GPM/DPRの地上試験モデルを用いた芸術作品が完成!作家 黒田恵枝さんインタビュー

2019年10月19日~11月24日に種子島宇宙芸術祭が開催されます。
種子島のみなさまから集めた古着を使った作品「探求者たち」が完成しました!
人工衛星搭載観測センサ(全球降水観測計画/二周波降水レーダ「GPM/DPR」)の地上試験モデル(KuPR STM)を用いて作品「探求者たち」を制作された作家の黒田恵枝(くろだよしえ)さんにお聞きしました。

作家 黒田恵枝さん

作家 黒田恵枝さん

—— 人工衛星には関心がありましたか?人工衛星「GPM」のDPRセンサ地上試験モデル(KuPR STM)を作品「探求者たち」に用いようとしたきっかけまたは、用いてみようと思った理由を教えてください。

元々宇宙への興味はあり、映画を見たり、本を読んだりしている時期がありました。
ただ、人工衛星に詳しくて、作品に取り入れたいと前から思っていた訳ではありませんでした。
宇宙の芸術祭ということで、ハイテクなものや科学的なものだけじゃなくて、もっと思考したり、想像したりする、存在ついて考えたり哲学的な要素もあるべきなんじゃないかという話が出ました。私の作品は使われなくなった衣類を使っているんですけれども、私はその使われなくなった衣類を「一度死んでしまったもの」「死者」として捉えていまして、それを生まれ変わらせる過程をテーマにしています。そういったテーマと宇宙が結びついたときにどういったものになるのか、という所から作品作りが始まりました。その時に、私が作っている生き物の「もけもけもの(通称:もけもけ)」とレーダーモデル(KuPR STM)を組み合わせて何か物語のような作品が作れないか、という話になり、作品で使わせていただくことになりました。

—— 今回の制作で大切にしようと思っていることを教えてください。

種子島の島内の衣類を使うということだったので、持って来てくれた人が「あ、ここに使われてる!」とか、「これ私のTシャツ!」とか、そういった点に目を留めていただいて、使えなくなった衣類が新しいものの一部になった喜びを感じて頂けたらうれしいです。

—— 制作される中で感じられた黒田さんの作品と人工衛星「DPR」のDPRセンサ地上試験モデルとの共通点を教えてください。

レーダーモデル(KuPR STM)自体も、地上試験が終わってしまってもう使われないものだとお聞きし、「あっ」と思ったところです。役目を終えて今ここにいるという点で、(KuPR STM) と「もけもけ」に)すごく親和性があると思いました。

—— 制作前と制作中(後)での人工衛星「GPM」のDPRセンサ地上試験モデルに対する印象の違いや感じ方の変化を教えてください。

作品に使う前、レーダーモデル(KuPR STM)を単体で見ていた時は、作品のプラン自体は出来ていたんですけれども、無機質な素材のレーダーモデル(KuPR STM)と衣類の生き物っぽい有機的な形が組み合わさったときにどうなるのか、実感が湧かずドキドキしていました。
実際に(「もけもけ」をKuPR STMに)載せてみて、すごく一体になれたかな、という感じがしています。

—— 今回の作品「探求者たち」を通して鑑賞されるみなさまにお伝えしたいことをお願いします。

実は、「もけもけ」はレーダーモデル(KuPR STM)の上でお祈りをしているイメージで制作しています。島で生まれた「もけもけ」は、自分がどういう存在なのか、仲間はどこにいるのか、自分の起源はどこにあるのか、探し求めて島を巡った(写真を撮影しています)結果、宇宙に仲間がいるんじゃないかと考えるようになりました。そして「もけもけ」は、この地上にあるレーダー(KuPR STM)と、実際に宇宙に行っているレーダーは、お互いの様子を知ることができるんじゃないか、レーダーモデル(KuPR STM)の上で祈ることによって自分の思いが宇宙に届いて、仲間に会えるんじゃないかと考え、お祈りをしています。
この作品にはそういった意味合いがあるので、鑑賞する方にも自分はどこから来たのか、といったテーマに思いを巡らせてもらえたら嬉しいです。

KuPR STMの上でお祈りをしている「もけもけ」とインタビューの様子

KuPR STMの上でお祈りをしている「もけもけ」とインタビューの様子

2019年10月18日(金)更新