「第70回JAXAタウンミーティング in 別府」(平成23年12月17日開催)
会場で出された意見について
第一部「JAXAの産業連携活動」 で出された意見
<昔話と科学について>
参加者: 日本の昔話で、浦島太郎とかぐや姫がありますが、かぐや姫は実現しましたが、浦島太郎はまだなのでしょうか。子どもの視点から見るとそういう疑問が出ます。
阪本: 竜宮城に行く方は、JAMSTECさんにぜひ頑張っていただきたいと思っています。
西浦: 昔の人たちが考えるような夢に基づいて神話、伝え話ができましたが、それが人間の考えることというのはいつの時代も共通項があるのだと思います。それが科学によって実現できたということは本当に素晴らしく、私どもも誇らしいことだと思っています。
<デブリの問題について>
参加者: 地球もごみだらけですが、「宇宙ごみ(デブリ)」も問題になっていると雑誌で見ました。国際的な問題であるので日本だけで活動してもどうにもならないと思いますが、ごみの回収や処分について考えていかないと、人工衛星を上げるばかりで、ぶつかって緩衝したり、この前のドイツやアメリカの人工衛星が落ちてきて、何事もなかったからよかったですが、今後そのようなことが起きないように対策を考えていただければと思います。
寺田: ご指摘のように宇宙にはたくさんのごみ、「デブリ」と呼んでいるものがあります。ちなみに10cm以上の物体は現在NASAの情報によると、2万2,000個ほどあるようです。1~10cmだと50万~70万ぐらいのごみがあるということで、大変な状況になっています。このようなごみをいかにこれ以上発生させないようにするかと、世界的にルールづくりが行われています。ごみの原因となっている大部分は打ち上げた衛星と、打ち上げ時に発生するいろんな部品などですが、まず打ち上げた衛星は現在、運用終了の衛星が2,600個ぐらいあります。このような衛星が、だんだん軌道が下がって落ちてきますが、この前のドイツの衛星やその前のアメリカの衛星のように燃え尽きずに落ちてきて、お騒がせしてしまうので、そうなる前に軌道を下げて、かつ、燃え尽きるように設定しようとしています。燃え尽きない場合には、人間に被害が起こらないように安全なところに落そうとルールづくりをしています。非常に緊急な課題で、非常に重要な課題だと世界各国認識しているので、ちゃんとルールをつくって宇宙をきれいに使っていこうという話し合いがなされています。
<日本の予算規模について>
参加者: 日本の宇宙開発に関わる予算が、非常に少なくてびっくりしました。アメリカのNASAは、1兆円規模で、ヨーロッパは5,018億円、日本が1,800億円ということで、世界第3位の経済大国の割には少な過ぎるとびっくりしました。EUはドイツ、フランス、イタリア、英国などの共同体なので、日本は実質的には世界2位ぐらいの予算なのでしょうか。欧州宇宙機関のESAの内訳がドイツ、フランス、イタリア、英国が何%で、各国別に言うと日本はどれぐらいの予算規模を持っているのでしょうか。
高橋: 直接の答えはもっていませんが、日本の予算は推移を見てもとても残念なのが、一番左端の昔はヨーロッパと比べても余り差がなく2,200億ぐらいだったのが、10年ぐらいでどんどん小さくなる傾向で、更に事業仕分けがあって非常に厳しい状況にあります。総理は宇宙、海洋は非常に重要なので重点施策としてやっていくという方針を出していますが、予算は来年も厳しい状況かなと思っていて、世界との差は広がる方向にあります。中国のデータはありませんが、韓国や中国など各国どんどん力を入れていく中で、日本の宇宙予算は余り伸びない状況です。ただ、余り伸びない予算の中で非常に幅広い活動を、非常にいい成果をあげながらやっているということでは、世界中から賞賛されており、できれば予算ももっと増やして、もっといい活動をやりたいと思っています。
寺田: ESAはEuropean Space Agencyの略で「イサ」と呼んでいますが、ヨーロッパの主要国、たしか今は13か国か14か国が加盟してまして、フランス、ドイツ、イギリスといったところがESAにお金を出資して、ヨーロッパ全体として活動を行っているというものです。各国の事情を申し上げますと、例えばフランス、ドイツはESAにお金を出資しているほかに、単独で行っている宇宙活動もありまして、予算的に言うとフランスが多く、ESAに出資しているお金と自前でやっている宇宙開発予算を足すと、日本の予算よりも大きくなります。フランスに続いて、たしかドイツが2番目で、日本よりも少し少なくなります。1番アメリカ、2番フランス、3番手か4番手ぐらいが日本になるかと思います。
