「第63回JAXAタウンミーティング in 福岡」(平成23年7月18日開催)
会場で出された意見について
第一部「宇宙航空研究開発機構(JAXA)の現状と最近のトピックス」 で出された意見
<フェアリングの回収について>
参加者:ロケット打ち上げ後に、フェアリングを回収するという話を聞きました。回収されたフェアリングはその後どうするのですか。
舘:通常はフェアリングを回収していません。落ちた後、海の中に沈みますが、ときどき沈まずに浮いているものがあります。それについては船舶に当たっては危険ですので、回収して破棄するか、場合によっては展示に使用しています。
<予算と学生への広報活動の展開について>
参加者:今から必要になってくるのは予算取りと、次世代の技術者の育成が大事になると思いますが、次世代の技術者を育てるために、現在の学生たちに向けての広報活動を今後どのように展開していくのかお話をお聞かせください。
瀬山:予算については、頑張るのみで、早く国の財政が立ち直って宇宙に投資してくれることを期待しています。技術者の育成のために、強力に進めているのは「宇宙教育」です。小学生から高校生まで対象にしていまして、学校の先生が宇宙を題材にした授業をする際に、先生と共同で授業作りを行うなどの支援を行っています。昨年から教科書に宇宙の写真や物語など入ってきていて、大変うれしく思っています。また、「コズミックカレッジ」というものを学校、教育委員会、科学館などと共同して開催しています。これはJAXAの専門家が出て行き、工作や宇宙の話などを行い、宇宙のことを勉強していただくものです。JAXAはこれからも人材が枯渇しないよう、できる範囲内で宇宙教育を頑張っていきたいと思っています。
<JAXAの絵本について>
参加者:『イカロス君の大冒険』という絵本を買って、甥っ子にプレゼントしました。例えば「はやぶさ2」のプロジェクトの前段階の絵本ができるとか、わかりやすい資料をもっと出していただきたいと思いますが、お考えをお聞かせください。
舘:絵本はわかりやすくて面白いと思っています。HTV(こうのとり)の絵本もつくろうと思っていますので、もし完成した際には是非ご覧ください。
<宇宙開発の管轄省について>
参加者:宇宙開発は文科省がベースで、国交省が少し絡むという話がありますが、外国との協調、技術交流などを考えると、なぜ一段高い立場の内閣府が行わないのですか。
瀬山:2008年の宇宙基本法で内閣官房に戦略本部がつくられ、日本の強力な司令塔をつくる法律ができています。現在、具体的な体制の設計を行っている段階で、また、戦略本部だけではなく、きちんとした行政組織を内閣府につくろうということも現在検討されています。そうなれば単に研究開発だけではなく、実利用、産業振興、もしくは外交の問題、安全保障の問題など一元的に見れるオールジャパンの組織となります。我々もそれを期待していますし、できれば、内閣府の外局に「宇宙庁」のようなものをつくってもらえると大変力強く思います。JAXA、NASA、ESAとのパイプは非常に強くて、お互い共同でいろんなプログラムを運用しています。宇宙ステーションが象徴的で、共同運用しているヨーロッパ、アメリカ、カナダ、ロシア、日本は非常に仲が良く、これは単に宇宙の世界だけではなく、安全保障上も重要な役割を果たしていると思うぐらい、お互いの理解が進んでいます。最近では、外務省も宇宙外交に積極的に取り組んでいます。
<大人への広報について、JAXA独自での予算確保について>
参加者:JAXAのスポンサーは国民だと思っています。そして国民の理解がなかったらお金もつかないのではないかと思っています。JAXAからの発信は、ほとんどが子ども向けで、子どものために、学生のためになどが主で、一番意見を持っている大人に向けたイベントが、子ども向けよりも少ないのではないかと感じています。お考えをお聞かせください。
瀬山:確かに発信が少ない部分があると思います。JAXA自身は大きな広報の予算は持っていませんので、できる範囲でやるしかありません。テレビの露出度を見てもらいましたが、非常にたくさんのニュース、報道で取り上げてもらい、報道等に頼っています。JAXAは、タウンミーティングを数多く開くことや、年に1回東京地区などでシンポジウムを開くなどして広報を行っています。また、出張講演は学生だけを対象にしているわけではなく、大人の方からの講演依頼も受け付けています。
