筑波宇宙センター、3年ぶりに特別公開
テーマは「50年の感謝と技術、未来へ!」
筑波宇宙センター、3年ぶりに特別公開
2022年11月12日、JAXAは3年ぶりに筑波宇宙センターを一般に公開した。
1972年の開設から今年で50周年を迎えた筑波宇宙センター。
公開当日は、50周年にちなんだ展示や宇宙飛行士による講演などが実施され、
多くの来場者が、この日かぎりの特別なイベントを楽しんだ。
普段は入ることのできない場所も、この日ばかりは特別に公開
コロナ禍により2年連続で開催中止となっていた筑波宇宙センターの特別公開を、今年は事前申し込みによって来場者数を制限して開催。例年1万人超が来場するだけに今回も多くの申し込みがあり、当日は、当選した約5000人が参加した。
この日は、約53万平方メートルある筑波宇宙センターの敷地を4エリアに分けて、各所でイベントを実施。50ほどあるイベントから、来場者たちは参加したいものを選んで各会場に向かった。
人気のイベントでは、事前申し込みや整理券が必要なものもあり、先着順のイベントは早々に「満員御礼!」の貼り紙が出ていた。
衛星と同じ観測装置を使った航空機から大気観測をリアルに体験できる「空飛ぶ観測所:つくばに着陸!?」や、「衛星画像でJAXA職員のお仕事体験!」など、子どもたちが参加できるイベントも数多く用意され、会場は賑わっていた。また、実際に研究が行われている建物内でのイベントや、建物内の設備や空間そのものを見学できることが嬉しいとの声もあがっていた。
50周年にちなんだ記念展示や、管制室の特別公開
筑波宇宙センターの50周年を記念したイベントも各所で開かれた。そのひとつである「50年の感謝と技術、未来へ!」では、筑波宇宙センターの50年のあゆみを写真や資料などで展示紹介。展示に合わせて「センター内には電線が見当たりませんが、電気はどうしているのでしょう?」などのクイズも実施した。また、「筑波宇宙センター50周年記念旗」に「JAXAへの思い」を自由に寄せ書きできるコーナーもあり、子どもたちが真剣なまなざしでメッセージを書き込んでいた。
そのほかにも、50周年企画として、「筑波宇宙センター50年の歴史模型」や「Kaアンテナツアー ~50周年だから初公開~」などの特別イベントも実施。アンテナツアーでは、宇宙とつながるパラボナアンテナを間近で見られる貴重な機会とあって、多くの関心が集まった。
さらに「今日だけ特別! 追跡中央管制室ツアー」(50周年スペシャルver.)にも長い列ができていた。人工衛星を24時間365日見守り続ける「追跡中央管制室」を実際に見られるとあって、子どもも大人も真剣な顔でスタッフの解説に聞き入る。そしていよいよ、ガラス越しに中央管制室が見学できる部屋に入ると、マスクの下から「おお」と控えめな歓声が。多くの人が管制室に並ぶモニターや、電光掲示板に表示される数字などに真剣な眼差しを向けていた。
有人宇宙活動を体験
有人宇宙活動を紹介するエリアでは「『きぼう』運用管制官 模擬体験コーナー」のほか、宇宙ステーションに物資を運ぶ補給機(HTV-X)や宇宙ステーションとの自動ドッキング技術実証について体験を交えながら紹介する「『HTV-X』『ドッキング実証』紹介」コーナーが人気を集めていた。
このコーナーで実施されたゲーム「HTV-X GO!」は、補給機を宇宙ステーションに接近させ、宇宙ステーションのロボットアームでキャプチャ(捕獲)するまでのテクニックを競うもの。担当していたスタッフに話を聞いたところ「このゲームは職員の完全オリジナルなんです!」と語り、「ゲームを通して、宇宙や宇宙技術に興味を持ってくれる人が増えると良いなとのモチベーションで取り組んだ、自作プログラムのゲームです。単なるゲームに留まらず、実際の宇宙船の運用にも活用できるようなツール作りにも繋げていくつもりです」と続けた。
その他にも、月を探査するローバ(LUPEX)、宇宙から帰還した実際の小型回収カプセル(HSRC)など、たくさんの展示、体験コーナーがあった。
金井宣茂宇宙飛行士の講演も
当日は、金井宣茂宇宙飛行士による講演も行われた。テーマは「有人宇宙活動30周年企画~これからの有人宇宙活動や探査について考えよう~」だ。
講演では、今後の宇宙活動は、月を周回する有人拠点「ゲートウェイ」、アメリカが提案する有人月探査プログラム「アルテミス計画」など、国際宇宙ステーションから月へと広がることを語った。
後半の質問タイムでは、多くの子たちから相次いで質問があがった。「宇宙で見る夢と、地球で見る夢はちがっているのですか?」という質問に、金井宇宙飛行士は「宇宙に行って、3カ月くらい経つと無重力の夢を見るようになりました。体がふわふわ浮いているような夢です。地球に戻って1カ月くらい経ったら、また重力のある夢に戻りましたね」と回答。
その他にも、「宇宙食の中で何が一番美味しかったですか?」という質問に対しては「日本食はもちろん美味しいし、その他の宇宙食も美味しかったです。でも長く食べていると飽きてしまって。結局、クルー皆でいろいろな宇宙食を持ちよって作る『創作宇宙食』が一番美味しかったように思います」と答え、会場からは笑い声が上がった。
「スタイリッシュになってきた宇宙服の着心地は?」という質問には「恰好良くはあるんですが、着ていると暑くなるので、内部に風を送る外部ファンを接続しないといけません。そこは変わらないんですよ」と、答える金井宇宙飛行士。講演の最後には「宇宙で次に何ができるのか、想像力を働かせて日々考えています。大変だけど、楽しい。そんな宇宙開発を、今後一緒にしていく仲間を待っています」と語った。
3年ぶりに開催された筑波宇宙センターの特別な一日。イベント以外でも、宇宙食や宇宙をテーマにしたお菓子、ロケットのグッズなどを販売しているショップには、今日の思い出にと買い物を楽しむ人の姿があり、また、屋外の休憩所では宇宙グッズを持って、はしゃぐ子どもたちの姿もあった。
幅広い世代が宇宙の魅力に触れ、宇宙を身近に感じた特別公開。多くの人の心に残る一日となったはずだ。
取材・文:笠井美春
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