阪本: これはあくまで公開されている資料に基づいていますので、非常に大きな活動をしているロシア、中国の2つが入っていませんが、ロシアも中国もそれぞれが有人の宇宙開発を行っています。日本はなぜ有人をやらないのかとよく聞かれることがありますが、それは有人の宇宙開発をやろうと思うと非常に膨大な予算がかかるからです。有人を行っているロシアと中国については日本よりも多いのではないかと思います。
参加者: 感想として非常に日本国民として悔しい思いをしました。
西浦: 2~3週間以内のことですが、フランスのサルコジ大統領がCNESというフランスの宇宙機関を訪問して視察し、その場で追加予算を与えました。そうすると、国民から大人気、強いフランスをアピールしたということで、選挙が間近ということもあり、そのようなアピールの仕方がフランスでは国民に受けて、世論、マスコミの論調も非常に有利に働きました。宇宙開発ということに国をあげて非常に力を入れています。残念ながら我が国ではそういう方向ではないように思います。ですから皆様方の引き続きの応援が大きな助けになりますので、よろしくお願いします。
<有人技術の研究について>
参加者: 将来的には有人についても行っていただきたいと思っていますが、ただ、今の日本の現状から見ると、センサーのようなものを高度化して、農業の稲の実り具合や公害の発生状況など宇宙から日本の国土の状況を調べられるような技術の習得を5、10年行ったあとに、有人飛行について基礎的な技術の研究を行っていけばよいと思いますが、いかがお考えでしょうか。
西浦: ALOS「だいち」という衛星が打ち上がっていたので、今回の災害の際にもたいへん役立ちました。国土は十分調査でき、世界にもデータを提供することで国際協力をしてきた状況です。ご指摘いただいた農作物に関しても寄与していますし、更に水の流れ、動きがわかるような「しずく」と命名された「GCOM-W1」という衛星が打ち上げられる予定です。
寺田: 3月11日の東日本大震災前後の画像を「だいち」で取得して、災害対応をしている対策本部などに提供していました。ご指摘のように、JAXAは実用的なセンサー技術、そのセンサーからとった画像を基にいろんなところに実用的な貢献をしています。一方、有人技術はどうかというと、着々と有人技術も蓄えられています。それは国際宇宙ステーションという国際共同プロジェクトによって、多くはアメリカ、ロシアから学んでいますが、そこで学んだものを基礎にして、あと足りない部分を研究開発しようとしています。足りない部分の代表的なところは、自前で人を乗せてロケットを打ち上げて宇宙に運ぶことですが、もし事故があったときに無事に人間を還すための脱出カプセルの技術がまだ足りていません。そのような部分はアメリカやロシアから教えてもらえないので自前でやらなければいけませんが、そのようなものに着手するとものすごくお金がかかるので、皆さんの支持がないとできません。有人をやるからには、皆さんの支持を得てからやろうと考えています。
西浦: 技術という面では、有人飛行技術も可能なところにきています。無いのは、お金です。潤沢な予算がつき、資金があれば、私どもでもできると思っていますし、すでに、国際宇宙ステーションに、物資輸送機「こうのとり」で物資を運ぶ技術は持っていますので、あとは物資ではなく人間を乗せた場合に大気圏で燃えてしまわないように還せば良いわけです。その技術はアメリカ、ロシアは持っています。そのような研究はJAXAでもしていますが、引き続き、予算は足りないながらも頑張っていきます。
<産業界からの協力について>
参加者: ロケットの活用という面では非常にいろんな方面から検討されていますが、「はやぶさ」が今回成功した中で、それまでなかった技術あるいは飛躍的に信頼性を高めた技術とか、そういうものをPRして、産業界に対してこういう技術があればいいなというものを言っていただけると、産業界が協力することができるのではないかと思っていますが、どのようにお考えでしょうか。
高橋: JAXAの中の制度で「JAXAオープンラボ」という制度があります。その制度の中でJAXAとしてこういう技術課題、こういう技術とかこういう製品が欲しいと、広く日本中から提案してもらうようお願いして、その提案の中から毎年選んで、最大3年間の研究期間ですが、共同で研究しながらそれを仕上げて、それで宇宙活動に生かしていくというようなことを始めています。技術課題を示したのは今年が初めてでしたが、JAXAのホームページで公開されていますので、JAXAは今、こういうものを欲しがっているんだなというものを見ていただいて、広くいろんなところから提案をしていただければと思っています。