参加者:宇宙飛行士の方とかも、いつも将来の子どものためとかよくおっしゃるので、そういうことを思いました。例えば興味がないようなお母様同士がお茶などした後で、「どこどこで宇宙のことで面白いことやっているから行こうよ」という雰囲気をJAXAがつくることができれば、もっと皆さんも理解していただけるのではないかと思います。
瀬山:そういう意味では去年の「はやぶさ」は、非常にお茶の間での話題になったと思います。「はやぶさ君」というのができて、擬人化されて自分の人生と照らし合わせて非常に感動していただいきました。あのような挑戦的なプロジェクトを行うことで、今後も皆様の話題になれるようがんばっていきたいと思います。
舘:確かに大人向けの発信が少ないかもしれませんが、いろいろ考えています。例えば、スペースシャトルが引退するということを踏まえて、解説をインターネット上のニコニコ動画というところで生放送を行いました。なぜこんなことをやっているかというと、意識調査で20~30代の宇宙に対する認識が低く、何とかできないかという試みで、インターネットだったら若者は見るだろうということで、コアタイムの午後9時~午前1時で始めました。いつも一番悩んでいるのが、20~30代女性の関心をどうやって高めるかで、正直困っています。もしご意見等あればお願いします。
参加者:昔から20~30代の女性を引きつけるのはイケメンです。イケメン広報官などを入れれば、若い女性も引きつけられ、それにつられて男性も引きつけられるというビジネスの手法があります。予算がないということでしたが、ロシアの宇宙センターなどは民間人の体験コースだとか、宇宙飛行士として養成したい人たちを2,000~3,000万ぐらいで養成したり、お金さえ出してくれれば打ち上げていますが、JAXAでも独自にお金を出せば何か体験できるものがあれば少しは稼げると思います。お金を国からもらうのではなくて、自分たちで稼ぐということはできないのでしょうか。
瀬山:一般の方が参加できる宇宙旅行が実現すれば、何億円と1人当たりお金が入ります。ロシアは既に20~30億円で民間人を自分のロケットで打ち上げて、宇宙ステーションに滞在させています。民間企業でもそういうことを計画していますが、国の政策として行っているのではなく、民間企業が将来のビジネスとして行っています。ロケット技術・宇宙船技術が成熟して日本でもできるということになれば、そういうビジネスをやっていただくことになるのだと思います。JAXAも自己収入を増加する努力はしているところですが、知的所有権のロイヤリティの収入であるとか、競争的資金を取りに行っているなど、せいぜい数億円で10億円まではいっていません。宇宙予算というのは2,000億近くかかりますので、ほんの0.5%ぐらいで、規模的に限界があります。筑波の宇宙センターには宇宙飛行士の訓練用のプールや面白いものがたくさんあります。事前に申し込みがあれば体験していただいて、それを有料にしようか迷っています。有料にしてもそんなに大きなお金が入って来るわけではなく、有料にしたせいでツアーへの参加人数が減ってしまうと残念ですので、どこまでやればいいのか、是非ご意見をいただきたいと思います。
西浦:なかなか悩ましいところで、JAXAグッズやスペースグッズなどつくるということも考えたりしたこともありますが、収入があるとその分予算見直しされることとなるので、今のところは国とすり合わせを行っている状況です。
<(1)デブリ等の資源について、(2)九州の宇宙テーマパークについて、(3)海底開発と宇宙開発の関係について>
参加者:(1)宇宙開発において、宇宙空間のデブリやフェアリングなどを海へ沈めてしまうのは、資源とお金を捨ててしまっているのではないかと疑問に思っています。将来的に資源の枯渇など、どうのように考えていますか。(2)九州には宇宙のテーマパークがあります。オープン当初は6か月間の宇宙訓練の疑似体験など行っていたと思いますが、最近では聞きません。このテーマパークの活用は行わないのですか。(3)深深度の海底開発と宇宙開発はつながるという話を聞いたことがあります。JAXAと聞くとみんな宇宙をイメージしますが、海底開発との連携や面白い話があれば教えてください。
