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宇宙実験室 07 - 天体観測をしよう!

2013年末、「大きな彗星がやって来る」という噂を聞きつけて、ボサボサ博士が天体観測に出かけました。ご存じの通り、残念ながら本命のアイソン彗星は思ったほどは明るくなりませんでしたが、かわりにラブジョイ彗星を観測してきました。まずは準備から始めましょう。

まずは持ち物

持ち物はこんな感じです。
コンパス、懐中電灯(赤いセロファンで覆っておきます)、 星座早見やスマートフォンの星座アプリ、双眼鏡、水、おかし(重要)! 
冬はニット帽やマフラー、ダウンコートにボアのブーツ、手袋、ホッカイロなど、体を冷やさないように。
夏は薄い長袖の上着やズボンで肌をおおって、虫除けを忘れずに!

暗いところに行こう

 

星は暗いところのほうがたくさん見えます。街中では街明かりで空が明るく見える星の数は数十から数百個ですが、空が 暗く人工の明かりのない場所に行けば数千個のもの星が見られます。今回は折角の機会なので、富士山のふもとまで行きました。さすがに凄い星。でもさむ~い! 
ちなみに、街中でも、街頭が視界の中に入らない場所に行く だけで、全然見え方が違います。大きめの公園などに行くのもいいかもしれません。あるいは、明るい街灯があるところ でも、その光を手で遮るだけでも随分見え方が変わります。

目を暗いところに慣らそう

暗いところに行ったら、しばらくそのまま待ちます。人間の目は暗いところになれるのに10分から30分近くかかります。夜空をしばらく眺めているとどんどん見える星が増えてきます。あわてずに少し時間をかけて目を慣らしましょう。その時、途中でなるべく明るい光を見ないようにして下さい。明るいところに慣れるのはほんの数秒なので、またやり直しになってしまいます。そうそう、周りで観察している人がいる時には、なるべく明るい光を出さないようにしてくださいね。

真っ暗じゃ見えないよ

明るい光を出さないように、といっても真っ暗では何も見えません。そんな時には、赤いセロファンをかぶせた懐中電灯を使います。赤い光は目への刺激が少なくあまり天体観測の邪魔をしません。スマートフォンの星座アプリの多くは、画面表示を赤くする機能がついています。星を見ながらこうしたアプリを使うときは、こうした夜モードにしておくといいでしょう。
あとは、当然暗いので足元に気をつけてくださいね。夜空に見とれて転んだりしないように。そうそう未成年だけで夜行動するのはダメです。必ず大人と一緒に行動してくださいね。

天体観測の見えない敵

もちろん、明るい光は天体観測の大敵、でも他にも思わぬ伏兵がいるんです。それは冬の寒さと、夏の虫です。天体観測は夜に長時間、野外でじっとしていなければなりません。冬はかなり暖かい格好をしていかないと、寒くてちっとも楽しくありません。甘いお菓子や温かい飲み物を持っていくのもいいですね。 逆に夏は、やぶ蚊が寄ってきます。ちゃんと虫よけ対策をしないと、これまた痒くて楽しくありません。 冬はきっちり防寒具を、夏は虫除けを持っていくのを忘れないようにして下さい。

めざす星はどっちだ?

さて、準備も万端、いよいよ星を眺めましょう。ぼーっと眺めるのもいいですが、今回みたいに見たい星が決まっている時や、星の名前や星座の名前が知りたいときは星座早見やスマートフォンの星座アプリが便利です。
星座アプリも星座早見も使いかたはあまり変わりません。星は時刻によって位置を変えます。時計で日付と時刻を合わせて、コンパスで見たい星の方位を向きましょう(スマートフォンは時計もコンパスも内蔵しているので便利ですね)。
どうでしょう? 見つかりましたか? 