阪本: 宇宙には先端的な開発を行っている部門があります。宇宙科学です。これは直接の応用を特に意識しておらず、どう芽が出るか全く読めません。「はやぶさ」を地球に還す立役者となったイオンエンジンも非常に大きく取り上げられましたが、ここまで伸びるとは正直当初は予想していませんでした。宇宙で開発された技術は宇宙で使うのが一番ダイレクトな応用で、静止衛星の軌道はだんだんずれてくるので、それを頻繁に修正するために、あの技術が使われています。まだまだ大きなマーケットに広がっているわけではありませんが、他のものにも転用されているということをお知らせしておきたいと思います。
<広報活動について>
参加者: JAXAがホームページだけではなく、いろいろな媒体を使って広報活動していることがわかったが、新しいことや素晴らしいことが宇宙で見つかったということを、いろんなメディアを通じて発表していただければ、すごく嬉しいと思います。
西浦: 広報の立場からも、画期的な広報活動を展開するにあたり、予算がもっと欲しいと思っていますが、幸いにもマスメディアの方々に宇宙ファンが増え、ニュース番組の中でもJAXAの活動や成果を頻繁に取り上げていただく機会が増えました。大変ありがたいことだと思っています。独自の番組になると、予算が絡んできますが、NHKさんは今年度だけでも特番を年間で53本、3時間以上の大型スペシャルも年間5本もつくってくれました。これは本当に素晴らしいことで、これほどの宇宙に対する力の入れようは、大きな励みになります。民放各局にも積極的に取り上げてもらっています。
寺田: ホームページに力を入れているのは確かですが、今のインターネット環境を使ってYouTubeにJAXAの情報を載せるとか、生映像を月に1回程度放送しています。どうしてもインターネット環境を使ってお知らせするというのがメインになっていますが、それ以外にもテレビやラジオなどの取材にはとにかく積極的に応じて、そういう機会を使ってどんどん情報を発信していこうという活動も行っています。紙媒体、ラジオやテレビを使っていろいろ情報を流すような努力をしていますので、ぜひそういうものにも注目いただければと思います。
阪本: 当然ホームページとかメディアを使っていくわけですが、やはり取り上げてもらえるかどうかというのは非常に問題になります。また、科学番組に取り上げられても、科学番組をご覧にならない方にはアクセスできません。それを解決するために、例えば映画ですとか、バラエティに我々研究者が直接出ていきます。映画に取り上げられることによって、さまざまな芸能系あるいは女性週刊誌などにも取り上げられるようになってきています。そういうちょっと違う層にアプローチするというのを戦略的に行っています。あとは、研究者が直接講演会をやっていて、私自身も昨日は保戸島にいましたし、明日は岡崎にいます。年間150回程度講演をしていますが、直接ターゲットの方々のところに足を運んでお話をしていくという努力を現在もやっています。今後も、体が続く限りやっていきたいと思います。
<アピール方法について>
参加者: 今、仮面ライダーを毎週やってますが、主題歌のところに毎週JAXAの筑波が映っているはずですが、JAXAのホームページにも取り上げてもらっていますよということが掲載されていないし、仮面ライダーのホームページにも「毎週主題歌で使っている場所は筑波ですよ」というリンクがありません。メディアに掲載してもらうようもう少し連携してほしいと思います。それと絡みますが、特に宇宙探査系で目的と手段がJAXAの方でちゃんとアピールできていないものがあるのではないでしょうか。例えば「はやぶさ」でもイトカワに行くまでが本来の目的だったのに、勝手にどんどんハードルが上がってしまって、帰って来られなければだめだというふうになってしまったりとか、もう少しアピールをちゃんとして、このようなことをするから宇宙に行きたいんだというのを明確にするようにしてくれたらいいなと思っています。
西浦: ご指摘のとおりですが、国の予算で活動させていただいているものですから、様々な兼ね合いがあります。「はやぶさ」に関しては、いわゆる「サンプルリターン」を成し遂げ、カプセルの中身がちゃんと入っていたということで、多いに救われました。今後の更なる研究で、より一層の成果を出せるのではと確信しています。
