがあります。というのは日本の特に宇宙開発、宇宙超遠距離通信、地上もそうですけれども、通信技術がアメリカに対して遅れているところというのは尋常なものではありません。とんでもなく遅れています。惑星探査の通信なんか特に典型です。言ってみれば50年遅れていると言ってもいいかもしれません。通信の速度はNASAの速度に比べればまず10分の1です。以下かもしれません。使っている物理は全部同じです。アメリカの通信技術というのは通信の主のような人が綿々として何十年にわたって性能改善をつくりあげたかたまりなんです。だからそういう方々の技術に基づいて、例えば地上の通信装置でも同じですけれども、大抵通信機の半導体というのは全部アメリカが買っていきます。低雑音アンプなんかは全部アメリカ製です。「はやぶさ」だってそうです。日本ではつくれないからです。本当は日本はこんなに携帯電話は盛んだし、電気、電子工学はすごく進んでいる、通信は進んでいるのではないかと思っているのは大きな誤解で、最先端のところでは全くかなわないというのが現状です。日本人はそういうことやれるはずなんです。言い過ぎかもしれませんが、もっと規制を外していろんなことが挑戦できるような雰囲気をつくってあげることが必要だと思うんです。デジタル放送は勿論そうですし、衛星携帯電話だってそうだし、そういうことというのは本当は日本発信で始まってもおかしくなかった。だけど、日本人はそう思わないんです。通信事業というのはいろんな規制やルールがすごいがんじがらめで、日本人が発想することというのは、そういうルールや規制の中で内側から考えてしまう。その規制を外してしまって何かをつくり上げようということはありません。アメリカは平気で通信のバリアというか障害をどんどん外して歩いている。例えば深宇宙というか、惑星通信にかつて使っていたSバンドと言って、2ギガヘルツ帯の電波ですが、これは深宇宙通信専用のバンドで、国際的に取り決められていたんです。アメリカは、それを撤廃して携帯電話に使いましょうと言って開放してしまった。日本人はなぜそれを言わないか。そういうものは先にルールがあると信じ込んでしまうからです。最初にそういうことを言われてしまうと、それがルールだと信じてしまって、そこからスタートしてしまう。日本人は電気、電子工学はもっと得意だったはず。だからどんどん新しいものをつくれるし、もっとビジネスがいっぱいできるはずなんですが、それができていないという、非常に残念なことだと思います。一番典型が通信に表れているなと私は思っています。だから日本人はこれから何でもできると思えばいいんです。日本人が提案したものが世界を席巻すると思うような気持ちが必要だと思います。是非若い人にはその通信の素晴らしさというか、将来というものを語って取り組む人が出てほしいと思っています。
寺田:「みちびき」は通信というより放送衛星です。一方的に衛星から電波を出して、それを受けて位置がわかるということですが、そういう規制という意味では測位信号というは非常に微弱なので、これは守らなければいけない。アメリカは同じ信号を地上用の移動体通信に使って、自家中毒をしているようなところがあったりします。確かに日本もどんどん自前で新しいことを考えて、規制にとらわれずにやっていくのが確かにいいと思います。
<イオンエンジンについて>
参加者:「はやぶさ」が帰還するときに最後エンジンが4つともだめになってしまって、その後どうしようかといったときに、エンジンとエンジンの間をつなぐショートカットするバイパス回路があったというような話が出て、それでエンジンがようやく動き出して帰還したという話があったと思いますが、最初から用意してあったのではないとか、本当にそれを知らなかったとか、そのような裏話があったら教えていただきたいと思います。
川口:探査機全体のシステムから言うと、バイパスダイオードはそういう切り札にはなり得ないというのが基本的な考え方です。というのは、そのバイパスダイオードが入っただけでは救えないからです。
もともと探査機全体としては3つのエンジンで済むところを4つ積んでいっていることで対応して、リスクを減らしていました。では、そのバイパスダイオードというのがどうして入っているかというと、イオンエンジンのエンジニアが自分たちの世界で、できるだけのことはやっておこうということだったんです。どうしてそれだけでは救えないかと言うと、片方のエンジンは電子レンジを空焚きにした状態にならないと運転できません。片方の電子レンジが空焚きになっても持ちこたえられるように設計していたかと言うと、そんなことはなく、持ちこたえられたのは、幸運そのものです。マイクロ波を供給しているケーブルの温度はどんどん上がって、絶縁破壊にまでいたってしまったら壊れてしまいます。私は、原理的には複合運転はできるはずだと思っていましたが、それにダイオードが必要でダイオードが組まれていたことは知りませんでした。私が考えているリスクを減らす方策はそうでなかったからです。ただ、空焚きの電子レンジが持ちこたえてくれたというのは、神様が微笑んでくれたとしか思えないことなんです。ダイオードを入れていた技術者の方々には本当に頭が上がらないなと思っています。