JAXAタウンミーティング

「第82回JAXAタウンミーティング in 輪島」(平成24年9月9日開催)
会場で出された意見について



第一部「安全で環境に優しい航空機を目指して」 で出された意見



<(1)離着陸時の電子機器の使用について、(2)短距離離着陸機について>
参加者: (1)飛行機の離陸のときや着陸態勢に入ったときには、パソコンなどの電子機器の使用ができなくなると思うのですが、携帯やインターネットが常に使えるようになれば、非常に喜ばれるのではないかと思います。
(2)また、飛行機がますます利用されるようになり、能登空港の利用もできるだけしてほしいですが、新幹線に負けないぐらいに一度にたくさん来ればいいのではないかなと思っています。そこで、1,000人でも2,000人乗りのジャンボジェット機のようなものが能登空港の短い滑走路でも飛べるような技術ができないかなと思っています。
岩宮: (1)私も飛行機に乗るときには携帯など、必ず電波が出る機器を止めてくださいねということを言われるので、何とかならないのかなと常に思っています。離着陸のときというのは一番飛行機の操縦にとってはクリティカルなので、障害に少しでもなりそうなものは極力避けるという意味では、今の運用はやむを得ないと思っています。インターネットについては実際に雲の上でも使えるような環境を提供している機体もありますし、今後はある程度の安定した飛行状態であれば、確実にそういうものが使えるようになるんだろうと思います。
(2)STOL、短距離で離着陸できるような機体は我々も、昔、短距離離着陸機の「飛鳥」というものを研究していました。残念ながら世の中はどちらかというと空港の滑走路の長さを長くする方向で動いていたので、需要というものがありませんでした。「飛鳥」そのものは600mぐらいで着陸できるような機体を考えていました。技術的にはかなりの蓄積が既にあるので、何かそういう需要が盛り上がっていくと、機体開発の芽も出てくるのかなと思っています。

<こうのとりの貢献について>
参加者: 「こうのとり」の国際宇宙ステーションに対する貢献はいかがなものでしょうか。
寺田: 「こうのとり」は、国際宇宙ステーションに物資を輸送する宇宙船です。日本は、国際宇宙ステーションに対してどのような貢献をしているかというと、もちろん、宇宙飛行士が行って、いろんな作業をしています。それから、「こうのとり」が日本の物資だけではなくて、アメリカ、ヨーロッパやロシアなどの物資を宇宙に届けています。さらには、国際宇宙ステーションの中にあるごみを「こうのとり」に詰めて、それを地球に戻して大気で燃え尽きさせるという機能も持っています。 「こうのとり」は、大量の物を運べます。ロシアとアメリカの民間の技術で実現した輸送船がありますが、それに比べても「こうのとり」はたくさんの物を運べるというメリットがあります。そういったことで、日本は国際宇宙ステーションの活動に対して大きな貢献をしているということが言えます。「こうのとり」は3号機まで上がりました。大体1.5年に1機ずつ上げていって、全部で10機ぐらい上げる計画になっています。ぜひ皆さん応援していただければと思います。
西浦: 「こうのとり」2号機の金色に輝く米俵のような形が宇宙を舞う姿が皆様の御記憶にまだあると思います。これは国際的にも外観も美しいということで高い評価を得ました。機能だけでなくデザイン性も優れていると認められました。

<乱気流監視システムについて>
参加者: 乱気流の監視システムについてですが、空港のランニング時にもダウンバーストを探知する機能が使えて、現在は、ドップラーレーダーを使用していると思います。ドップラーレーダーだと、積み重ねがあるので、ある程度利用ということは可能ではないかと思うんですが、それを航空機に載せる気流計測レーダをなぜレーザー光にしたのかお教えください。
岩宮: レーザー光を使って遠方の空気の流れを見ます。何を見たいかというと、晴天乱気流です。通常であると、雲とかに反射して戻ってくるものを検知するんですが、晴天時はほとんどごみが浮いていないことがあって、かなり強力なものをぶつけてやらないとレーザーが戻ってきません。我々はどのぐらいの性能を目標にしたかというと、約9km先の乱気流を見つけることを目標として、技術開発をしてきました。戻ってくるものが非常に小さくなるので、パワーの強いものを絞って前方に送る必要があるために光反復を利用しました。現在のところ、9kmぐらいをちょうど観測できるものはできましたが、それを飛行機に載せるとすると、まだまだ軽くする必要があります。ただ単に観測するだけだと、9kmというと大体飛行機が30秒ぐらい後に乱気流に出会うぐらいの距離です。立っている人に座ってシートベルトをしてくださいというのは確実にできると思っていますが、飛行機そのものがそれを避けるというのはできる場合もできない場合もあるくらいの時間で、乱気流に突っ込む可能性もあります。そういう動揺を避ける装置というのは入って初めて状態がわかって、そこで舵面を動かして動揺を減らそうというのはいろいろ研究されていますが、その情報を事前に取り込み、準備をして飛び込むというのは今までできていないので、そういうことを目指して研究開発をしています。それはボーイングも非常におもしろいと言ってくれているので、実際の航空機に搭載できるような形にまで持っていきたいと思います。そういうふうに制御まで含めて考えると、必ずしもそんなに遠いところではなくて、もう少し近いところでの情報を事前に取り込むことで役に立つものができるので、装置の軽量化という観点からも実現性が高いだろうということで研究をしています。