双眼鏡を使ってみよう


今回のように彗星などの比較的暗い天体を見る時は、専用の双眼鏡があると便利です。普通に星を見る時でも、双眼鏡があるとびっくりするほど沢山の星が見られます。あまり倍率の大きくない物の方が手ぶれがしにくくて見やすいです(理想的なのは7倍くらい、10倍くらいが限界と言われています)。カメラ用の三脚に取り付けると、腕も疲れず手ぶれも押さえられて一石二鳥です。
残念ながらアイソン彗星は思ったより明るくならなかったようです。代わりにラブジョイ彗星が見える、というので探してみました。Webサイトなどの情報を元に、そのあたりに双眼鏡を向けてみると…
あ! あれかな? あれだ! あった! 
ぼんやりと、知らなければ見過ごしてしまいそうなぼんやりした光ですが、双眼鏡で見るとたしかに白く滲んだような光が見えます。あれが遠い遠い太陽系の果てからやってきたんですね。ラブジョイ彗星は周期が1万年近くあります。私たちが生きているうちにもう一度見る機会はありません。そう思うと感動もひとしおです。
写真も撮ってみました。双眼鏡で見るより写真の方がずっと明るく見えます。

その後

残念ながらアイソン彗星は見られませんでした。太陽の向こう側を回ってきた彗星が再び明るくなるかも! と期待していましたが、どうやら太陽に近づきすぎてバラバラになってしまったようです(NASAのサイト)。
太陽に近づいたアイソン彗星の連続写真。太陽に近づく前(下)は形がはっきりしていますが、通り過ぎた後(上)は形がはっきりせずぼんやりしています。
考えてみれば、彗星というのはずいぶん不思議な天体です。遠い太陽系の彼方からやってきて、長大な尾を引きながら太陽に近づき、ラブジョイ彗星のように再び太陽系の彼方へ去っていくものもあれば、アイソン彗星のように消えてしまう物もあります。いったい彗星というのはどんな天体なんでしょうか…? 
と、いうわけで、次回は彗星を作ってみます! 

宇宙実験室ノート

「光害」という言葉を知っているでしょうか? これは文字通り、光による公害を意味する言葉です。 光の害っていったいなんでしょうか? 

都市化が進み、昔に比べて夜中でも明るく過ごす事ができるようになりました。反面、夜空が不必要 に明るくなってしまって、昔に比べて星がどんどん見えなくなっています。かつては天の川はどこでも見られましたが、今は山奥のかなり条件のいい場所に行かなければ見る事ができません。これは科学的、文化的な損失とも言えるかもしれません。それだけでなく、人や動物などの体内時計を狂わせたり、夜に活動する生物や、日照時間が重要な役割を果たす植物などへの直接的な影響も懸念されています。また、空に光が漏れているということはエネルギーを無駄に使っているという事にもなります。

夜間の照明は、私たちの生活の安全、経済活動という意味ではとても重要ですが、明るくすれば良いという物でもないんです。光の害は直接私たちの生活を脅かすわけではないので見過ごされがちですが、なかなか悩ましい問題です。どうすればいいでしょうか? 

私たち一人一人にもできて一番簡単なのは、無駄な明かりを消す事です。
1.使っていない部屋の電気を消す、など
 (個人でできること)
2.庭や屋上などの常夜灯も必要なところだけにする
 人が近づいた時だけ光るセンサー付きの物に変えるといった工夫
 (家庭でできること)
3.人のいなくなる真夜中まで商店の看板やネオンをつけておく必要はない
 (企業でできること)
4.あるいは、人間が夜必要なのは、下向きの光だけです
 空に向かって漏れる光は空を明るく照らしますが、これは意味がありません

これらを押さえる事ができれば、エネルギーの節約にもなりますし、空が明るくなるのを最小限に抑えられます。こうした光害対策済みの街灯なども少しづつ普及してきています。

天体観測に行った帰りにでも、ぜひ、周りを見渡して少し考えてみてください。無駄な明かりはないでしょうか? 満天の星空を取り戻すために私たちができる事はないでしょうか? 

伝統的七夕ライトダウン2014キャンペーン
光害対策 ー 環境省

[2014.7]

[2014年7月公開]