舘:(1)デブリの話は、地球を回っている人工衛星が不用になったり、あるいは隕石などが飛んできてそれが地球を回るということで、今のところアメリカで観測している段階では、10cmぐらいの大きさのものが1万3,000~1万8,000個ぐらい地球を回っています。福岡の人口よりずっと少ない数しか回っていません。ただ、それよりもっと小さいものは観測できていません。大体1cmぐらいのものだと13万とか20万個、もっと小さいものはもっと回っているという状況です。回っている数自身はそこまで多くないですが、注意していただきたいのは、スピードが1秒間に8kmというものすごいスピードで回っていますので、1cmのものでも当たればそれは大変な問題になります。数は少ないですが、当たると危ないので、宇宙ステーションであれば避難したり、衛星も場合によっては少し軌道を変えるということをしますので、常に監視しています。できればこれからはデブリが出ないような方向にしたいと、国際的な約束をつくりながら進めています。資源の枯渇の問題ですが、これはなかなか難しい問題で、先ほどフェアリングの話がありましたが、まず壊れないように海に落として、それを回収して、更に洗浄してなど行っていったら、おそらく結果的にコストは高くなると思います。今でさえ高い高いと言われているのに、もっと高いロケットをだれが使うんだという話になってしまい、結局コスト的にうまくいかないだろうと思っています。将来的に回収型はできないとは思いませんが、今の段階では非常に難しいだろうと思います。
瀬山:(2)九州は宇宙に非常に熱心にいろんなことをやっていただいているのは十分に承知していまして、例えば相乗り衛星でも九州工大、福岡工大、この前は鹿児島大学もありました。もともと種子島、内之浦もあるということで、特に宇宙については活発な地域であることは承知しています。勿論JAXAはその宇宙テーマパークのビジネスに対して資本参加はできませんが、宇宙に関する素材の提供、映像、情報や一部現物の展示物など、そういう情報を各科学館に提供していますので、そういうものを使ってビジネスをやろうというのであれば、JAXAも応援できると思います。
久保田:(3)例えば地下探査、海底、海中の探査などいろいろな技術を日本は持っています。そういった技術と宇宙技術がどう関係しているのだろうかということで、具体的な例というのはなかなか難しいのですが、例えば今度打ち上げます水星探査機は太陽の近くを通りますから非常に高温になります。300℃以上になりますので、そういう高温に耐える機器やコンピュータなどはそういう地上の技術とかなり絡み合っています。技術者レベルでは、さまざまな技術やノウハウをいただいています。高温技術あるいは逆に遠くなると低温技術が使われています。また、気圧の話がありましたが、金星に降りるとなると90気圧になります。海底1,000mぐらいの深さの圧力を受けますので、それでも壊れない探査機をつくることや、高温にも耐えられるものというのは材料含めて地上の技術がかなり生かされています。「はやぶさ」に搭載したカプセルも高温に耐えなければいけないということで、日本の技術、いわゆる宇宙で今までなかった技術を地上の技術を参考に使っているというところで、目に見えないのですが、そういう技術がたくさん使われています。
<日本版シャトル「HOPE」と宇宙ステーション補給機「こうのとり」について>
参加者:今度アメリカのシャトルが繰り返し使うとお金がかかるということで、やめることになったと聞きました。日本もシャトルの開発をしているということを聞いたことがあるのですが、「こうのとり」という輸送機ができ、日本版シャトルはもうあきらめたのですか。
舘:日本版のシャトルは「HOPE」という名前で呼んでいまして、H-IIのロケットの頭の上にシャトル型のものをつけて飛ばそうという技術でした。お金がかかる等もありまして、今のところ中断しています。もともと「HOPE」も宇宙ステーションに機材を運ぶというのが1つのミッションでしたから、「こうのとり」ということで実現はしていますので、そういう意味では技術は生かされていると思っています。
参加者:「こうのとり」についてですが、使い捨ての輸送機ですか。
