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宇宙実験室 04 - エッグドロップコンテスト2013 JAXA相模原キャンパス特別公開編

もう、すっかり宇宙実験室の定番になった『エッグドロップコンテスト』。2013年7月26日、27日に行われた相模原キャンパス特別公開の2日目にみんなでビルの上から卵を落としました。

エッグドロップコンテストって何?

『エッグドロップコンテスト』というのは、「高い所から生卵を安全に落とすための機体を作る」というコンテストです。元々は90年台の半ば頃からアメリカの大学などで工学やデザインを学ぶための教育プログラムとして始まりました。日本でも2000年台の中頃から学園祭やワークショップなどで行われています。私たち宇宙実験室では、2011年から毎年夏の相模原の特別公開でこのイベントを行ってきました。今年で3回めの開催です。

ルール

今年は少しルールが変わりました。機体の制限はこれまで通り以下の通りです。

1.機体の重量が20g以上100g以下であること
2.機体のサイズが1m四方程度であること
3.落下途中で分離しないこと
4.落としても安全な材料で作ること

今年はこれに、以下のルールが加わりました。
5.半径5mの範囲内に落下すること

これは、主に安全上の理由から新たに設けられたルールですが、風の影響がある屋外の会場ではなかなか厳しい条件です。当然出場者の方々にはこれらのルールを充分に理解した上で機体を制作してもらっています。

機体紹介

早速参加した機体を紹介しましょう。今年は多数の応募があったため、前回優秀な成績を収められた方々と抽選で出場者を決めさせていただきました。

SKY DIVER Type5/植松賢吾くん

機体はペットボトル、パラシュートはビニール袋を使っています。地震が起きた時に家具などが倒れるのを防止する耐震粘着マットを衝撃吸収に利用しているとのこと。

成功

パラシュート型ということで風の影響が心配でしたが、エリア内に見事着陸。卵も割れませんでした。

ストライクトルネード/菊池航天くん

風車のような形の機体です。卵を載せる部分にはヨーグルトのカップが使われています。機体を円錐形にすることで落下の時の空気の流れを良くする工夫がされています。

成功

くるくると回転しながら、見事エリア内に着陸しました。卵も割れていません。

けいすけ号/けいすけくん

こちらもパラシュート型、スーパーの袋を利用しています。ペットボトルを使った機体の中には荷物をおくる時に使う緩衝材をつめて衝撃を吸収しています。

成功

パラシュートも綺麗に開き、ほぼ真ん中に落ちる安定した落下です。卵も割れませんでした。

着陸船アルデバラン号2/脇屋春樹くん

こちらは四角い機体、本体も四角ならパラシュートも四角。卵はスポンジにくるまれて守られています。

成功

壁に何度かぶつかりましたが、ちゃんと姿勢を戻しました。卵も無事です。

カプサルR-66/荒井海くん/荒井みかくん

円形のパラシュートを使った機体。卵が空中に吊るされていて、地面に衝突しないように工夫されています。

失敗

パラシュートで落下のスピードはかなり抑えられ、ゆっくりと降りてきましたが、風に流されてエリアの外に出てしまいました。昨年までのルールなら成功だったでしょう。おしい!