<インターネット中継について>
参加者: ロケットの打ち上げの実況中継を見たいなと思って、JAXAのホームページからクリックすることがあるんですけれども、まだ一度も見れたことがありません。クリックしてずっと待っていれば、いずれは映像というのは出てくるものなのでしょうか。
寺田: JAXAのホームページ、インターネットでロケットの打ち上げをごらんになった方、手を挙げていただけますか。何か困ったことはありますか。特に今、御質問があったようにつながりにくいとか、どんなことに困っていますか。御意見をいただければと思います。
参加者: かたまります。
寺田: 1つは、動画で情報のやりとりの量が多いので、かたまってしまうことがあります。JAXAも初期のころは、アクセスが集中して、かたまって見られないとか、アクセスできないという苦情があって、今は、いわゆるミラーサイトで分散して、いろんなところでもやって、なかなかそうならないようにはしてあります。もしかするとインターネット環境でたくさんのデータのやりとりをする環境にないとかたまってしまうとことがあるかもしれません。「こうやったらよく見えるよ」というアドバイス、皆さんの中でお持ちであればしていただければと思います。また、「いつ打ち上げられるかわからない」「もっと早目に打ち上げる時期を教えてくれ」「何で夜中に打ち上げるのか」という苦情も受けます。いつ打ち上げるのかというのは、衛星の開発は、ある目標を持って一生懸命やっていますが、不具合が起こって、延びてしまうことがあります。ですから、打ち上げの確度が高くなるのが大体2か月前ぐらいです。実際、その日になっても打ち上がらないことがあります。この最大の理由は天気です。特に台風などが来るとロケットは風に弱いので打ち上がりません。前回、H-IIB「こうのとり」3号機の打ち上げは非常に強い雨が降っていたんですけれども、何とか雨には耐えました。ただ、風には弱いので、せっかく待っていただいても風が強いと上がらない。雷にも弱いです。そういうものには弱いということで、これも本当は対応しないといけないのかなと思います。何で夜、打ち上げなければいけないかというと、これはいろんな事情があります。例えば「こうのとり」は、国際宇宙ステーションにドッキングする宇宙船なので、宇宙ステーションが飛んでいるちょうどのタイミングで上げなければいけない。それが昼になったり夜になったりするということがありまして、これも皆さんに御迷惑をかけてしまいます。そういうところをぜひ御了解いただいて、インターネット放送を見ていただければと思います。
西浦: 貴重な御質問ありがとうございます。ウエブサイトに関しましては、ほかにも鮨詰め状態に情報を詰め込み過ぎで見にくいとか、読みづらいとか、いろいろなお叱り、御指摘をちょうだいしております。大至急、現在、改善の方向で、内部で進めておりますので、もうしばらくお待ちいただけますでしょうか。申し訳ないです。