阪本: このことについては第二部で私の方から説明したいと思いますので、できればそのときに議論いただきたいと思います。こちらとしてはいろいろお伝えしようと思ってはいますが、最先端の科学そのものについてうまく浸透させるというところに至っていないというのはおっしゃるとおりだと思います。努力を継続したいと思います。
<宇宙に携わりたい人への教育について>
参加者: 進路で大学などを調べていますが、宇宙に関する学部・学科が少ないと思います。JAXAの職員の数も1,500人程度で少ないと思いましたが、もう少しそういう宇宙に携わる人を教育する場を増やしてほしいなと思います。
寺田: JAXAの採用ですが、1年に数十名ぐらい採用していますが、ただ、必ずしも宇宙の専門家ばかりを採っているわけではありません。材料ですとか電気ですとか機械ですとか、あるいは生物をやっている方もいます。そういう形で確かに大学に宇宙学部・学科は余りありませんが、機械でも電気でも情報でも、JAXAに入社するチャンスは幾らでもあると思います。JAXA自体は残念ながら千数百名で、これも国の予算がだんだん減ってくると同時に定員も減らしていくという方向なので、なかなかJAXA職員の人数を増やすことは難しいですが、その代わりに協力いただいている企業さんがたくさん出てきています。例えば衛星の試験を専門にやる企業ですとか、衛星の運用を専門にやる企業ですとか、そういう形で宇宙開発に携わるところもたくさんありますので、少し広い目で見ていただければ宇宙活動に関わるチャンスは幾らでもあるのかなと思います。
<イオンエンジンについて>
参加者: 「はやぶさ」の帰還にすごい感動を覚えましたが、私の感動した理由の1つに、7年間も「はやぶさ」が宇宙の中にいられたというイオンエンジンについて、どうして7年間もイオンエンジンを使用することができたのか、詳しくお聞かせください。
阪本: 「はやぶさ」については、第二部でいろいろお話したいと思いますが、「はやぶさ」の計画自体は当初は4年で行って帰ってくる予定でした。それが途中いろんなトラブルがありましたので、帰還が3年延びて、最終的に7年になりました。イオンエンジンは燃費はすごくいいんですが、非常に力の弱いエンジンで、その弱い力を細々と、しかも継続的に出していくというのが非常に重要でした。従来方式とは異なる方式を採用して長寿命化を図ったわけです。もう一つ誤解しないでいただきたいのは、7年間ずっと噴かし続けたわけではなくて、イオンエンジンで加速をするのに適したタイミングとそうでないタイミングというものがありますので、それをうまく使い分けて、適切なタイミングで力を出し、それ以外の不適切なタイミングではお休みさせておくということによって、最終的に7年間の運用を完遂して地球に戻ってくることができたということです。技術的にはまずイオンエンジンの通常の方式ですと、どうしてもイオンをつくる部分が劣化していくわけですが、それがそうならないように新しい方式を開発したということと、無駄に噴くのではなくて、適切なタイミングにそれを使っていったという、その2点が非常に大きかったのではないかと思っています。
<火星計画について>
参加者: 日本の政治家の宇宙への関心が低いことを危惧しています。政治家への宇宙の教育のようなことをしてもいいのではないかと思います。 それから、火星への計画があれば聞かせてください。私はアメリカが頑張っても、どこが頑張ってもいいと思っていて、人類の代表として頑張ればいいと思っています。国際宇宙ステーションみたいにみんな共同でやって、火星飛行も、国連が音頭をとってやるぐらいのことでも良いと考えています。
阪本: 火星へのアプローチというのは大きく分けて2通りあると思います。1つは無人による科学探査です。それについては現在もアメリカだけではなくていろいろな国が大変興味を持って、そして特に火星における生命の探査、地球に似た星ですので、その環境等について調べたいということで、それぞれの国がそれを実施しようと考えているところです。JAXAの方でもまだ、いわゆるワーキンググループレベルでの検討ではありますが、火星を総合的に探査したいという希望がありますので、それに向けて一体何をどうやればいいのかということを、基礎的な検討を始めているところです。もう一つ、有人による火星の探査ですが、これについてはステップを踏んでいく必要があるのではないかと考えています。日本はまだ有人の宇宙飛行というのがそもそもできていませんので、それを語るレベルにはないのかもしれませんが、アメリカ等がどのようなことを考えているかというと、まず一旦は月を目指して、その次に小惑星のようなものを経験した後に、火星に送り込むという段取りになっているのではないかと認識しています。
