JAXAタウンミーティング

「第71回JAXAタウンミーティング in さいたま」(平成23年12月25日開催)
会場で出された意見について



第一部「日本の宇宙科学」 で出された意見



<JAXA2025長期ビジョンについて>
参加者: 2025年の長期ビジョンについてですが、月面であるとかラグランジュポイントの開発というのは非常に強まってくると思っていまして、そこでの限られた資源をめぐって、競争が発生していくと思っています。そのような政治的に絡んでしまうところが長期ビジョンに示されていなくて、JAXAさんとしてはどのように進展していこうと考えているのかと、2025年の長期ビジョンを達成するために現在、日本に足りていないのではないかと思われるところは、どういうところでしょうか。
小野田: 最初の月とかラグランジュポイントの話ですが、まずラグランジュポイントで何かを取り合うということは当面ないと思っています。月については人類の共通の財産として活用していかなければならないものです。月開発の機運は一時期ほどの勢いではなくなってきていますが、あきらめてしまったわけでもなくて、もう少し腰を落ち着けて、各国とも話をしながら助け合って進めていこうとしているところです。2つ目は、長期ビジョンをあのまま実行すると、現在より遙かに多くの予算が必要になってくると思います。目指すにしても、あのスケジュールのままで実行できるかどうかというのは難しいところです。皆さま方のサポートで少しでも総予算が増えて、できるだけあれに近いことを目指していければと思っています。
舘: 月面関係ですと、宇宙条約(正式名称「月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用における国家活動を律する原則に関する条約」)があり、その中では所有を認めておらず、各国が共有することになっていると思います。2005年に長期ビジョンをつくった背景は2つあると思います。3つの機関が統合されて、JAXAができて、我々はこれを行うんだというものを世の中に示す狙いが1つありました。逆にこれを示すことで、3機関が、個別で今までやってきたものが一緒に何かをやっていこうではないかという内向きの統合、一体化を図る役割を担っていて、ルートマップの役割を果たしたと思います。現在の国の宇宙基本計画をご存じかと思いますが、これは前の政権のときにつくった計画で、5年で2倍の予算にするといってつくられたわけです。ただ、現実はこれと全然違う方向に動いています。この宇宙基本計画を国が作成するに当たって我々の長期ビジョンが役立っていたとすれば、それは価値があったんだと思います。今は実現がかなり厳しい状況にあります。
寺田: JAXAは5年ごとに中期計画を定めて事業を行っています。今、話があったようにJAXAは今、第2期の中期計画の中で活動を行っており、24年度が、いわゆる第2期中期計画の最後の年度になります。次の中期計画をつくるにあたって、今、若手を中心にJAXAはこうあるべきだ、宇宙開発をどうしたいというビジョンを策定しています。まだ検討中ですが、1つは有人宇宙活動をどうするのかというのが大きなテーマになるのかなと思っています。宇宙ステーションが完成して、これを使って10年以上運用することになると思いますが、次に何をやっていこうか、有人宇宙活動をどうしていこうかというところが、今後の25年としては大きな話になっていくのではないかと私は個人的に思っています。

<理系の英語での情報発信力について>
参加者: 先ほどサイエンスの雑誌が出ていたんですけれども、よく言われるのは日本の理系の方々の英語での情報発信力が、日本は弱いのではないかというお話があるかと思いますが、英語教育と絡めてどういったことを今後の若い人たちに、そういった発信力を高めていくべきだとお考えでしょうか。
小野田: 特に科学の世界は今や国際時代で、先ほどご紹介したような科学プロジェクトは、すべて国際協力でやっていて、国境のない世界になっています。みんな英語をよく話すし、世界の中で大変よくやっていると思います。ただ、アメリカ人やヨーロッパ人に負けないように外に向かって発信していくような、強いパーソナリティを持つことも大変重要だと思っています。その1つの手段は、英語教育も大切かもしれませんが、若いころ外国の研究所で外国の研究者といろんなことをし、成果の発表のような場面でみんなの中でもまれるような経験を若いうちからしてゆくことが大切だろうと思っています。

