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宇宙実験室 12 - 瓶の中に地球を作る! ボトルアクアリウムを作ってみる

今回は瓶を使った小型の水槽、ボトルアクアリウムを作ってみます。実はこのボトルアクアリウム、宇宙とちょっと関係があるんです!

ボトルアクアリウムって何?

通常水槽の環境を維持するためには、ろ過器とも呼ばれるフィルタやポンプを使って、水を循環させてきれいにしたり、水の中に酸素を送り込んだりする必要があります。
でも、水槽の中の生態系のバランスをうまく保ってあげると、こうした機器なしで水槽の環境を保つことができるんです(この方法をバランスドアクアリウムと呼びます)。

たとえば、水槽の中に、魚と水草、プランクトンとバクテリアがいるとしましょう。魚はプランクトンを餌にしてフンなどの老廃物を出します。また呼吸のために酸素を吸収して二酸化炭素を出します。魚の出した老廃物はバクテリアによって分解され、水草の肥料やプランクトンの餌になります。水草は太陽の光で光合成を行い、二酸化炭素を吸収して酸素を出します。なんとなくぐるぐる回っている気がしませんか?

このように、水槽内で酸素と二酸化炭素、栄養物などを循環させることで水槽内の環境が維持されます。
この環境バランスをボトルの中で保たせたものをボトルアクアリウムと呼びます。しかも今回は瓶のふたを閉め、完全に閉鎖環境にしたボトルアクアリウム作りに挑戦しました!

では、なんで宇宙とちょっと関係あるのかというと、国際宇宙ステーション(ISS)には、常時宇宙飛行士がいますが、彼らが吸う空気(酸素)や飲む水、活動するために摂る食料は地球から「こうのとり」などの輸送機を使って補給しています。また、酸素や水は補給するだけではなく、ISS内で空気中から採取した水を電気分解して発生させたり、尿をろ過したり、可能な限りリサイクルしています。 そして、外部からはしっかりと仕切られていて温度や湿度も人工的にたもたれています。そうです、ISSは閉鎖環境なのです!

将来、月面や火星や小惑星などで滞在を行うとしたら、年単位の期間になります。数年分の酸素や食料などはものすごい量になり、一回で持ち運ぶのはとても効率が悪く現実的ではありません。また、ISSと違ってとても遠いので、定期便で物資を送るのは現在の技術ではもっと非効率で現実的ではありません。 ですから、最低限の物資以外は徹底的に循環させるとともに、滞在先で作り出す必要があります。 もちろん、食べ物も循環させて作ったほうがいいです。(いまISSでは野菜を育てて食べる実験がはじまったばかりです。)、食べ物を作るのに必要な肥料は、人の排泄物からつくることも検討されています。

そんな将来を視野に入れ、人間が閉鎖された環境で自給自足していくための実験が国内外で様々な形で行われています。 ね、ボトルアクアリウムとにていませんか?

用意するもの

用意したのはこれ!

用意するもの - 魚、水草、ペットボトル、水、土

・魚(2匹)
今回は完全な閉鎖環境を目指したので、小型で環境の変化に強い、アカヒレ(コッピー)と呼ばれるメダカに似た魚を使いました。生態系のバランスだけで環境を維持するため、あまりたくさんは入れられません。2Lくらいの瓶であれば、小型の魚やエビなど2-3匹というところです。

・水草
ボトルアクアリウムの主役の一つ。水槽の中の二酸化炭素を吸収し、酸素を作る役目をします。他にも水を浄化したり、魚の隠れ家になったりと、なくてはならない存在です。

・透明なビン
1リットル以上入る大きめのビンを用意します。本当はなるべく横に広いほうがいいのですが、今回は手に入れやすい大きめのペットボトルを使いました。果実酒用の広口で大容量の容器などがお勧めです。

・水
水道の水にはカルキが含まれているため、そのままでは使えません。汲んだ水を容器に入れて1日以上置きカルキを抜いてから使います。あるいは、熱帯魚店などで入手できる塩素中和剤(カルキ抜き剤)を使ってもいいでしょう。また、近くにきれいで魚がたくさん生息しているような川や池があったら、その水も可能です。

・底土(底材)
バクテリアの住処になる隠れた主役。すでにバクテリアが豊富にいる魚が沢山生息しているきれいな川や池、沼などから土を採取(※)してくるか、熱帯魚店などで市販されている水槽用の土(ソイル)や、多孔質のセラミックを使います。砂は素材によって水質に影響が出る場合があるので、注意しましょう。なお、フィルタに使用する多孔質のろ過材や、スポンジなどを代わりに入れたりして、工夫しても面白いかもしれません。
※自然環境のものを採取して使用する場合、他の生体が混入する可能性があります。