<ロケットの打ち上げ時期について>
参加者: 種子島に行って、H-IIBの打ち上げを日中見たいと思っていますが、ホームページで調べても、載っていませんでしたので、日中の打ち上げはいつなのか教えてください。
寺田: 「こうのとり」の打ち上げですが、現計画では23年度打ち上げになっていますが、いわゆる国際調整で積み荷を決めている関係もあって、まだ打ち上げ時期が決まっていません。打ち上げ時期によって、打ち上げ可能時間帯が決まりますので、H-IIBが昼の打ち上げになるかどうかというのは現時点ではわかりません。GCOM-W1「しずく」については、たしか昼の打ち上げになろうかと思います。(※)ただ、残念ながらいつ打ち上げというのはまだ決まっていません。
<特許収入について>
参加者: 日本でしか生まれない発想で物をつくって、それを海外に売るとか、特許を取って収入をもっと増やすとか、そのような方面を重点的に行わないと日本は借金だらけで先細りになってしまうので、そのような観点で事業を進めていっていただきたいと思います。
西浦: おっしゃるとおりで日本独自の、日本ならではの発想に基づいて、それを世界に発信して、それがまた収益に結び付くという形が望ましいと思います。JAXAでも、世界初の偉業を成し遂げたとか、世界初というものは結構あります。今後も、継続努力していきます。
高橋: H-IIAロケットで韓国の人工衛星を打ち上げるとなると、実際に打ち上げを行う三菱重工に収入があります。ただ、そのH-IIAロケットにはJAXAの技術もいろいろと使われていますから、その技術の使用料ということで三菱重工からJAXAに支払われますが、額はそんなに大きくはありません。「トルコサット」の例もあって、あれはトルコに日本のメーカーが人工衛星を売って、何百億かの収入があがります。その中にもJAXAの技術が使われているので、同様にJAXAにも収入があがることになります。海外に売れると何らかの格好で日本にも直接大きな収入になります。まだまだ例は少ないですが、そういう目に見える形で収入があがるようなことを今後もどんどんやっていきたいと思っています。
<次世代のロケットの開発について>
参加者: そろそろ次の世代のロケットの話が出てきてもいいと思いますが、大体話はどこまで進んでいるのかということと、そのロケットが開発された場合、今のH-IIのシステムはどうなるのですか。 ロシアなどを見ているとエンジンを寄せ集めてクラスター化してロケットをつくっていたりとか、同じロケットを使い続けて信頼性を高めたりとか、獲得した技術を使い続けながら新しい技術の開発を進めているようですが、日本ではどうなのでしょうか。
高橋: 先ほどはLEXエンジンの研究を産業強化策でやっているという話をしましたが、H-IIAの次の基幹ロケットに使えるといいなということで、エンジンの開発は非常に時間がかかりますから、あらかじめ行っています。機体の構想などもいろいろ絵は描かれているようですが、いずれにせよ国の方から新しい基幹となるロケットの開発の許しと、計画をつくってもらわないと正式には着手できませんので、早く決めてもらうよう頼んでいるような状況です。JAXAとすれば1日も早く行いたくて、できれば国際的に協力もしながらやれるところはやりたいということは思っています。ロケットを開発するというのは非常に時間がかかりますから、本当にいいものができ上がるまでは多分、試運用しながらで10年ぐらい大体かかります。H-IIAは当然その間は使い続けますし、場合によったら新しいロケットがどうなるかにもよりますが、並行してその後も運用するというのもあろうかと思います。
寺田: まさにH-IIAはこれからもまだ小さな改良を重ねて10年ぐらい使い続けることになると思います。それと並行して仮称H-IIIを立ち上げていくのかなと思っています。ヨーロッパにアリアン5という大きなロケットがありますが、アリアンで打ち上げる予定だった衛星を、アリアンがトラブルにあって、H-IIAで上げたいとなったときに、アリアン5のフルを使うぐらいの大きさは無理ですが、ダブルロンチぐらいの大きさの1個の衛星を上げることができるような改良を加えていこうというような形で進めています。
※ 第一期水循環変動観測衛星「しずく」(GCOM-W1)の打ち上げ時期について、正しくは夜間の打ち上げになる予定です。