<ツイッターとホームページについて>
参加者: 「はやぶさ」「あかつき」などで、ツイッターで広報活動をしてくださっていたので、わかりやすかったという面がありますが、実際にやっている方々の負担になって、あのように発信していても大丈夫なのかということと、今後もツイッターであのような発信を続けていく方針なのかをお伺いしたいのと、JAXAのホームページはとにかくわかりづらくて、友人にこういうものがあるというのを説明してあげたくても、そこのページを直接リンクしたものを送らないとわからないと言われてしまい困っています。もう少しわかりやすくしていただけたらなというのがお願いです。
舘: 私は8月まで広報部長をやっていました。ツイッターについては、今の若い人は自らよく発信します。JAXAもこれからもどんどん発信していきたいと思っています。ツイッターでポイントとなるのは、何でもかんでも発信しては困るので、ツイッターに載せる情報についてはある程度のスクリーニングをしています。ただ、そうは言っても皆さんに、今、これをやっているんだと情報発信することは非常に大事です。これは「イカロス」なり、「はやぶさ」なり、「あかつき」なんかも同様です。続いてホームページの話ですが、これはなかなか難しいです。私も個人的にいろんなホームページをよく見ますが、探し易いというのは少ないと思います。それで、ある考え方に基づいてホームページをつくる方がいいのか、もしくは単純にグーグルみたいに検索で見つけ出す方法がいいのか、どちらをとるといいのかはなかなか難しい問題です。どうするかは今後の課題です。
寺田: 私は8月から広報部長をやっていますが、実はその前は準天頂衛星「みちびき」という衛星のプロジェクトマネージャーをやっていまして、そこでもやはりツイッターをやっていました。プロジェクトのメンバーがツイッターをやっていまして、我々の活動をほぼリアルタイムのやりとりの中で理解してもらうということで、これは結構効果があって、その結果「みちびき」という衛星を非常に皆さんによくご理解いただきました。負担かどうかというと、負担になってもみんなに理解してもらいたいということの喜びが大きかったのかなと思っています。ホームページについてはご指摘のとおり、てんこ盛りになってしまっていて、もう少しさっぱりさせたいなという感じもあるので、今のご意見を踏まえて改善していきたいと思っています。

<試料採取の方法について>
参加者: 「はやぶさ」では弾丸で試料を採るというねらいでしたが、「はやぶさ2」のプロジェクトでは、どんな方法で試料を採取する予定ですか。
小野田: 基本的には同じだと思っています。ただ、インパクターというものをぶつけて、クレーターをつくって、表面でない内部のものを観測したり、できれば採ってきたいと考えています。

<アジアの宇宙開発協力について>
参加者: 予算と人員のことについてですが、日本も経済大国ではなくなってきましたので、独自で予算を獲得するのはなかなか難しく。アジアで欧州連合のように団結して、宇宙開発をするというような模索はできないでしょうか。政治的、軍事的に難しいという部分もあるかもしれないですが、そのような方法も今後広く考えなければいけないのではないかという気がしています。
舘: アジアと一緒にやっていこうということで、アジア太平洋宇宙フォーラム(APRSAF)という会合を年に一度開いており、ここにはアジア各国から集まってきて、どのようなプロジェクトを行うかを話し合います。例えば、災害を監視しようということで、人工衛星を使いながらアジアで起こった災害を監視するプロジェクトを立ち上げました。そして、日本の「だいち」という衛星だけではなくて、台湾の持っている衛星を使うとか、各国が持っている衛星を使っていく取り組みを始めています。あるいは、一緒に小型の衛星をつくろうという計画もあります。こういうような形でアジア全体としてまとまって行動をとる動きを始めています。残念ながら欧州宇宙機関(ESA)みたいな形でまとまるところまでには至っていませんが、いずれ宇宙開発が進んでいくならば、共同で何かをしようという話になると思います。
寺田: アジアというのはマーケット的にも、地域的にも非常に日本から見れば魅力的だと思っています。準天頂衛星「みちびき」は南がオーストラリア、アジア太平洋、日本まで上空が見えますので、そういう1つの衛星システムをアジア太平洋地域の人たちで利用できます。そもそも人工衛星というものはグローバルなものであるので、いかにアジアの人たちと付き合っていくかということが、今後もっと重要な課題になってきて、そういう枠組みを例えばAPRSAFという宇宙フォーラムを通じて協力しながらやっていくという状況です。アジア太平洋地域の連携というのは、今後ますます重要になっていくと考えています。

