「第73回JAXAタウンミーティング in 鳥栖」(平成24年2月11日開催)
会場で出された意見について
第一部「ロケットの今と夢」 で出された意見
<ロケットの利用方法の今後について>
参加者:現在、ロケットの利用は人工衛星の打ち上げなどに限られていると思いますが、今後どういった利用方法が考えられるとお考えですか。
遠藤:日本ではありませんが、アメリカでは民間の企業がIT長者や個人の大金持ちを対象に実際に宇宙旅行で使うロケットを今、開発しています。ただ、実際に宇宙をぐるぐる回るにはハードルが高いので、最初は弾道飛行と言って、100km以上の宇宙と言われるレベルまで飛び上がって、そこで無重力状態を体験して降りてくるというビジネスを始めています。それが更に進むと宇宙旅行。実際に皆さんがお金を払って宇宙に滞在する観光旅行が可能になります。その他に、これはもっと夢物語ですが、静止軌道高度3万6,000kmに大きな太陽電池を展開して、そこからマイクロ波あるいはレーザーで地球に電気を送ります。3万6,000kmと言いますと夜も昼も太陽が当たっています。地上では、太陽の光は空気を通ってきますので太陽発電の発電効率は悪いですが、宇宙に行くとずっと効率がよく、24時間、日が当たり24時間電気ができます。ただ、太陽発電装置を3万6,000kmに運ぶ輸送費がかなりの高額になるといのうが現実で、輸送コストを100分の1、1,000分の1にすることが可能であれば、地球にほとんど負荷をかけずに発電が可能になります。しかし、マイクロ波で電力を送って地球に負荷がかからないかどうかは、まだ若干疑問がありますが、そういった研究もされています。現段階では人工衛星を送ったり、人を送って宇宙で実験をする。まだそういうレベルです。
<ロケットの打ち上げスケジュールについて>
参加者:日本では、どういうロケットがどういうときに打ち上げられているのかを教えてください。
遠藤:日本では10年で20機打ち上げましたので、人工衛星やそれに類したもの、大型の宇宙用ロケットを打ち上げているのは年に2機です。では世界ではどれだけ上がっているかというと、人工衛星、有人を含んで、大体、年間60~70機です。昔は軍事利用があったのでもっと多かったのですが、今はそんなに多くありません。去年、中国は20機、ロシアが30機ぐらい打っています。アメリカは10機足らずぐらいです。
阪本:科学関係で観測ロケットという、人工衛星打ち上げ用の大きなものではないですけれど、そういったロケットの打ち上げを年に数機、内之浦の観測所で行っています。鳥栖から内之浦までは、陸続きで行けますので、そちらも是非ごらんいただきたいと思います。
<(1)ソフト関係の開発費用・人員の割合について (2)ソフト系のテストについて>
参加者:(1)JAXA内でソフトウエアの開発費、携わる人員は全体の何%ぐらいを占めているのか。
(2)ソフトウエアのテストは実際に打ち上げてというのは無理だと思うので、どのように行っているのでしょうか。
遠藤:(1)ごめんなさい。ソフトの占める割合というのは残念ながらお答えできないんですが、ロケットだけ見るときっと1割もないと思います。ロケットの全体開発費用にはH-IIAで約1,200億かかっています。ただ、これはH-IIロケットというベースがあった上での費用で、H-IIのときには約1,700億。ですから、3,000億近くかかっていることになります。H-IIBは打ち上げ能力が倍になっていますが、それまで培ってきた技術を駆使して約250億です。1から始めるとそれなりにかかるということです。
(2)ソフトウエアの検証という意味では、最初はソフト上で行います。検証を行うときには通常のケースだけでは、バグがどこにあるかわかりませんので、極端なケース、3σ(シグマ)どころではなくて9σ(シグマ)というぐらいの幅広い、実際の現象としてこんなことないだろうというぐらいのシミュレーションをしながら検証します。大変なお金をかけながらステップ・バイ・ステップで、最終の打ち上げに臨むという方法です。
<宇宙ごみへの対策について>
参加者:いま問題になっている宇宙のごみについてお答え願います。
遠藤:宇宙ごみ、「デブリ」と呼んでいますが、大変たくさん地球の周回軌道には存在しています。何でこんなに発生しているかというと、開発初期のころ、ロケットが宇宙で爆発してしまったり、衛星も爆発して塵が飛び散った。宇宙ステーションの周りにも宇宙のごみがたくさんあります。大きなものは地上からレーダーで観測ができますので、当たりそうだったら回避しています。小さいものはさすがにレーダーでもわかりませんので、ぶつかっても直接被害が出ないように、宇宙ステーションにはプロテクターを付けています。実際、幾つか小さいものは当たっています。いずれにせよまだ増える可能性はあります。日本は無害化して爆発しないように対策をしっかりしながら、ロケットや衛星を宇宙空間に打ち上げています。併せて、既に存在するものは回収する研究を進めています。投網のように宇宙空間でごみをごそっと見つけて、高度をずっと下の方に引っ張っていって、最後は大気圏に突入させれば燃え尽きてなくなる、というようなことを検討しています。ただ、それをリーズナブルかつ合理的なコストでできる技術は、まだ今のところありません。ですので現在はそういった技術の研究を併せてやっているのが現状です。
寺田:少し補足します。まずデブリの質問ありがとうございます。タウンミーティングでは割と多く出る質問で、皆さまのお手元に「よくある質問」という形で資料を入れていますので、併せて参考にしていただければと思います。とにかくデブリが増えないように、それから、打ち上がった衛星をむしろ積極的に地球に落として、その時に全部燃え尽きさせてしまおうというのが、今のデブリ対策の流れになっています。
