宇宙飛行士たちが見る星空

2014年5月21日(水)

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息を呑むほど美しい国際宇宙ステーションから見たオーロラの映像。普通ならここでオーロラについての説明をひと通りするところですが、あえて違う話をしてみましょう。実はこの動画、とても面白い場面が写っているんです。
ついオーロラに目を奪われそうですが、ちょっと背景の星の動きに注目してみて下さい。地平線の向こうから星が登ってくるのが見えるでしょうか?そしてそれにぴったり合わせるように太陽電池パネルが回転しています。面白い動きですよね。実はこの動きに国際宇宙ステーションの姿勢の秘密が隠れているんです。

国際宇宙ステーションは、常に一方向を地球に向け、約90分で地球を一周しています。キューポラという大きな出窓から撮影された地球の映像を見た人も多いでしょう。あちら側が地球側です。国際宇宙ステーションには通信装置や地表を観測するための様々な装置がとりつけられていますが、当然ながらみんな地球側を向いています。









でも、ただ宇宙ステーションを軌道上に浮かべておくだけでは宇宙ステーションは地球の方を向いてくれません。私たちは普段重力があるお陰で常に足のほうを地面に向けていることができます。しかし軌道上を周回している宇宙ステーションは無重力状態になっています。何もせずにいると、宇宙ステーションは地球に対してこんな動きかたをします。


もしこの動きを宇宙ステーションから見ると、太陽や星は常に一方向に見えていて、地球が自分の周りを90分で一周しているようにみえるでしょう。これでは、通信や地表の観測に支障が出ます。たとえば、キューポラから地球が見えるのは90分のうち限られた時間だけ、という事になってしまいます。しかも太陽がずっと一方向から当たるので、片方ばかりが熱くなってしまいます。これじゃあちょっと困りますね。ではどうすればいいでしょうか?そう、この動きを打ち消すように宇宙ステーションを回転させてあげればいいんです。

実は、国際宇宙ステーションは太陽から見ると進行方向に向かって、90分で1回、でんぐり返りをするように自転しているんです。こうすれば、宇宙ステーションは一方向を常に地球に向けていてくれます(この姿勢のことを専門用語でLVLH姿勢といいます。逆に太陽に対して固定した姿勢はXPOP姿勢といいます)。ちなみに、これは月が常に同じ方向を地球に向けているのと同じ理屈。月は約27日で地球の周りを1周していますが、同時に27日周期で1回転しているんです。さあ、これで万事解決... とはいきません。

こうすると、ひとつ困ったことが起きます。この姿勢だと、宇宙ステーションからは常に地球が一方向に見えていますが、今度は太陽や星が90分で宇宙ステーションの周りを一周することになります。これでは太陽電池パネルに太陽の光がうまくあたってくれません。さて、どうしたらいいでしょうか?簡単ですよね。太陽電池パネルを90分に1回、太陽の動きに合わせて回してあげればいいんです。こんな感じ。


さて、もういちど最初の動画を見ましょう。地球は常に同じ方向にみえていて、星が進行方向から昇ってきます。そしてそれにぴったり合わせるように太陽電池パネルが回転しています。この動きは、宇宙ステーションの姿勢を反映したものなんです。

これを、静止画にするとこんな感じになります。
なんて美しい! これは、国際宇宙ステーションが地球の夜の側を通っている時にカメラのシャッターを長時間開けっ放しにして撮影したもの(正確に言えばそのような状態になるように複数の写真を合成したもの)。地球は常に位置を変えずに同じ場所にあります。星や太陽は宇宙ステーションが回転するのに合わせて空を90分で一周します。これが宇宙飛行士たちが宇宙ステーションの窓から見ている星の動きです。


(画像提供/出典:NASA)