授業ですぐに使える「宇宙で授業パッケージ」 WEBにて公開中

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教育関係者必見

授業ですぐに使える「宇宙で授業パッケージ」
WEBにて公開中

宇宙教育センターでは、学校の授業で使用できる「宇宙で授業パッケージ」を開発しWEBにて公開している。
学校現場で宇宙や空を素材とした授業が自主的、自立的に実践されることを目指し制作した本パッケージ。
開発を担当した高村苑実が語る。

宇宙を使って学ぶ、「宇宙で授業パッケージ」

2022年4月、宇宙教育センターのホームページにて、「宇宙で授業パッケージ」の第二弾が公開された。動画や授業で使用する資料(PPTスライドなど)、児童・生徒が使用するワークシートに加え、先生用の学習指導案がセットとなったこのパッケージ。現在(2022年6月)は、小中学生向けの7つのコンテンツを公開している。

「『宇宙で授業パッケージ』開発のきっかけは、コロナ禍で以前から行ってきた学校教育支援活動が実施できなくなったことです。これまでは対面で宇宙教育に関する教員研修などを実施していたのですが、それも難しくなってしまいました。また、GIGAスクール構想(文部科学省による全国の児童・生徒へ一人一台端末と高速大容量通信ネットワークを整備する取り組み)の前倒しにより学校現場でのICT環境の整備が急速に進んだこともきっかけの1つです。教育の手法や在り方の変化に適応した教材の提供をすることが、コロナ禍における新たな学校教育支援の形だと考えました」

2020年度から積極的にICTの活用を始めていた宇宙教育センターは、約1年をかけて「宇宙で授業パッケージ」を開発、制作した。現在のラインナップは、国語・算数・理科・社会・生活・図工。さらに『宇宙飛行士に必要な能力は?-これからの目標をたてよう-』という特別活動用のコンテンツも公開中だ。これらのコンテンツの特徴はふたつ。そのひとつは、「宇宙=理科」だけではないことだと、高村は語る。

『宇宙飛行士に必要な能力は?-これからの目標をたてよう-』のサムネイル
『宇宙飛行士に必要な能力は?-これからの目標をたてよう-』のサムネイル

例えば各コンテンツは「宇宙のことを学ぶ内容」ではなく「宇宙を使って学ぶ内容」になっている。『宇宙の身長って何だろう?-小数のかけ算・わり算-』というように、宇宙をキーに各教科の学びを深める内容なのだ。「宇宙のことを学ぶ内容」にしていない理由について、高村は「宇宙教育センターの理念に基づいているので、珍しいことではありません」と話す。

「宇宙教育センターは『宇宙を素材に、いのちの大切さを基盤として、好奇心、冒険心、匠の心を持った子供たちを育てていく』という理念のもと『宇宙が子どもたちの心に火をつける』をモットーとしています。いつの時代も、宇宙の謎は人々の好奇心をくすぐります。宇宙を素材にすることで、子ども達にも興味を持ってもらい、学ぶ意欲を引き出すことができればと考えています。

宇宙=理科というイメージが強いかもしれませんが、宇宙は研究開発だけでなく地球全体のこと、教材にもあるように林業やSDGsなどの幅広い産業や社会全体と関わっています。授業を受けることで子どもたちがそのことに触れ、宇宙を身近に感じてくれればうれしいですね」

学習指導案をセットに

また、このパッケージのふたつ目の特徴は、普段の授業に取り入れやすい形を目指したことだ。これまで宇宙教育センターは、教員研修などを通して「宇宙教育を実践してみたいけど、専門知識がない......」「準備の時間も、授業時間も足りない......」という先生方の声を聞いてきた。だからこそ、この開発においては、徹底して教育現場での使い勝手の良さ、すなわち、無理なく授業に取り入れられる教材として提供することを目指したという。

『宇宙飛行士に必要な能力は?-これからの目標をたてよう』の教材を使用した授業の様子
『宇宙飛行士に必要な能力は?-これからの目標をたてよう-』の教材を使用した授業の様子

「JAXAから発信する教材として、たくさんの先生方に使いたい、使いやすいと思っていただける教材にしたいと考えていました。そこで、動画や授業で使用する資料のほかに、先生方が普段から授業づくりで使用するという学習指導案(授業の設計図)をセットにしました。さらに指導案の内容などについては、相模原市教育委員会にチェック・指導をいただき、現場で活用しやすい内容に仕上げていきました。また授業の中で、スライドだけを使用したい、動画だけを使用したいなどの要望にも応えられるよう、さまざまな使われ方を想定した内容になっています」

開発の過程で、「学校の先生とは、教育分野のプロフェッショナルであり、専門職なのだ」と改めて実感したという高村。学生時代には気楽な気持ちで受けていた授業も、先生の緻密な計画のもとに成り立っていた。

「先生方は文部科学省が定める学習指導要領に沿って、年間を通して、何時間を、どのような『ねらい』を持って子どもたちと過ごすかを計画されています。だからこそ、このパッケージも学習指導要領に沿った『ねらい』に、いかにして導くことができるかを考えて開発しました。ポイントは、セットになっている学習指導案。ぜひたくさんの先生にご活用いただきたいです」

ALL JAXAで制作したコンテンツ

開発においては、さまざまな部署の協力を得て、JAXAならではの質の高いコンテンツをめざしたと、高村は語る。例えば小学校6年生向けの国語、『JAXAが取り組んでいるSDGs-提案する文章を書こう-』では、全国にあるJAXAの建物や機械の設備・改修などを行う施設部の協力を得て開発した。

「提案文を書こうという単元では、きっかけとなった経験、現状の問題点、提案理由、提案実現後のビジョンを語ることで、説得力のある提案文が作成できることなどを学びます。そこで施設部の『種子島宇宙センターでの停電の経験をきっかけに、二酸化炭素を増やさない仕組みの電力システムをつくることを提案する』という提案文を例文に使いました。具体的な経験からの提案であり、『世界一スマートな発射場をめざす』というビジョンも明確でわかりやすく、国語教材としての質がとても高いものでした。また、『社会で行われている資源や環境を守る活動を提案文で読むことで、自分たちも提案文を書きたいという思いを高める』という授業のねらいにも合致しています」と高村。

『JAXAが取り組んでいるSDGs-提案する文章を書こう-』のサムネイル
『JAXAが取り組んでいるSDGs-提案する文章を書こう-』のサムネイル

「今回のパッケージの開発はALL JAXAで取り組みました。今後は、先生方の反応や声を反映しつつ、本教材の改良に活かすとともに、子どもたちが自ら学ぶ力を育むための学習機会の提供に取り組んでいきたいですね。また、学校だけでなく、家庭などでも楽しんでいただけるとうれしいです。 宇宙に関しては、まだまだ解明されていないことも多いですし、実際宇宙へ行ったことのある人もごく僅かです。ほかの分野であれば、大人の方が子どもよりも知識や経験が豊富なことも多いものですが、宇宙という分野において、大人も子どもも『分からない』し、『行ったことがない』んです。だからこそ、大人と子どもが同じ目線に立って学ぶことができる。それも宇宙教育の魅力のひとつです」

「宇宙で授業パッケージ」では、教材へのご意見・ご感想を募集しています。
こちら
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Profile

高村苑実

宇宙教育センター
学校教育支援担当
高村苑実

東京都出身。 第一宇宙技術部門の広報を経て現職。趣味はゲーム、eスポーツ。eスポーツ世界大会を観戦してから一層魅せられ、いつか出場できる日を夢見て現在修業中。

取材・文:笠井美春

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