舘:今は使い捨ての一方通行の輸送機ですが、次のプロジェクトとして「こうのとり」の一部を地上に戻し、回収するという技術開発をスタートさせました。宇宙ステーションに打ち上げて、宇宙ステーションの「物」を地球に持ち帰るということを行いたいと思っています。とりあえずは「物」ですが、行き帰りの技術ができると、先々「有人」の技術づくりにも役立つことになります。アメリカは2030年代中ごろまでに火星に人を、中国も月に人をと言っています。そういう意味でも日本も将来は仲間に入れるように「こうのとり」の技術をベースに、段階的に往還機につなげていきたいと思っています。
西浦:「こうのとり」は皆様もいろいろな映像でご覧になっていると思いますが、優れた機能だけではなく、世界からデザインの美しさも絶賛されました。わざわざデザインしたのではなく、技術を探究していった結果、自然とたどり着いたデザインだったそうです。金色にきらきらと俵のようなものが宇宙に浮かんでいる映像に、多くの方々が感動されたと思います。
<(1)広報について、(2)国際宇宙ステーションの運用期間について>
参加者:(1)私の回りで宇宙開発のことが話題になることはほぼありません。関東地方でばかりイベントがあるという感じがして、九州に住んでいて興味があっても行くところがなく、参加する方法が気軽に見つかりません。20~30代の年代を取り込めば、将来お父さん、お母さんになって、子どもたちを連れてイベントに行くと、その子どもも興味を持って将来の人材になると思います。田舎の方に職員や関係者の方が来ていただくのが大変なら、ネット会議みたいなもので話ができ、リアルタイムに何か見れて、情報を得ることができる場所さえあればよく、また、イメージキャラクターを1人つくって、その人に活躍させるようなこともいいのではないかと思いました。
(2)国際宇宙ステーションは、長く使用していると思いますが、あとどれぐらい使用できるのですか。
瀬山:(1)全国の科学館や教育委員会などと連携し、JAXAの情報もしくは展示物を持って行き、現場でいろいろと説明を行いたいと考えております。JAXAの職員は本来業務を持っており、講演や説明などの広報業務はその合間にやっていますから、どこまでできるかよく考えなければいけませんが、これから知恵を絞っていきたいと思いますし、またご意見あればJAXAのホームページから意見を寄せていただければと思います。
舘:(1)ご意見のありましたネット会議ですが、面白いと思います。貴重なご意見ですので、我々も一度考えてみたいと思っています。(2)国際宇宙ステーションの使用期間についてですが、打ち上がって30年は持つだろうと言われていますので、もちろん修理などを行った上での話ですが、1998年に上がっていますから、技術的には2028年ぐらい、日本としても2025年ぐらいまでは大丈夫ではないかと思っています。今のところ2020年までは使うと言っていますので、それから先も数年間持つのではないかと思っています。
西浦:(1)テレビの番組が2位で意外だったとおっしゃいましたが、これは宇宙関連のドキュメンタリーが今年度だけでも53~54本、大型スペシャル物で4~5本、そのほかにもJAXA関連、宇宙関連のニュースが流れていますので、これらを全て含めて量的に2位となっています。また、ニュースのトップバッターで宇宙のことを出すと、視聴率がぱっと上がるという話を局の方から聞いたこともあります。
<ホームページの改善について>
参加者:今日の予習をしようと思ってホームページをのぞきましたが、どこを見ていいか分からなくて、ずっと入り込んでいるうちに迷って諦めました。複雑過ぎてよく分からなかったので、改善をお願いします。
瀬山:情報提供を追求する余り使い勝手の悪い物になっている可能性があります。貴重なご意見ありがとうございます。改善させていただきたいと思います。
西浦:技術者でない私としましては、普段、同じことを内部でも話題にしています。優れたホームページだとは思いますが、ご指摘のとおり情報が盛りだくさん過ぎると思っていました。是非改善させていただきたいと思います。
舘:ホームページについては、実は来年見直そうと思っていました。皆さんの要望をまとめるホームページというのはなかなか難しいというのが実態ですが、頑張ってみたいと思います。