バルーンボックス/土屋海夢さん

その名の通り風船を使った機体。本体は衝撃を吸収する素材でくるまれています。

成功

風船がパラシュートの役割をして、思ったよりゆっくりとした落下でした。着陸地点もOK。卵も無事です。

おりづる号/彩夏さん

折り紙のつると風船を組み合わせた機体です。なんと機体のほぼ全てが保冷シートを折るだけで作られています。

成功

機体の形からひっくり返ってしまうのではないかという不安をよそに、きれいに安定した落下です。もちろん卵も無事です。

神速UFO1号/倉田航希くん

細長い風船を曲げてクッションにしています。本体はお菓子の空き箱を利用しています。

成功

落下直後にくるりとひっくり返りましたが、風船が落下のスピードを和らげているようです。卵も無事でした。

木星探査機ヴァールIII/村上ゆきくん

竹ひごと紙で作られたひまわりのような形をした機体。なんと卵が外から丸見えです。村上くんは昨年3位です。

成功

ゆっくりと回転しながら降りてきました。これは美しい。会場からもどよめきが上がっていました。卵も割れていません。

オクトパス1号/にしはたちひろくん

ペットボトルを利用した機体。名前の通り開かれた足がタコのようです。荷物などにつかう「ぷちぷち」を利用して衝撃を吸収します。

成功

小型のパラシュートが姿勢をうまく安定させていました。落下位置もOK。卵も無事です。

クラクラゲ丸/和田尚侑くん

カラフルな風船を使った機体。風船が大きなビニール袋に包まれています。和田くんは前回も参加、4位になりました。

失敗

くらげのようにふんわりと降りてきました。卵も無事。でも、残念ながら風に流されてエリアの外に出てしまいました。

TM-13/佐原隆太くん

卵が衝撃に強い方向である縦になったまま落ちるように、機体を縦長のラグビーボール型になっています。

失敗

想定とは違い、横向きになって落ちてきてしまいました。着陸地点はエリアのど真ん中でしたが、卵が割れてしまいました。

青いとんがりコーン1号(パラシュート付き)/高田岳くん

コーンの先がつぶれることで衝撃を吸収する仕組みです。さらに、中にスポンジを入れて安全性を高めました。

成功

パラシュートが綺麗に開き安定したフライト。エリアギリギリでしたが落下地点はOK。卵も無事です。

たまごまもるくん/そらくん/りきくん

牛乳パックを使った機体に、ビニール袋のパラシュートがついています。機体の中で卵が空中に浮かんだ形で収められています。

成功

大きなパラシュートを使った機体でしたが、風に流されることもなく安定した着陸でした。卵も割れていません。

宇宙ヨット/高原朗くん

ペットボトルを利用した機体です。簡単に作れて頑丈な機体を目指したとのこと。彼は、毎年自作の回収ロボットとともに参加してくれます。

成功

機体の下の粘土のおもりと、機体上部のふきながしが機体を安定させ、まっすぐエリアのど真ん中に落下。かなりのスピードでしたが卵も無事です。

結果発表

すべての機体の落下が終わり、最初から最後まで見ていたギャラリーの方々に、これぞと思う機体に投票をしてもらいました。デザイン、アイディア、落下時の姿勢などを総合的に判断して投票してもらっています。さて、結果は...

1位村上ゆきくん
木星探査機ヴァールIII

ダントツの1位。美しい機体と安定した落下姿勢は見ていた誰もが息をのみました。

2位 そらくん/りきくん
たまごまもるくん

非常にシンプルな構造ながら、飛行中の姿勢を安定させるために隅々まで考えつくされていました。

3位 彩夏さん
おりづる号

折り紙の作品を組み合わせて機体を作るというアイディアに注目が集まりました。

宇宙実験室ノート

この特別公開で行っているエッグドロップコンテストでは、見ていたギャラリーの方々の投票で優秀作品を決めています。落下位置の正確さや機体の重さ、落下のスピードなどの客観的な評価基準はあえて採用していません。
これは、卵を安全に落とすという目標に対して、なるべくバラエティに富んだ、独創的なアイディアが出てきてほしいという想いからです。

今回も私達の期待をはるかに上回る素晴らしい機体が集まりました。子どもたちの柔軟な発想にわれわれスタッフも顧問の奥田名誉教授も驚かされっぱなしでした。おそらく見ていたギャラリーの方々もそうだったのではないでしょうか。今年は落下エリアを限定するという厳しいルールが加わりましたが、ほとんどの機体が成功しました。子どもたちに話を聞いていると、みな何度も何度も実験を繰り返し、欠点を洗い出し、機体を改良してこの日に臨んでいます。その真摯な姿勢はエンジニアそのものです。

来年の夏の相模原キャンパス特別公開でもコンテストを開催したいと思っています。予定が決まり次第ファン!ファン!JAXA!で告知しますので、興味を持たれた方はぜひチャレンジしてみてください。

[2014.4]