<ロケットの民間移管について>
参加者: H-IIAが20本打ち上げて19本成功した。その成功率が欧米並みになってきたという報道を読みましが、国家予算も限られてきています。アメリカのロケットは民間主導になったように、日本も限られた予算を考えますと、民間主導のロケット打ち上げを導入するといいのかなと考えました。海外への売り込みなどは民間企業の方が上手だと思いますが、どのようにお考えでしょうか。
舘: まず誤解があるといけませんが、現在打ち上げているH-IIAはJAXAが打ち上げているわけではなく、三菱重工さんが打ち上げています。三菱重工さんが海外のマーケティングを行っていて、H-IIAの21号機では韓国の衛星を打ち上げることになっています。H-IIAの打ち上げについては、既に民間主導で行っていて、アメリカほどではないですが、方向としては同じような動きをしています。
参加者: 1台のロケットで、三菱重工は何割ぐらいの予算を出しているのでしょうか。
舘: 三菱重工さんは衛星を打ち上げてほしいという依頼者からお金をもらって打ち上げます。
寺田: もともとはロケットは国の予算で開発をして、その開発費は何千億という割と非常に高いお金をかけて開発して、その開発が成功した後、技術を民間に移転して、その民間が今、商業活動で各国から受注を受けて打ち上げるという流れになっています。H-IIA、H-IIBまで開発していますが、次のロケットをどうしようかということも1つのテーマになっていて、もっと大きなロケットをねらっていくのか、あるいは有人仕様のロケットにしていくのか。いずれにせよそういう開発はまずは国が行って、それが成功したあかつきには民間に移転していくというのがこれまでのやり方です。ただ、民間が自ら発案してロケットを開発するという例もないわけではなかったですが、例えばGXロケットというのはそういうロケットでしたが、ビジネスとして成り立たなかったということで、うまくいかなかった例もあります。

<はやぶさ2の打ち上げについて>
参加者: 「はやぶさ2」の来年度予算が予定額の半額以下だということですが、この予算で実際に予定どおり「はやぶさ2」を打ち上げることができるのでしょうか、また、最近、宇宙研の方でいろいろアーカイブや論文を上げていただいていまして、昔の映像が見られるということで大変感謝しています。旧NAL、旧NASDA系の方についても昔の映像などを出していただきたいなと願っています。
小野田: 「はやぶさ2」については、「はやぶさ」が皆さんにご支援をいただいていたので大丈夫だと思っていましたが、半額もつかないという状況に非常に残念に思っています。かといって、ターゲットにしている小惑星を逃すと次の適切なターゲットがないので、何が何でもと言うと言い過ぎかもしれませんが、一生懸命頑張って、工夫して予定どおりの目標に打ち上げられるようにしていきたいと思っています。具体的にどうするかこれからいろいろ考えなくてはならないことだと思っていますが、再来年度は必ずちゃんと予算がつくようご支援いただければと思っています。

<自己収入による開発費への補填について>
参加者: 予算が厳しいという話がすごく多いと思います。JAXAの資金としては予算のほかにも技術の使用料であるとか、そういった収入があると思います。そういった収入を拡大することで開発費に充てることはできないのでしょうか。
舘: JAXAの予算規模からすると規模は小さいですが、特許の使用料や売れた物からのロイヤリティを取る等々の収入はあります。一番大きいのは恐らく地球観測画像販売のロイヤリティだと思います。ただ、JAXAが得た収入で開発投資ができるほどの金額には達していません。例えば、ロケットのある部品ができたとして、それを如何に民間利用に技術的に転用していくかというのが課題です。このスピンオフが大事です。建設資材の塗料などのスピンオフがでてきていますが、まだまだ微々たるもので、全体的にスピンオフが小さいのが現状です。
寺田: 直接お金を集める方法として、「寄付」という考えもあって、それについては今JAXAの中で検討して、皆さんから寄付をいただけるような枠組みといいますか、制度を考えているところです。衛星1つ開発するには何百億というお金がかかりますので、寄付だけで衛星開発というのは難しいかもしれませんが、それは皆様の心の支えになっていくと思いますので、そのようなものができた際には、ぜひ皆さんから寄付していただければなと思います。