<航空機の新エネルギーについて>
参加者: 私が今、一番気になっているのは去年の3.11からエネルギーの問題です。電気ももちろんそうですが、今、再生エネルギーにしていこうという動きもあるわけです。自動車の燃料についてはハイブリッド、電気、燃料電池などいろいろと開発されているみたいなんですけれども、いわゆる石油というのは限りがある資源です。これから何十年、何百年使っていけるかわかりませんが、これからどんどん掘削の費用から合わせて値上がりしていくことは確実だと思います。そんな中でジェットエンジンの新しいエネルギー源といいますか、そういったもののお考えを持っておられるのか。既に内緒だけれども、開発しているとか、そういう新しいエネルギーのお考えをお持ちだったらお教えください。
岩宮: まず環境問題という意味で今、世界的にいろいろ燃料について議論している中では、バイオ燃料等の再生可能エネルギー。生物資源、要するに太陽からのエネルギーを燃料にしていくというのは、我々は直接、今のところ取り組みはありませんが、既にいろいろな国で行われており、日本国内でもそういう実験はされています。その次に考えられるのは、電気自動車のように電気を使うということなんですが、残念ながら今の電池というのは、単位質量当たりのエネルギー密度が地上を走るのであれば何とかなるけれども、飛ぶためには十分でないということで、現在でみるとジェネラルアビエージョンといいますか、数人乗りぐらいまでなら何とかなるけれども、旅客機では、とても無理だということになっています。我々としても電動化、今はエンジンのパワーを利用して、いろんな内部の電気なども全部まかなっているところがあります。そういった内部の機器類の電源については電池や燃料電池へ変えていって、エンジンは飛ばすだけのものにしていこうとしています。バイパス比を大きくすると効率が上がっていくんです。だからバイパス比を上げるためにガスタービンで発電をして電気をばらまくことによって、バイパス比を上げた形にする。1つのエンジンでやるとファンがどんどん大きくなって、どうしても効率が落ちてきます。それをたくさんに分けるという考え方で、プロペラに相当するものをたくさん飛行機につけてやっていくことが、今後の飛行機のコンセプトとしては考えられるところです。いずれにしろ、電気とガスタービンエンジンのハイブリッドで効率を上げて、世界的な目標は1機当たりのCO2を2050年までに全体で半分にしましょうと、機体が2倍になりますので、1機当たりは4分の1にしましょうという目標で今、進んでいます。

<内之浦宇宙空間観測所について>
参加者: 種子島宇宙センターと鹿児島県にもう一つ、内之浦にロケット発射場があったと思いますが、そこから打ち上げたということを余り聞かないのと、何年か後にそこからロケットを発射すると聞いたことがありますが、そのロケットの実験目的などをお教えください。
寺田: 実は種子島宇宙センターよりも、内之浦のロケット場のほうが歴史が古くて、今年50周年を迎えて、間もなく記念の式典もやることを予定しています。「宇宙科学研究所」が主に固体ロケットの打ち上げのために使っていた射場です。今、主力のロケットは液体水素と液体酸素、いわゆる液体ロケットと言われるH-IIA、H-IIBで、こちらは種子島から打ち上げますが、来年、イプシロンという固体ロケットが打ち上げられる予定になっています。その射点が内之浦から上がるようになっています。H-IIA、H-IIBは大きな衛星を打ち上げるロケットですが、イプシロンはもう少し小型の衛星を簡便に打ち上げるというコンセプトで開発していて、来年、内之浦から打ち上がることになっています。

<(1)「i-Ball」について、(2)LNGエンジンについて>
参加者: (1)たしか「こうのとり」3号機に「i-Ball」というものが載っていて、撮影して地球に帰ってくるという話だったと思いますが、あれは公開の予定はあるのでしょうか。
(2)あと、数年前に事業仕分けで廃止になったGXロケットに使われる予定だったLNGエンジン。これはたしかIHIさんのほうで開発が継続されているというのをどこかで見ましたが、あれはまだH-IIAとか別のシリーズで使う予定があって開発されているのでしょうか。最後はお願いですが、ロケットの打ち上げの日付ですが、時々JAXAのサイトよりも海外のウエブサイトに先を越されて掲載されているときがあるので、あれを見るとがっかりするので、ちょっと頑張っていただければと思います。
寺田: (1)「こうのとり」に載っている「i-Ball」です。こちらは無事によい映像が撮れれば公開する予定にしています。「こうのとり」はごみを積んで地球に帰したときに、ほとんど燃え尽きてしまうわけですが、「i-Ball」を「こうのとり」に載せて、その燃え尽きる様子の映像を撮ろうとしています。9月14日に地球に帰ってきますので、そのときによい映像が撮れれば、残念ながらライブで見ることはできないんですけれども、後で公開することができると思います。もし公開されなかったら、うまく撮れなかったということでお許しください。
(2)LNGエンジンも非常に詳しい御質問なんですが、日本のH-IIA、H-IIBは液体酸素と液体水素を使った燃料と酸化剤がそういうものです。LNGエンジンというものは、液体メタンを使ったエンジンですが、これがよいところは、水素というのは分子が小さいので、ロケットのタンクに入れてもどんどん漏れてしまいます。ところが、LNG、メタンガスを使うと長く貯蔵しておくことができるということで、宇宙の軌道間輸送機、宇宙の中であるところからあるところまで行ける軌道間輸送機というものに使えるだろうということで今、次の開発を待っているところです。とりあえずGXというロケットはいろいろ経済性もないということで開発は断念しましたが、LNGエンジンの技術はそこに使おうと思っています。最後にロケットの打ち上げ日です。実は今回外国のサイトに出たというのは、かなり特殊でした。なぜかと言うと「しずく」の打ち上げのときだったと思いますが、韓国の衛星と相乗りだったんです。日本ではこの情報というのは非常に重要な情報として管理しています。今回たまたま韓国の衛星が一緒に打ち上がるということで、韓国のエンジニアは自分たちの衛星を一緒に打ち上げますから、いつ打ち上げかわかっているわけです。こちらに対してそういう意味で情報をきちんと守ってくださいねという言い方が足りなくて出てしまったということですので、決して次はこういうことがないようにしたいと思います。
西浦: 他国の小型衛星を日本のロケットに搭載してあげるという、もちろんそれなりの料金をちょうだいしてですが、そういう事業も三菱重工さんの方で始められておりますので、これからも日本の人工衛星だけを搭載するということだけではないでしょう。より一層、厳重かつ、スピード感のある情報管理に頑張っていきたいと思っておりますので、よろしくお願いします。