<(1)地元の方々の協力について (2)ISSの中にある速度計について>
参加者:(1)「はやぶさ」が大気圏に突入した際の動画で、声が入っている場面がありましたね。あれを映した人は佐賀出身だと聞きましたが…。
(2)ISSの中に速度計があってマイルと日本の自動車並みに時速が出るそうです。そういうものが本当にあるんですか。どうして速度が出るのだろうかと不思議でなりません。
阪本:(1)多分、地元の方が写真を撮られたんだと思います。実は佐賀県の宇宙科学館の職員さんも今日いらっしゃいますので、後で直接お話いただくのがいいかなと思いますけれど、実際にいろいろご協力をいただいています。本当に地元の方に感謝をしています。ありがとうございます。
(2)スピードメーターの話は私は聞いたことはないですけれど、スピードオーバーと言われてもスピードを落とすと落ちてしまいますので…。
西浦:でも嬉しいですね。そうやって研究していただいて、我々をいつも応援していただけるというのは本当にありがたいことだと思います。ありがとうございます。
<ロケットの燃料について>
参加者:今後、ロケットの液体燃料で何か新しい推進力が得られそうなものの開発などは進められているのでしょうか。
遠藤:推進薬の組み合わせはいろいろあります。日本では高性能だということで液体酸素と水素を使っていますが、ロシアはケロシンと液体酸素を使っているものもあります。ケロシンというのは言ってみれば灯油です。ただ、液体水素を使った方が燃費、性能はいいです。ケロシンは比重が大きくて水に近いのでコンパクトにロケットができます。だから性能をとるか大きさが小さくできるのがいいか、使い道やそれぞれの国の技術などで使い方を変えています。日本、ヨーロッパ、アメリカは液体水素、酸素を使うものが主流になっています。日本ではメタンを使ったロケットエンジンの研究をしていますが、まだ実用にはなっていません。
固体燃料は液体を打ち上げ前に充填したり、温度管理など非常に取扱いが難しい。今の日本のH-IIA、H-IIBロケットは断熱材でタンクを覆うという技術も必要になってきたりと、それぞれいろんな観点から各国とも燃料、酸化剤をチョイスしているというのが現状です。
阪本:ロケットは大きく分けて2種類あるわけです。液体燃料ロケットと固体燃料ロケット。日本で持っている大型の液体燃料ロケットというのは液体水素を燃料としていますので、非常に低温だということと、漏れやすい。扱いが難しいんです。一方で固体燃料ロケットは扱いは易しいですけれど、微妙な調整ができないということで、扱いのたやすい固体燃料ロケットの上段のところに液体の燃料をつけることによって、いいとこ取りをしようと考えています。その際に水素を使ってしまうとまた同じ問題が発生しますので、性能という意味ではやや劣るんですが、毒性がないエタノールとN2O(亜酸化窒素 食品添加剤などに使われるもの)こういった比較的簡単に取扱いができるものの組み合わせで液体燃料ロケットの持っているいい部分を固体燃料の上段に取り付けることによって、より高機能なロケットを実現する。そういうような基礎研究も行っています。恐らくイプシロンロケットにはそれがオプションで積まれることになると思います。
<(1)アポロ11号の月面着陸について (2)UFOの存在について>
参加者:(1)「かぐや」が撮った画像でアポロ11号が本当に月面着陸(着陸船の残された部分の確認)したかどうかの証明はできないでしょうか
(2)UFOが地球に来ている目的は何でしょうか。
阪本:実はこのテーマで先日講義をしてきました。アポロがねつ造だと考える論拠は幾つか指摘されているんですけど、すべて論破されています。
(1)まず、「かぐや」についてですが、「かぐや」の解像度というのは、月面の地形だけを撮るために打ち上げられたものではないので、月着陸船の姿そのままをとらえることには成功していません。ただ、地形図を非常に高精度でつくっていますので、アポロの宇宙飛行士が降りて撮影した地形と、我々が作成した地形図に基づいて彼らがそこからもし撮ったとしたら、どんな景色が撮れるのだろうかということを照らし合わせると、完璧に一致しているわけです。そういうことで我々のデータもそのことを支持しています。最近NASAの月面探査機LRO(Lunar Reconnaissance Orbiter)で、ついに月面に置かれた着陸船、宇宙飛行士の足跡なども見えています。忘れないでいただきたいのは、アポロの当時というのは米ソが激しく競り合っていました。ソビエトが納得したというのがアポロが月に行ってしまったということの最大の傍証だと思うんです。最初のアポロからの信号をキャッチしたのはオーストラリアでした。そういった国際的な枠組みの中でお互いに牽制しながら、相手の様子を見ているわけです。余り知られてはいないですけれど、ソ連は当時、無人の着陸船を月に送り込んで、月の石を持って帰ってきています。そしてアポロの月の石とソ連の持ってきた月の石、南極の探検隊が持って帰ってきた月隕石を比較すると、それぞれが非常に驚くべき精度の一致を見せるんです。
(2)UFOについては、いろいろな方からお問い合わせをいただきます。幾つかは我々自身に原因がありまして、最近、北海道の帯広あるいは釧路近辺でUFOの目撃情報が増えています。昔は大船渡でした。これは何かというと我々が放球している気球です。直径100mの半透明なものが朝日に照らされてふわふわと動きますので、これは明らかにUFOなんですけれど、明らかに我々の打ち上げた気球なわけです。UFO自体は未確認飛行物体ですから、いろいろなものがあり得ます。例えば、あるおじいさんが上げていた電飾付きの凧とか、そんなものが飛んでいるとやはりUFOになるわけです。我々にはなかなか常識としてはとらえられないんですけど、よく突き詰めてみると、そうことをしている人たちがいるようです。そういう見解です。