<(1)将来ビジョンについて、(2)日本の予算の各国との比較について>
参加者: (1)子どもたちには、日本あるいは人類として20年、50年、100年後は宇宙で人類がどういう状態で生活をしているのか、子どもたちが図画で描くような世界が本当に実現するのかというお話をしていただきたいということと、(2)夢のないお金の話になりますが、ヨーロッパ全体ではこれだけで日本はこれだけでという図を出されましたが、日本は一国でヨーロッパの3分の1か4分の1を占めていたわけで、逆に日本は多いのではないかと単純にそういうふうにとられる場合もあるのではないかと思いました。もう一つは中国やインドの予算はどのぐらいになるのかなど、事実をちゃんと示されないと、日本の予算が世界的に単独では多いのか少ないのか非常にわかりづらいです。
小野田: (1)おっしゃっているように将来の道筋を示すことは、なかなか難しい面もあります。宇宙科学に限ってお話しますと、宇宙を支配している原理は何であるかというのが最終的なゴールの1つだとして、そこにたどり着くための道筋というものが今、我々から見えるわけではありません。そこにたどり着くにはいろんな今は見えていない道を探さなくてはいけません。ちょっと表現が難しいですが、向こうの方にヒマラヤの頂は見えていてもその頂にたどり着くまでの道は今は見えていませんが、1つ手前にあるあの山のてっぺんに登れば、そこから先の道が見えてくるというようなもので、試行錯誤しながらどうやったらゴールにたどり着けるかというのを見つけ出していかないと、たどり着けません。ですから30年先、40年先にこれをやりさえすれば目標にたどり着けるんだというのは、なかなか言えないという面があります。しかし、例えば10年先なら、ラグランジュポイントから大きな望遠鏡で宇宙を観測したいといった話が具体的に語られています。
寺田: (1)火星に有人基地をつくろうというのが1つ、どういうアプローチでそこまで行けるかというのはあります。火星に人が住めるような基地をつくるというのが、ある意味で宇宙科学での1つの目標になってくると思います。
(2)予算の話ですが、確かにヨーロッパ宇宙機関というのは特殊でありまして、いろんな国からの出資を集めてやっているので、見かけ上、日本の予算よりも大きく見えるということで、本当はこれを一つひとつの国にばらさなければいけないんですが、1つ言えるのは、例えばこの中で構成しているフランスなんかはヨーロッパ宇宙機関に出しているお金と、自前でやっている宇宙予算というものがございまして、それを足すと日本よりも大きな予算を使っています。ドイツはたしか日本よりも少ないお金だったと思います。ここに出ていないロシアや中国は額はわかりませんが、日本よりも大きな予算を使っていると言えると思います。

<子どもに対する教育、普及、啓発活動について>
参加者: さいたま市は若田光一さんの出身地です。本当に世界的な活躍をしている若田さんがここから出身したということは、私たちにとってもとても誇りで、再来年また国際宇宙ステーションの船長さんになるということで報道されていまして、大変私たちに希望を与えてくれています。若田さんは5歳のときにアポロの月面歩行を見て、夢を持って宇宙飛行士になりたいと努力されて、ご活躍されていますが、閉塞された状況の中で子どもたちに夢とか希望を持たせていきたいなと考えたときに、宇宙というのはすごく夢があると思っていますが、「はやぶさ」はそういう点で大きな夢を与えてくれましたが、若田さんのこととか、古川さんのこととか、日本人も大分活躍していますが、もう少し子どもたちに直接PRできたり、夢を持たせるような企画をしていただけたらと思います。例えばこのタウンミーティングに子どもも少し来ていますが、全国で子どものタウンミーティングをやってくとか、NASAと提携してホームページで例えば若田さんから月に何回かホームページで近況を語るとか、そのようなもっと身近になるような発信をしていただけたらありがたいと思います。
寺田: 大変貴重な意見でありまして、ぜひ子ども向けの何か夢を持たせるような企画を考えたいと思います。JAXAの中では宇宙教育センターというものがあって、小中高校生向けの教育プログラムもありますですが、確かにタウンミーティングという形で子どもたちともっと意見交換をして、それで子どもたちに夢を直接見させるような企画をぜひ考えたいと思います。
舘: 今日この館でコズミカレッジをやっていたと思いますが、これは私どもJAXAの職員及び教育者の方が来て、子どもたちと一緒に工作や実験をします。そういう機会を全国でJAXAは展開しています。私どもの相模原に宇宙教育センターがあり、こちらでは宇宙の学校というものを催したり、いろいろなイベントを実施しています。ただ、そんなに職員がいるわけではないので、お目にかかる機会が少ないのかもしれませんが、引き続き続けていきたいと思います。
小野田: 対象は高校生になりますが、宇宙科学研究所に高校生が集まって、グループを作り、泊まり込みで4日間ぐらいかけて、グループごとに自分たちの宇宙ミッションを作ってみる、と言うようなイベントもあります。大学院生が中心に指導について、こんなことを考えてみたらどうかとか、そんなことを考えても宇宙ではそうはいかない、こういうことを考えなければいけないよとか、そのような指導をしながら、とにかく彼らの頭で考えさせて、宇宙ミッションを仕上げてもらうということをやっています。宇宙を目指す方にとって大変いい機会を提供していると思いますので、高校生になられましたらそういうことも考えていただいたらいいのではないかと思います。
寺田: 実際に活動を行っているのですが、まだまだ活動そのものの認知度も少なくて、このようなご意見も出るのかなと思いますので、そういうところを改善しながら活動したいと思います。