<LCCの安全性について>
参加者: 安い航空会社が出てきましたが、安全をコストで考えたらどこまで下げられるのでしょうか。技術のレベルでどういうふうに見ていますか。
岩宮: 航空機は安全第一ということで、飛ばすための仕組みというか、規制というか、そういうものは当然されています。整備等も決められたところでやっていて、彼らがそういうふうなことができているのは、機種を1種類に絞り込んで、整備等も専門のところ、要するにそれしか扱わないようにして、できるだけコストを下げているからで、今までとは違ったやり方が出てきています。今までは航空機会社が整備まで含めて飛ばすこと全体の面倒を見るという格好でしたが、今、世界の方向としては、1つはリース会社が飛行機を大量に買い込んで、それをエアラインに提供するというスタイルと、整備専門の会社ができてきていて、そこに定期的な整備は任せるいうスタイル。その整備はいろんなエアラインから同じ機体を請け負って、この機体だったら全部うちが面倒見ますよというような格好でコストを下げています。だから、その機種について非常に専門性の高いところが面倒を見ているというふうにも言えます。そういう意味では少なくとも現時点では間違いなく安全性を保ちつつ、コストを下げていると思うんですけれども、経済原理でどこかでそういう歯車が狂わないようには、きちんとウォッチしていかなければいけないと思っています。それから、新しい技術として取り入れられようとしているのは、ヘルスモニタリングということで、飛んでいる状態で機体の状態をモニタリングするような技術です。要するに、機体にはいろんな力が繰り返し繰り返し加わることによって疲労破壊といった不具合が起きるわけですけれども、実際に飛んでいる状況というのは機体ごとにそれぞれ違うわけです。どれだけの空気の乱れの中を飛んだかで、機体に対する負荷というのはそれぞれに違うので、それをリアルタイムでモニタリングしながら、機体そのもののカルテをとりながら、メンテナンスをしていこうという方向に技術的には進んでいます。
参加者: 単純に一番根本的なところで、長距離バスと同じようなことが起こるような気がします。
岩宮: 基本的にはあれは管理の問題だと思います。管理側がある意味ではお金儲けのために、本来やるべきルールどおりのことを行わなかったことで起きたのだと思います。航空機に関しては、昔からそういうものを積み上げてきているので、少なくともそういった法の目をくぐり抜けて飛ばすことは現在できないと思います。それは世界的にもローコストキャリアなんかが出てきて、コストを下げることによってその辺が手抜きになっているのではないかということは、規制当局である日本で言うと、航空局なんかは非常に目を光らせていると思います。
参加者: 純粋に技術の目で見ると、どの辺まで担保できるとお考えですか。単純に、今はまだ大丈夫という感じですか。
岩宮: 少なくとも我々は、その先の技術としてメンテナンスフリーであるとか、今の自動車に近いような状況を技術的には目指したいと思っています。そういう技術は少しずつ取り入れられていますけれども、規制の方は決して民間に任せてやることは航空では一切やっていません。必ず国が全てコントロールするという形で進めています。それは日本一国でやっている話ではなくて、飛行機はやはりグローバルな存在なので、世界全体でそれを見ている。だから、どこかがおかしなことをやっても、お互いにそれは牽制し合うというか、そういう形にはなっているので、一部のところがそのために規制を緩和するということは、現状ではとてもできるような状況ではないです。事故があったりとか、ああいうものを見ると、その辺のところを見落としている部分がないとは言えないので、そういうことを確実にルールの中に盛り込んでいくことは進めていかなければいけないし、現に何かあったら必ず横に展開されて、すべての機体をチェックするというのはされています。それは1つの会社の中で全部を見るのではなくて、それと同じ機体については、全てに対して検査をしなさいというのを規制側がきちんと出して、それをやらない限りは飛べないという形になっていますので、その辺は大丈夫だと思います。