X線天文衛星「ひとみ」(ASTRO-H)特設サイト
衛星を優しく送り出す~基幹ロケット高度化開発の取り組み その2
H-IIAロケットの打ち上げ成功率は、世界のロケットの中でもトップクラスを誇っています。しかし運用開始から14年以上が経ち、衛星の大型化や設備の老朽化などさまざまな課題も見えてきました。これらの課題を乗り越えるために「基幹ロケット高度化プロジェクト」を実施しています。H-IIAロケットの打ち上げ性能を向上させ、国際競争力を強化し、地上設備を簡素化することにより効率的なロケット運用を実現します。
H-IIAロケット29号機ではその成果の一部が適用され、第2段ロケットが長時間飛行して衛星をより静止軌道に近い軌道に投入できました。
H-IIAロケット30号機で「衛星搭載環境の緩和」の飛行データを取得
これまでのH-IIA ロケットに搭載されている衛星の衝撃は、世界の主要ロケットと比べて厳しく、その主な原因は衛星分離時によるものでした。
基幹ロケット高度化で開発した「衛星搭載環境の緩和」では、これまでとは異なる衛星分離の機構を開発して、衛星が受ける衝撃を世界水準より大きく和らげ、優しく衛星を送り出します。
衛星搭載環境 緩和の仕組み
現在のH-IIAロケットは衛星を分離する際に爆薬(火工品)を用いて締付ボルトを瞬時に切断しています。基幹ロケット高度化で新たに火工品を使用しない分離機構を開発し、衝撃環境をこれまでの約4000Gから世界最高水準の1000G程度に下げ、衛星搭載環境を改善します。 これにより、衛星をこれまでほど頑丈に作る必要がなくなり、衛星設計の自由度が向上します。
低衝撃分離部 実機大認定試験の様子
2012年12月、JAXAと低衝撃分離部の共同開発を行う川崎重工業の岐阜工場にて、低衝撃PAF*分離試験が実施されました。 *PAFとは衛星分離部(Payload Attach Fitting)のことで、ロケットと衛星をつなぐ台座にあたります。 |
H-IIAロケット30号機でのデータ取得
2016年2月に打ち上げられるH-IIAロケット30号機では、ロケットに搭載しての低衝撃型衛星分離部のデータ取得を行います。ASTRO-Hをこれまで通りの方法で分離した後に、低衝撃型衛星分離部(低衝撃PAF)の実証を行い、分離機構の作動状況(画像)や分離時の衝撃等に関するデータを取得・評価する予定です。
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