宇宙のことをもっと知りたい! 女優 南沢奈央

南沢奈央さんは、女優としてだけでなく、NHKの科学番組『サイエンスZERO』のナビゲーターとしても活躍しています。子どもの頃は理科が苦手で、宇宙は遠い世界のことだと思っていた南沢さん。JAXAや宇宙に対してどのようなイメージを持っているのか、お話を伺いました。


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宇宙への意識が変わった

インタビュー南沢さんは科学番組『サイエンスZERO』に出演されていますね。

 はい。今年で3年目になります。

インタビュー番組で紹介した宇宙に関することで、特に印象に残っていることは何ですか?

『サイエンスZERO「地球外生命の大本命! 衛星タイタン」』の収録風景(提供:NHK)
『サイエンスZERO「地球外生命の大本命! 衛星タイタン」』の収録風景(提供:NHK)

 土星の衛星タイタンをテーマにしたときが印象的です。タイタンには、地球と同じように川や湖があるんです。その川や湖は水ではなくメタンなんですが、タイタンを観測した探査機の写真を見ると、地球の表面にそっくりでした。タイタンには大気があるなど地球と環境が似ているので、生命体がいる可能性があると言われています。それを知ったときに、地球上で見ている世界はほんの一部で、宇宙に行ったらもっと違う生命体がいたり、見たことのない世界が広がっているんだなあって思って。それを想像したら、とても楽しくなりました。

インタビュー地球外生命に関心があるのですね。

 そうですね。小さい頃から、漫画や映画で宇宙人を見て、勝手に想像してるので(笑)。宇宙人といって思い浮かぶのは、映画『E.T.』に出てくるあのイメージですが、本当にいたら面白いなあと思います。

 そのほか、超小型衛星のことも印象に残っています。手のひらに載るほど小さい衛星が、実際に宇宙を飛んでいると聞いてビックリしました。宇宙に行ってデータを集めるためには、大きな機械が必要だと勝手に思っていましたので、そんなに小型化しているとは! しかも、それを学生さんが作っていると知って、宇宙への扉の間口が広くなったというか、宇宙が一気に身近になった気がしましたね。

インタビュー科学番組に出るようになって宇宙に対する意識は変わりましたか?

 はい、変わりました。いちばん大きく変わったのは、宇宙が私たちの生活につながっていると実感するようになったことです。携帯電話のGPS機能を使いながら、位置が分かるのは人工衛星のおかげなんだなあと……。以前はそんなこと考えたこともなかったですから(笑)。宇宙はマニアックで狭い世界だと勝手にイメージしていましたが、宇宙での研究が私たちの生活をより便利にすると聞くと、ありがたいなと思うんです。番組の取材で、研究者の方たちが何度も失敗を重ねながら粘り強く研究を続けている姿を見ると、そのありがたみが増しますね。

宇宙の魅力は、想像を絶するスケール感

インタビュー「宇宙」という言葉から連想することは何でしょうか?

 まず頭に浮かぶのは「無重力」です。無重力は普段体験できないことですから、どんな環境なのかなってすごく興味がありますね。無重力の世界では、地上では見られない現象がたくさん見られると思うと、ワクワクします。

インタビュー宇宙のどんなところが好きですか?

 人がなかなか想像できない、そのスケール感です。宇宙は138億年前にできたというけれど、想像を絶するスケールですよね。例えば、私たちの身近にある太陽の光。その光は、太陽の内部の核融合でできたものが、数百万年から数千万年かけて表面に出てくるそうです。その光が、太陽から約8分かけて地球に届くらしいのですが、太古に作られた光が、今こうして私たちに届いていると考えると、すごいスケールだなあと思います。また、まだ分かっていないことの方が多いというのも、宇宙の魅力です。これほど科学や研究が進んだ今でも、宇宙にある物質のほとんどが分からなかったりするんですよね。

インタビュー宇宙のことで特に知りたいことはありますか?

 特にこれというのはありませんが、番組でブラックホールについてやったことがあって、それがすごく難しかったんです。『サイエンスZERO』のナビゲーターをやるようになって3年目ですが、いちばん苦戦した回じゃないかと思うくらい。一般論や常識を捨てて、別の見方で考えないと理解できない分野なので……もう別世界に入ったようで(笑)。もっと自分の知識を増やして、ブラックホールのことなど、難しいこともちゃんと理解できるようになりたいとは思っています。

インタビュー番組の収録前に、自分でいろいろ調べたりするのですか?

 多少は調べますね。宇宙や科学に関する本を読んだり、インターネットで調べたり。番組の収録の時に、初めて知るのも楽しいんですけども、いくらか知識があった方が、よりいっそう面白かったりもするので。でも、私は視聴者の方と同じ目線に立つというポジションなので、あまり知識を取り入れすぎないようにはして収録に臨んでいます。収録の時は、自分が疑問に思ったことを素直に聞いています。

インタビュー科学番組に出る時と女優として演じる時では、意識的な違いがありますか?

 全然違いますね。ドラマでは台詞が決められていて、それをいかに自分らしく演じるかを考えます。科学番組の方は、番組の流れは決まっているものの、自分の言葉で表現しなければなりません。ある情報を自分なりに解釈して、それを自分の言葉で発信するよう心がけています。だから、すごく頭を回転させています、『サイエンスZERO』の時は(笑)。

新しいことを知るのが本当に楽しい

インタビューJAXAにどんなイメージをお持ちですか?

