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1年間の宇宙滞在と双子の宇宙飛行士の深い関係

2015年6月4日(木)

  • 海外
  • 宇宙飛行士
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2015年3月28日、ゲナディ・パダルカ、スコット・ケリー、ミカエル・コニエンコの3人の宇宙飛行士を乗せたソユーズTMA-16M(42S)がカザフスタンのバイコヌール宇宙基地より打ち上げられ、同日に国際宇宙ステーション(ISS)に到着しました。ゲナディ・パダルカ宇宙飛行士は約半年、スコット・ケリー、ミカエル・コニエンコ両宇宙飛行士は約1年間にわたってISSに滞在します。

ISSに宇宙飛行士が1年に渡って滞在するのは初めてのこと。通常は約半年で交代します。かつてソビエト連邦の宇宙ステーション「ミール」では400日を超える長期間に渡るミッションが行われていましたが、ISSでこうしたミッションが行われるのは初めてです。1年間に渡る滞在中、宇宙に長期間にわたって滞在することが、人間の体や行動にどのような影響をあたえるのかについての様々な研究が行われることになっています。

写真右:ISSに向かう第43次長期滞在クルー。上から、ミカエル・コニエンコ、スコット・ケリー、ゲナディ・パダルカ(NASA/Bill Ingalls)

1年にわたってISSに滞在するスコット・ケリー(左)、ミカエル・コニエンコ(右)宇宙飛行士(NASA/Bill Stafford)

地上と宇宙で最も大きな違いは重力がないことです。私たちは普段、地球の重力のもとで、常に地面に向かって引っ張られながら暮らしています。それがない宇宙では体に様々な変化が起きます。たとえば、血液の動き。私たちの体は重力に逆らって血を送らなければならない上半身により強く血を送り込む性質があります。無重力ではこの性質により、より多くの体液が上半身に集まることが知られています。あるいは骨や筋肉。私たちの骨や筋肉は重力に逆らって体を支えたり動かしたりしていますが、宇宙ではその負荷がなくなり、骨からカルシウム分が抜けてしまったり、筋肉量が減ってしまうことが分かっています。

他にも、簡単に外にでることもできませんから、かなり限られたスペースだけで過ごすことになります。日の出と日の入りが1日に16回繰り返されますから、太陽の動きと1日の長さが一致しなくなります。また、ISSでは地上に比べて宇宙放射線の量も多くなります。こうした地上との違いが、人間の体や行動にどのような影響をあたえるのかは、これまでISSでも様々な実験が行われてきました。こうした分野は宇宙医学と呼ばれ、宇宙だけでなく地上でも製薬や骨粗しょう症の治療などに役立てられようとしています。

今回の1年間の滞在では、より長期間にわたってこうした変化を調べることで、より詳細で広範囲に渡る研究を行うことが期待されています。 また、1年間という期間は火星や小惑星への有人ミッションに必要な期間に相当します。その意味では、将来人類がより遠い宇宙へ出かけていくために必要な準備といえるかもしれませんね。

さて、ここでちょっと注目したいのが、1年間滞在する2人のうちの一人、スコット・ケリー宇宙飛行士です。実は彼には双子の兄弟がいます。彼の兄弟、マーク・ケリーさんは元宇宙飛行士。まさしく「宇宙兄弟」ですね。マークさんはもうNASAを引退されていますが、スペースシャトルで4回のフライトを行ったベテランです。STS-124では星出宇宙飛行士とも一緒になりました。

「きぼう」船内実験室にて、記念撮影するSTS-124クルー

マーク・ケリー元宇宙飛行士(左)、スコット・ケリー宇宙飛行士(右)(NASA/Robert Markowitz)

スコット・ケリー宇宙飛行士が宇宙に行くその日、地上に残るマーク・ケリー元宇宙飛行士はちょっとしたイタズラを周りの人に仕掛けたそうです。マークさんはずっと髭がトレードマークでしたが、その朝に限って綺麗にそれを剃り落としてスタッフの前に現れました。打ち上げの準備に入っているはずのスコットがなんでこんなところにいるんだ!?周りはびっくり。NASA長官も心臓が飛び出すぐらいびっくりしたとのこと。なんとお茶目な…… 。

さて、実は地上に残るマーク・ケリーさんもこの1年間の長期滞在ミッションに協力します。2人はイタズラで入れ代わって周りを騙せるくらいそっくりです。なにしろ双子ですから、体格も体質もほとんど同じ。その片方が宇宙で1年間過ごし、もう片方は地上にとどまる。こんなチャンスはめったにありません。というわけで、NASAは引退したマークさんにミッションへの協力を依頼しました。ご本人は「スコットのお陰でこんな所に引っ張りだされちゃったよ」なんて冗談を言っていましたが…… 。

1年間にわたって、スコット・ケリー宇宙飛行士が宇宙医学に関する様々な実験を行う上で、マーク・ケリー元宇宙飛行士は貴重な比較データを提供することになります。たとえばDNA。2人は殆ど同じDNAを持っていますから、宇宙にいったスコット・ケリー宇宙飛行士と地上にいるマーク・ケリー元宇宙飛行士を比べると、その変化がよくわかります。あるいは地上に戻ってくると元に戻ってしまうような短期的な変化も、地上と宇宙で同時に調べれば分かることがあるかもしれません。実際に2人にワクチンを注射して免疫反応の違いを調べたり、視力に変化が出ないかなどの実験が行われることになっています。

そうそう、おちゃめな二人のこと、もしかしたら、また何かおもしろいことをやってくれるかもしれませんね。

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コメント
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双子ならではの、比較実験、とっても興味があります!宇宙医学の進歩から、何が発見されるのか楽しみです!

ハッハッハ!確かに、米国人ならそういう(本文にもあるような)お茶目な冗談を仕掛けそうですね。
私は、光速に近い宇宙旅行で生ずる、アインシュタインの相対性理論に基づく「双子のパラドックス」をこの画像を見て即座に連想しました。逆に、メーキャップで地上に残るマーク=ケリーさんがおじいちゃんの姿で登場して地上帰還したスコット=ケリーさんを出迎える…、そういうイタズラも実行しそうですね。

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