つくってみよう

今回は、事前に別の水槽で魚をしばらく飼い、その水と土を使いました。こうすることでバクテリアが安定して生息していて、環境の変化が少ないものが作れます。また、魚にも負担が少なくなります。

1. 瓶の底に土を入れよう。
あまり少ないとバクテリアが育たないのでたっぷり目に入れます。でも、入れ過ぎると逆に水の量が少なくなるので、多くても5分の1程度にしましょう。容器ごとに違う底材を変えてみて、どうなるか試してみるのも面白いでしょう。


2. 水をゆっくり注ぎます。
水流で土に穴があかないように、こぼさないように、なるべく水が濁らないようにそーっと入れて…
水槽の水だけだと心もとなかったので、カルキ抜きした水道水を混ぜました。


3. 水草を入れます
ペットボトルは口が細いのでうまく入れるのが大変です。今回は、環境の変化に強い金魚藻、カボンバという水草を入れました。


4. 待ちます
水槽の中が落ち着くまでしばらく待ちましょう。
もし、カルキ抜きの水と購入した土から作る場合には、瓶の容量にもよりますが、中でバクテリアが育つまで最低でも1~2週間待つ必要があります。


5. 魚を入れます
いよいよ主役の登場です。びっくりさせないようにそーっと入れて…口が小さいと魚やエビが傷つく可能性があるので、ご注意ください。

蓋を閉じて完成!

完成!!

水槽は温度変化が少なく風通しのいい、明るいが決して直射日光の当たらない場所に置きます。

ボトルアクアリウムとして楽しむだけならば、蓋を閉じる必要はありません。必要に応じて餌やりをしたり水や底材を定期的に少しずつ交換したりするほうが、安定した環境を比較的簡単に保てます。

さて、実験室のボトルアクアリウム、蓋を閉めて数日後…全滅してしまいました。
ガックシ…どうやら、日中に日差しが当たっていたらしく、水温が上がりすぎたのが原因のようです。

完全な閉鎖環境を維持するって、思った以上に厳しい!

繰り返しになりますが、直射日光が当たる環境においておくと、水温が上がり、魚が弱り、最終的に死んでしまいます(死んでしまいました)。直射日光でなくとも、普通に明るければ水草は光合成するので、日向には絶対に置かないこと。マジ、コレ注意!

環境をかえたものを作りなおして、実験に再挑戦!しています。
経過は次回お伝えします。お楽しみに!

(続き)宇宙実験室 15

宇宙実験室ノート

・生き物を大切に
当然ですが、アクアリウムで扱うのは命です。一度飼い始めたらちゃんと世話をしましょう。

・詳しい人と一緒に
ここではボトルアクアリウムの作り方について最低限の説明しかしていません。水槽の水質の維持や、魚の水へのなじませ方、水草の選び方など、うまく飼うためには細かい知識が必要です。なるべく事前によく下調べをするか、可能ならば熱帯魚などの飼育をやったことがある経験者の助言を得ることをお勧めします。また蓋を閉じてしまう完全閉鎖は難易度が非常に高いので、挑戦する場合は知識のある人や親御さんと一緒に行ってください。

・何度か失敗しました
本文中にある通り、直射日光が当たって水温が上がりすぎてしまい全滅した他、魚の数が多すぎて水の浄化が追いつかず魚が弱らせてしまうなど、宇宙実験室でも何度か失敗してしまいました。蓋を閉めてしまう完全閉鎖に挑戦する場合は、環境準備や緊急時に魚を避難させるための予備の水槽を用意することをおすすめします。

・魚や水草を自然に戻してはいけません
熱帯魚店で買ってきた魚や水草、他の場所で捕まえた魚を、池や川など、自然環境に逃したり、捨てたりするのは 厳禁です。本来その環境にいない生物が入ってくることで、もともとその環境にいた生き物の生活が脅かされることになってしまいます。また、種によっては違法行為となります。始めたら最後まで責任をもって飼いましょう!

参考にさせていただいたサイト
http://www.wikihow.com/Make-a-Closed-Aquatic-Ecosystem
http://bottleaqua.com/
http://www.geocities.jp/westvill/aquarium/coppy/bottle.html
http://okope26.exblog.jp/16219340

[2015.9]