 科学番組に出る前からJAXAの存在を知っていましたが、難しいことをやっている「自分とは無関係の遠い世界」というイメージを持っていました。でも番組を通して、例えば、国際宇宙ステーションで行われている研究によって、今まで治らなかった病気に効く新しい薬ができるかもしれないってことを知って……。JAXAでは、自分の生活に関わるような研究や、この生活がより豊かになることをやっているんだと知るにつれて、すごく希望が詰まっているところなんだなあと思うようになりました。

インタビューJAXAは宇宙だけでなく、航空に関する研究も行っているのをご存知ですか?

 はい。JAXAが研究する無人飛行機を番組で紹介したことがあって、それがけっこう衝撃的だったんです。人が乗って操縦しないと飛行機が空を飛ぶなんてできっこないって思っていたんですけど、遠隔操作で飛ばすことができて、データを入れると自動で飛べる無人機があると知って、驚きました。実際にもう、無人機が災害の調査や宅配サービスに使われようとしていると聞いて、さらにビックリしましたね。番組をやっていると、驚くことが多くて(笑)。毎回、初めて知ることばかりで、「すごいなあ」と感心しながら取材VTRを見ています。

インタビュー幼少時代に、宇宙に興味はありましたか?

 子どもの頃には、プラネタリウムに連れていってもらったり、星が好きな親戚のおじさんに、いつ、こういう星が見えるというのを教えてもらったりしました。でもその時は、宇宙のことはよく分からなくて。理科は嫌いじゃなかったけれど、苦手でしたね。授業の科目の一つという意識しかなく、頑張って勉強しても成績は上がらないし……(笑)。だけど、科学や宇宙が、私たちの生活に密接に結びつくものなんだと気づいてからは、「勉強」という感覚がなくなって、新しいことを知るのが本当に楽しいです。何だかワクワクするんです。例えば、金環日食などの現象も、どんな仕組みでそういうことが起こるのか分かったら、どんどん興味がわくようになりました。

インタビュー2012年5月に日本で見られた金環日食。ご覧になりましたか?

2012年5月に日本で見られた金環日食
2012年5月に日本で見られた金環日食

 はい。その日の関東地方は曇りで、見えないかもしれないと聞いていましたが、最後に一瞬晴れて金環日食が見えたんです。その時はとても感動しました。すごく神秘的でしたね。普段は、天体が動いていることを意識しないけれど、その時は、太陽、月、地球がそれぞれ動いていることを実感しました。普段なかなか空を見上げることがなかったので、金環日食のことだけでなく、雲ってこんなふうに動いているんだなあと思ったり、自分も宇宙の一部なんだなあと思ったり……。空を見ながらいろいろなことを考えて、感慨深い気持ちになったのを覚えています。

宇宙の現場からのリアルな声を聞きたい

インタビューこれからの宇宙開発にどんなことを期待しますか?

 あまり宇宙のことを知らない人や、興味がないような人でも、宇宙へ行ってみたいという願望はあると思いますので、宇宙旅行ができるようになるといいなと思います。私自身も、やっぱり宇宙に行ってみたいですから。地球から飛び出して、地球を見てみたい。ほかの星を見てみたいという気持ちはありますね。何十年後かには宇宙旅行が身近になるかもしれないと言われていますが、どうなるか楽しみです。

インタビューJAXAにこんなことをしてほしいという希望はありますか?

 宇宙の現場で働く人のリアルな声をもっと聞いてみたいです。特に、宇宙飛行士ともっと直接触れられる機会があればいいのになあと思います。例えば、宇宙飛行士が大学で特別講義をしてくれたら面白いと思いますね。以前番組で古川聡宇宙飛行士に話を伺ったときに、研究や実験など科学的な仕事が多いことに驚かされました。実は私、宇宙飛行士の方が宇宙でどんなことをやっているか、それまであまり知らなかったんです。私以外にもきっとそういう人はいるんじゃないかと思うんですよね。

 古川宇宙飛行士からはいろいろな話を伺いました。宇宙では、天井や床という感覚がないので、上にも下にも収納スペースがあるとか。浮遊しながら寝るとか。殴り合いをするとお互いに飛んでいくからケンカはできないとか(笑)。中でも、宇宙飛行士になって宇宙へ行くまでに10年待ったという話にはとても関心を持ちました。私は大学で心理学を勉強していたので、長期間どのようにしてモチベーションを保ったのだろう、と関心を持ったんです。心理学と宇宙飛行士を結びつけて何か展開できそうな気がします。実際には、そのような試みが行われているのかもしれませんが、もっと私たちに身近なところで、宇宙飛行士の貴重な体験談を聞けたらいいなと思います。

インタビュー今後の抱負を聞かせてください。

 女優業だけではなく、いろいろなことに挑戦したいです。昨年、大学を卒業しましたが、新しいことを学ぶことは好きなので、一生勉強を続けていきたいと思っています。そういう意味で、『サイエンスZERO』は毎回学ぶことが多いので、これからも楽しく続けることができたらいいなと思います。宇宙のことをもっと知りたいです!

南沢奈央(みなみさわなお)
女優
1990年6月15日生まれ。埼玉県出身。2006年、連続ドラマ『恋する日曜日・ニュータイプ』(BS- TBS)で主演デビュー。2008年、映画とドラマ(フジテレビ系)を連動させた『赤い糸』で等身大の高校生を演じ、注目を集める。ドラマ、映画、舞台など数多くの作品に出演。2012年から科学番組『サイエンスZERO』(NHK Eテレ)のナビゲーターを務め、女優以外にも活躍の場を広げる。2014年4月からドラマ『なるようになるさ。』(TBS系)に出演。

[2014年6月公開]