JAXAタウンミーティング

第3回:日本女子大学 2004年12月12日開催
テーマ2 日本が宇宙開発に貢献できることは何か


参加者A:一庶民としての単純な質問ですが、アメリカと日本を比較した場合、アメリカの場合しきりに人工衛星を飛ばしています。たまたま人工衛星の打ち上げ失敗が起きた場合に、宇宙飛行船を打ち上げるのは人工衛星よりもたいへんなことなのではないでしょうか。なぜその中で日本が人工衛星の打ち上げに失敗するのか。技術的な問題なのか、国家政策の問題なのか、経済政策の問題なのか。単純に考えて、日本は物作りには勝れた国だと思っていますが、日本が宇宙飛行船を作ったときにうまく飛ばせるのかどうかが心配です。


的川:軌道の投入失敗というのは純粋に技術的な問題です。反省するさいに精神的な反省はもちろん、技術的な反省は必ず必要です。私自身宇宙研へいたときに、日本のロケットの軌道投入成功率はほぼ90%。ロシアとアメリカとほぼ同じです。それも、H-IIの連続事故のときにそうなりました。自分の足でしっかりと自立した宇宙開発をはじめようとしたときに起きた事件であって、日本の宇宙開発が他国に対して劣っているということはなく、まったく遜色ないと思います。居直りのように思われるかもしれませんが、我々がJAXAという一体となった組織で作り上げなければいけないのは、私たちは1つのロケットを9機以上打ち上げたことはありませんが、外国では何機も打ち上げて信頼性を重ねているのです。日本もそういう方向を目指していかなければならないのではないでしょうか。1つのロケットを、多少ローテクになりながらも、しっかりと育て上げていけば、世界第一級のロケットを作れるのではないでしょうか。


参加者A:あとは、国家予算でできるだけ成功率の高い打ち上げに取り組んでほしいです。


的川:日本人が能力的に劣っているかどうかという話はよく新聞などに出ていますが、世界中でみてみると実はIT時代の世界共通の悩みなのです。日本としてそれをどのように乗り切っていくかが重要。宇宙教育は宇宙で将来私たちが目指していくときに、一緒に考えていきたいというメッセージなのです。


参加者B:術の向上で事故というのは必ず付きものとは言ってしまうとよくないかもしれませんが事実です。その中でどうしていくべきかといえば、その中でリスクの対策も同時に考えていくべきであるというのが建設的なのではないでしょうか。ロケットや宇宙開発については素人ですが、ロケットや宇宙ステーションはハードウェアで、日本が貢献できるということとすれば、ソフトな部分になるのではないかという気がします。その部分で特に日本らしい技術が出せるのではないでしょうか。その1つに、日本はロボットが非常に優れているということがあります。もし自分が長期宇宙滞在するときにはどんなロボットが欲しいと思うのでしょうか。


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土井:宇宙空間で仕事をするときいちばん難しいのは船外活動です。真空の状況で仕事をするわけです。その中での溶接作業をすると宇宙服に穴が開くかもしれないためにできません。そのため、ボルトでモジュールをくっつけていくのですがそれだと強度が出ません。そのため、ロボットで溶接をしてくれたりするとうれしいです。また、宇宙ステーションが大きくなると、どこかで隕石と衝突すると穴が開くというような問題が起きてきます。そういうことの監視をするロボットが欲しいです。もっと先まで考えれば月や火星に行くことも考えられますが、そのときに先に行って、そこが安全かどうかを確かめてくれるロボットも欲しいですね。人間と同じような技術が欲しいです。


参加者B:もしペットロボットのようなものがあったらどうですか?


土井:率直にいって、ペットロボットはあまり好きではないです。心を通じ合わせるということが非常に大切でしょう。ロボットはもっと進歩して、自分の意志を持つようになればいいのですが、今はコンピュータのプログラムで、犬や猫に似せて作られています。実際ほんとうに会話することができるかというと疑問です。実際の生き物や植物、実際の自然を宇宙空間に再現した方が、宇宙飛行士にとっても安らかな気持ちになれるのではないでしょうか。私は本物の自然のほうがいいです。


樋口:11月中旬にアメリカの新宇宙政策に関する各国への説明会があった際に気づいたことですが、日本人はロボットにとって独特の考え方を持っているようです。ペット化するということは日本人独特であって、欧米だと敵対することを想定した考え方を持っています。人間と同等の考え方を持つというものは日本人独自であって、なぜ「たまごっち」のようなものが出てくるのかということは彼らが非常に興味を持っていました。このような分野は日本人が得意かもしれません。


的川:今、JAXAの探査機が小惑星に向かっています。人間の形はしていないが立派なロボットです。探査機が自分で判断して動いています。無人の探査機はことごとくロボットです。土井さんの意見が宇宙飛行士全ての意見とは限りませんが、どちらかというと「必死で仕事をする」ロボットが求められているようです。ただ、将来宇宙病院のようなものが出てくれば、そこでの看護ロボットなどは必要になるかもしれないですね。


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