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大西宇宙飛行士、こんにちは!(中編)

2015年9月4日(金)

  • プロジェクト
  • 宇宙飛行士
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大西宇宙飛行士、こんにちは!

2015年7月、訓練で日本に一時帰国した大西卓哉宇宙飛行士に、ファン!ファン!JAXA!編集部がお話をききました。
中編では、ソユーズ宇宙船搭乗と国際宇宙ステーション(ISS)滞在に向けた訓練についてうかがいました!

訓練の日々から、ISS長期滞在へ

― 大西さんのGoogle+で医学訓練の様子を紹介されていますね。実験やロボットアームなどの操作だけじゃなく、医学的な機材を使う訓練までするなんて。大変さがすごく伝わってきました。

とても緊張しました!Google+にも書きましたけど、自分の腕から採血するのは、失敗しても自分が痛いだけなので緊張しませんが、人に協力していただいて、その方の採血をするのはすごくプレッシャーでしたね。実際1回失敗してしまい、腕を変えてもう1回やりました。「こんなことまでするの?」という訓練に、日々驚いています(苦笑)。
僕は、自分が感じる驚きをできるだけ発信したいと思っています。宇宙飛行士は格好良い仕事っていうイメージがあるかもしれないけれど、実は本当に地道な訓練や、こんなことまでするの!?ということがいっぱいある。リアルな声を伝えられるよう、自分でGoogle+で発信しています。

― 訓練を通じて、ISSと日常の生活の違いはどういったところだと感じていますか?

一番違うのは、微小重力の状態とどううまく付き合うかですかね。
例えば、ある装置の交換をする時に工具を集めるとします。地上だと工具を手近なところに置き、必要に応じて取り出せばいい。でも宇宙空間って、パッと置いたはしから飛んで行ってしまうので、一つ一つちゃんと固定しなければいけないんです。宇宙空間ならではの事前準備が大事です。確実にしないと、使おうと思った時に工具が見当たらない、探したら空気を循環させる換気口に行き着いている、といったような、ことがあり得ます。教官にも気をつけるようによく言われます。
また、地上では当たり前に存在している空気循環を、宇宙空間では人工的に維持する必要があります。これも重要な違いです。もし宇宙飛行士が呼吸している場に空気の循環がないと、口の周りに二酸化炭素が溜まり酸素がなくなって、極端にいうと二酸化炭素中毒になっちゃいます。

ISS長期滞在中の若田宇宙飛行士。様々な道具が青い面ファスナーで固定されている。(写真:NASA 2014年撮影)

空気の循環がないと煙も移動せず、煙探知機もちゃんと働かなくなったりします。そういうことを防ぐためにも空気循環は大事。
地上の暮らしでは当たり前の恩恵が、宇宙では受けられない、というのはとても大きいです。宇宙空間ならではの生活環境の違いに直面するのでしょうね。

― さまざまな宇宙実験の訓練もありますね。世界の研究者が、本当は自分が宇宙に行ってしたいことを大西さんに託す形になりますが、どのような心構えがありますか?

やっぱり地上とのコミュニケーションが大事だと思います。疑問点があったら、必ず地上に確認するべきですね。
また、どうしても人間でないとできないことをするのが宇宙飛行士の役目で、重要な作業が多いんですよね。たとえば実験サンプルの交換作業。地上の研究者が何年もかけて準備してこられた実験を、自分の操作ミス一つで台無しにしてしまうかもしれない。手順書を確実にしっかりと読み込んで、何回も訓練した作業でも必ず手順書に従って実施する、そういった慎重さが求められると思います。

細胞実験ラック(SAIBO-Rack)の訓練を受ける大西宇宙飛行士

― そうなんですね!これから大西さんがISSへ行くに当たり、今ISSにいる油井さんが帰ったら、どんなことを聞きたいですか?

オフの場で聞きたいことがたくさんありますね~。どんな仕事でも、なかなか人前で言えない経験や教訓があると思うので、二人で会ったら聞いてみたいです。

少し話がそれますが、パイロットの世界って情報交換がすごく重要視されています。人命を背負っているので、安全を守ることが一番の使命で、そこに個人の優劣はないんです。パイロットの訓練をしていた時も、同期の間で情報交換をするように強く言われました。例えば2つのチームに分かれて順番に試験があって、最初のチームがミスをしながらも合格したとします。その後に次のチームが試験で同じミスをしたら、責められるのは先に試験を受けたチームなんです。「どうして、お前たちは自分が失敗したのにその情報を次に同じ試験受ける連中に伝えなかったんだ」と指摘される。
チーム間で優劣を競うなら、先のチームは自分たちの失敗を後のチームに伝えない方が有利だけど、そうではありません。僕はそういう価値観をパイロットの職で身につけていて、同じパイロット出身の油井さんも身につけていらっしゃると思います。

ソユーズ宇宙船とソコル宇宙服の“ビックリ”

― パイロットといえば、油井さんも大西さんも、ソユーズ宇宙船のレフトシーターとして船長を補佐する役割に任命されていますね。パイロットのご経験が生かされるシーンはありますか?

