第12回 水星
太陽系の最も内側に位置する水星は、探査機を送り込むための技術的な難易度が高く、1970年代にNASAの探査機「マリナー10号」がフライバイ観測を行ったのみでした。それゆえ存在を知られている割にはどんな惑星なのか最近まで謎の多いところでした。ところが、4年前、NASAの探査機「メッセンジャー」が水星表面の地形や組成について詳細な観測を始めたほか、わが国も欧州宇宙機関(ESA)と共同で打ち上げを目指す水星探査計画「BepiColombo(ベピコロンボ)」の準備を進めており、にわかに水星探査は活況を呈しつつあります。
「はやぶさ」「はやぶさ2」で培われた電気推進システムを活用するなどして長い間行きたいと思ってもなかなか行けなかった水星への旅路にいよいよ挑戦する「BepiColombo」を後押しすべく、今回のお題は「水星」にしました。
募集期間:2015年2月5日~3月4日
発表日:2015年3月20日
編集部で熟考の結果、以下の9作品を選定しました。力作の数々をどうぞご覧ください。
入選作品
- 長男は 小柄で寡黙な 太陽系
- ヒメ父
- 磁場産業 ベピコロンボに 期待する
- Toki-channel
- 水の星 なのにここより 乾いてる
- お餅もちもち
- 未知故に 魅力に満ちる 水の星
- 浮世っ子
- 各国が 技術持ち寄り 水入らず
- ばいなりい
- 水星の 妖怪磁場ニャン 会いに行く
- らくちゃん
- 水金地火 水が一番 熱いって
- 野上卓
- 30年 今だわからぬ 妻と水星
- ゴエモン
激しい太陽エネルギーに耐えながら今日も公転中…。
MMOのピカピカの外観にも匠の技が光っているんでしょうね。
そう、なんでやねん!って突っ込みたくなるところです…。
「み」と「ち」で韻を踏んだ秀作です!
最近は国際共同プロジェクトが多いですよね!
MMOに磁場のひみつを教えてほしいニャン。
水星も金星も熱すぎるほど熱い…。地球ってすごいや!
減速スイングバイで今こそ距離を縮めましょう♪
ソラセン大賞
- 刑事なみ べピコロンボの 捜査力
- 黒こげみかん
今回は、磁場のある星であることとジバニャンをかけた句と、探査計画の名前と往年の名ドラマ「刑事コロンボ」をかけた句がたくさん集まりました。
探査に行く度に新たな謎が増える水星、BepiColomboがたくさんの謎を解き明かす手がかりを見つけてくるよう、期待を込めてこの句を選びました。(編集長 machiko)
水星にもやっぱり水があった?!
水星と聞くと「水があるのかな?」と連想してしまいますが、実際の水星は太陽からの距離が近いため、太陽から届くエネルギーの量も、地球と比べおよそ6~7倍にも達します。その結果、水星の昼間の地表の温度はもっとも高いところで摂氏400度以上に達し、水や氷が存在するとはとても考えられない環境です。
それなのになぜ「水星」と名付けられているのか?
国立科学博物館の「宇宙の質問箱」によると、次のような背景があるそうです。
『水星や金星という五惑星の名前はギリシャ神話とは関係なく、古代中国で考えられた五行説によります。五行説とは、世界を形作る五つの要素を木火土金水とし、これらの要素の変化や組み合わせで自然界や人間社会の現象を説明しようという考えです。そこで、五行説によりなんでも五つに分類することが行われました。方角や季節、色なども五つに分類されています。
古代から知られた五惑星も五行説に都合がよく、要素が割り当てられました。中国名で辰星ともよばれる水星は太陽のまわりをめまぐるしく動くので水の要素の星。太白ともよぶ金星は明るく白く光るので金の要素。螢惑ともよぶ火星は赤い色の火の要素。木星と土星は、よりくすんだ黄色の方が土の要素の土星。残った木の要素を木星に割り当てました。木星はまた中国名では歳星、土星は鎮星ともよびます』
肉眼でみえ古代から知られていた水・金・火・木・土の五個の惑星はその見え方や運動の様子から名前が決まっていたんですね…。
実際には水の無いとされていた水星ですが、その自転軸は公転面に対してほぼ垂直であるため、極地方のクレーターの深いところには、永遠に太陽の光が届かないところが存在します。そのような場所の気温は常にマイナス200度以下にも太達するため、研究者たちは以前からこのような場所であれば、氷が存在するのではないかと仮説を立てていました。
2012年、NASAの探査機「メッセンジャー」に搭載された中性子スペクトロメータと呼ばれる装置で実際に観測してみると、水星の北極部分にあるクレーターの地下などに大量の水素が水の氷の形で存在することが分かりました。
その量は1千億トン(=琵琶湖の貯水量の約3.6倍)を超えると推定されており、どうやら水星にも地表に水をたたえている時期があったようです。
水星は地球と同じ固体の中心核をもつ惑星ですので、BepiColombo(ベピコロンボ)を通じて地形や鉱物組成の全球分布を知ることで、水星の形成・進化を探ることは、地球はどうして現在のような水の惑星になったのか知る重要な手がかりを得ることにつながります。
まだ打ち上げ前ではありますが、どんな成果が出るのか今から楽しみになってきましたね!