<(1)日本版ボイジャーについて、(2)はやぶさ2のインパクターの個数について>
参加者: (1)日本も「ボイジャー」のような探査機はつくらないんですか。(2)「はやぶさ2」は何個インパクターを持っていきますか。
小野田: (1)我々の太陽系を飛び出すような探査機はまだやらないのかということですね。今はJAXAでは余り考えていません。その理由は、1つは太陽から大変遠く行ってしまうとエネルギー源の確保がなかなか難しくなってしまいます。太陽からある程度の距離にあれば、太陽電池でエネルギーを何とかできますが、それより遠いところに行くとなると原子力を使うしかありません。これから先、我々も原子力を使ったエネルギー源というものを考えなければいけない時代になってくるかと思いますが、今のところまだそういう技術を持っていなくて、とりあえずは太陽の光がエネルギー源となる範囲の探査に力を入れています。
(2)「はやぶさ2」のインパクターは1つだけ持っていくつもりです。これをぶつけるときには爆発していろんなものが飛び散るので、「はやぶさ2」本体も危険になる可能性があります。だからインパクターを切り離した後、「はやぶさ2」は小惑星の裏に回って、安全なところに隠れた状態でインパクターを爆発させるということを考えています。

<はやぶさ2のエンジンについて>
参加者: 「はやぶさ」はイオンエンジンを推進機としてイトカワに行きましたが、「はやぶさ2」は何エンジンで行く予定ですか。
小野田: 「はやぶさ」はイオンエンジンを軌道変更のための主エンジンとして使ったわけですが、「はやぶさ2」もその意味では同じようにイオンエンジンを使って行います。イオンエンジンは大変燃費はいいですが、大きな力を瞬間的に出すというのは苦手ですので、イオンエンジンだけでなかなかミッションは達成しにくいところがあります。だからどちらもイオンエンジンと化学エンジンを載せていますが、軌道変更の主なところはイオンエンジンが担うことになります。

<はやぶさ2のターゲットマーカーについて>
参加者: 「はやぶさ」はターゲットマーカーを使いましたが、「はやぶさ2」はどうする予定ですか。
小野田: 恐らく「はやぶさ2」の場合にも使うと思います。それがあると大変着陸しやすいということです。
寺田: 「はやぶさ2」はとにかく「はやぶさ」みたいに壊れないような、故障しても大丈夫なような設計をすると言っています。ですから、今度はちゃんと無事に着陸してサンプルを回収し、無事に地球に帰ってくると思っています。

<(1)宇宙開発技術の実用化について、(2)情報収集衛星について>
参加者: (1)宇宙開発技術を実用技術に結び付ける仕組みなり組織があるのかどうかということと、NASAではどうしているのかというのをお聞きしたいです。
(2)偵察衛星を打ち上げたという話がありますが、日本の場合は防衛省との関わりでJAXAが何かしているのか、情報交換みたいなことをやっているのか、お聞かせください。
舘: (1)私どもには「産業連携センター」という組織があります。スピンオフの話をしましたが、逆にスピンインということで民間の技術を取り入れることもやっています。NASAそのものは私は詳しくありませんが、恐らくNASAについても同じようなスピンオフの部局があるのではないかと思います。
(2)情報収集衛星のことだと思いますが、情報収集衛星は内閣官房が担当しおり、JAXAは衛星の開発を受託しています。詳細については残念ながらここにいる我々は知りません。防衛省がどうのこうのという詳細は、申し訳ないですが、私もわかりません。
寺田: 人工衛星の利用等については、後半の方で話題を提供して、またご意見いただければと思いますが、防衛省との連携というのも今後の課題かなと思っています。今後どうするか、平和利用というものに関わると思うので、慎重に連携と言うんでしょうか、お付き合いをしているという状況です。