ソユーズのシミュレーション訓練を行う大西、イヴァニシン、ルビンズ宇宙飛行士

ソユーズ宇宙船を操縦するのはロシア人のコマンダー(船長)で、その人を補佐するのがレフトシーターとしての僕の役割になります。僕が旅客機のパイロットだった時は副操縦士といって、コックピットに2人で座って機長を補佐する役割を務めていました。レフトシーターと同じですね。
補佐といっても役割はものすごく幅広く、コマンダーの指示通りに宇宙船の操作をするのも大事ですが、もっと重要なのは不測の事態が起きてコマンダーが職務を遂行できなくなった時に宇宙船を操縦して、ISSにドッキングする、地球に帰還するといった任務を成功させることです。その技術をレフトシーターは持っていないといけないんですね。それゆえ求められる操縦技術や知識というのは非常に高いレベルを求められます。そういった意味では、旅客機の機長―副操縦士と全く同じ関係です。すごくやりがいがありますね。

― 大西さんが前職で乗っていた旅客機とソユーズ宇宙船との間に、共通点または違いはありますか?

安全に対する設計思想…つまり何か壊れても必ずバックアップ機能があるという点は、旅客機も宇宙船も共通ですね。特に致命的な部分、例えば、電源系や熱制御に関する部分は多重にバックアップされています。
違う点は、旅客機は離陸から着陸まで同じ機体のコンフィギュレーション(機器構成)で飛行するんですが、ソユーズ宇宙船は最初はフル装備でも、打ち上げから帰還に至るフェーズに従って、要らなくなったパーツをどんどん捨てて身軽にしていくところですね。使い捨ては宇宙船ならではの思想といった感じがしますね。
たとえば最後の地球帰還フェーズでは、大気圏に突入する時に居住モジュールですら切り離して、小さいカプセルだけになります。カプセルはヒートシールドといって、熱に耐えられるように鍋の底みたいな所が厚くなっているんですね。それすらも、大気圏に突入して一番熱的に厳しい所を抜けたら捨てちゃう。

ソユーズ宇宙船に搭乗中に着るソコル宇宙服(レプリカ)と大西宇宙飛行士。

― 大西さんのGoogle+の記事にソコル宇宙服の着方の解説がありますね。読んで驚きました。
こちらにソコル宇宙服のレプリカがありますが、改めて解説してもらえませんか?

そうですね。ここ…胸のチャックを開くと中が風船の端みたいになっていて、そこから自分の体を入れ、引っ張って全身を通します。すると、ちょうどこのへん…お腹のところで、まるでゴム風船が口をあけているような状態になる。最後はそれをギュギュギュと絞って、紐でグルグル巻きにして結んで終わりなんですよ。本当に風船の口を絞るような状態です。
風船の口を絞るところは、みんな一生懸命。ちゃんと巻いてないと、打ち上げ前に必ず実施するリークチェック(※)で引っ掛かってしまうんですよ。宇宙服を着て、ソユーズ宇宙船に乗り込んで、いろいろ操作をした挙句、実はちゃんと結べてなかったです!…となったら宇宙船を降りて宇宙服を脱がないとならない。えらいことなので、かなり真剣です。

でも、この方法は当然、完全な気密性はないんですよ~。風船と同じように、ソコル宇宙服の内部の空気はゆっくりと漏れてしまうんです。でも、漏れる量はかなり少ないので、ソユーズ宇宙船が地上へ帰還するまでの2時間ほどなら人間の生命を維持できますよ、というシステムなんです。衝撃的ですよね!

※わざと宇宙服を膨らませて、気圧が抜けていく量が規定値以内かどうか調べる。

― 私もGoogle+を拝見した時は驚きました。「信じられない!」って。

宇宙服って「バチン、バチン」と金具を付けてきっちり締めるようなイメージがあったので、ソコル宇宙服を最初に着た時は、「えっ、本当にこれだけで大丈夫なの?」と思いました。 ロシアは、信頼性が高ければシンプルな方法でいい、無駄な所に余計なお金や手間を掛けない。すごいなあ、と思いますね。

― なるほど…。ところで宇宙服の、ゴムのような素材の中は暑くないんですか?

ものすごく暑いです!
打ち上げ直前の映像をご覧いただくと、ソコル宇宙服を着ている宇宙飛行士は宇宙船に乗り込むまでの間、お弁当箱みたいなものを持って歩いているのがわかります。その箱にはファン(換気扇)が入ってて宇宙服につながっており、地上を歩いているときでも宇宙服内部の空気を循環させているんですよ。人間の体って、完全に密閉された状態になると、びっくりするぐらい暑くなるので。また宇宙船の座席に座ったら真っ先にすることは、宇宙船内の空調管理システムに接続して換気の流れを切り替えることなんです。
あと、万が一ソユーズ宇宙船の船内で火災が起こったら、まず最初に換気スイッチをバンと消すんです。煙が宇宙服の中に入ってくると一巻の終わりなので。でもそうすると、その瞬間からソコル宇宙服の中の空気循環が全部止まり、ものすごく暑くなります。この状態で作業できるのは90分ほどです。空調を止めた後の暑さに耐えられる、限界の時間なんですよね。訓練でも実際に換気を止めて作業しますが、30分…60分…と経って訓練が終わった頃には、クルーはみな汗びっしょりで出てきますよ。

― 私、このレプリカを着てイベントに参加したことがあるんですけども、かなり暑いです。本物よりずっと気密性が低いんですが…。

これ、明らかに換気システムとかついてないですもんね…。

 

いよいよ後編に続く!

宇宙では換気がとても重要なんだと改めてわかりました!
油井さんとパイロット同士ならではの話もとても興味津々です

紐でグルグル巻きにして結ぶ。シンプルな構造は壊れにくい。
それに個人の体型に柔軟に対応できそう。
そうやってロシアは何十人もの宇宙飛行士を送り出し、
そして帰還させてきたんですね。すごい!

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